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南極観測50年、
観測基地から研究最前線基地へ!

2007年3月2日(金)

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 この1月、国立極地研究所の招きで、開設50周年を迎える南極・昭和基地を訪れる機会を得た。日本の科学技術の研究現場を語るに当たって、南極観測は極めてユニークな存在として位置づけられる。それは南極観測が、日本から遠く離れたところに日本独自の大規模な観測研究基地を置き、自前の輸送手段を持つこと。研究者が長期滞在して、50年にもわたる継続的な研究観測の実績を持っていることだ。

図版
S17観測地点に立つ毛利氏
[画像のクリックで拡大表示]

 このような研究基地としては、すばる望遠鏡が設置されている国立天文台ハワイ観測所があるが、米国の領土内にあり、研究の歴史も遙かに短い。南極はどこの国のものでもない。日本は南極条約の原署名国12カ国の1つで、アジアでは唯一の国だ。南極は国という権力の及ばない地球上で唯一の場所と言える。私が2度行った宇宙にも国境はない。しかし、日本は人間を宇宙へ送る自前の輸送手段を持っていない。

 日本の南極観測での50年間の研究実績は素晴らしく、世界でも高く評価されている。世界初のオゾンホール発見のきっかけは、昭和基地での観測隊員、忠鉢繁氏による観測結果だ。隕石の発見の実績も素晴らしい。南極で日本はこれまでに1万6000個以上の隕石を収集しており、世界最多の隕石保有国だ。その中には、研究の結果、月、火星から来たと判明したものもあり、惑星科学の研究者にとっては宝の山となっている。ところが残念なことに、これらの研究実績は一部の人の知識と評価にとどまっており、国民一般に広くは知られていない。

昭和基地、研究の最前線で見たこと

 今回、私は初めて昭和基地を訪れ、半世紀の歴史を持つ研究の現場と最前線の研究者を、科学者としての自分の目で見る機会を得た。50年前に基地が開設された当時は、観測といっても探検と探査の意味合いも大きかった。その後は定常観測、研究観測の割合が重要な位置を占めてきた。定常観測は地道なデータ蓄積を続けることに意味がある。そのためには現在の日本のロボット・機械技術、通信技術を駆使すればもっと効率的な観測体制がつくれるのではないか。

 例えば、今の昭和基地の研究者たちの時間は、そのかなりの部分が基地での生活を維持していくための共同作業に費やされている。20%位の時間を基地生活の雑用に費やすのは、科学者が社会性を持つためにも良いことだろう。しかし、それが研究者としての本来の研究時間を上回るような状況は、決して効率的とは言えない。

 今の昭和基地の体制は衣食住という点では非常に整備されているが、共同生活のための研究者個人の時間的な負担はかなり大きいと思われる。研究者には、観測・実験の時間と同時に創造的な思索のできる環境も必要だ。しっかりした研究テーマを持ち、自分の立てた仮説を南極での研究で解き明かしていこうという多くの研究者の参加が望まれる。

研究体制、輸送体制…、求められる改革

 これからは、観測隊を毎年送り出している国の政策としての抜本的な改革と新しい効率的な研究体制の構築が必要だ。50年目の今、輸送を担う南極観測船「しらせ」が退役し、後継船の就航に1年の猶予のできる来年は新体制をつくるチャンスだ。観測隊には現在も施設の建設・管理、通信関係を中心に企業から派遣された隊員がいる。効率的な観測・研究体制の確立には、企業の持つ実用的な技術開発のノウハウが欠かせない。今後は、組織運営の面でも企業の力を取り入れていくべきだろう。

 研究観測のための滞在期間の再検討も必要だ。例えば、越冬隊は現在約40人の体制を維持しているが、通年の定常観測システムの機械化などを進めて、オーロラ観測など南極の冬にしかできない観測・研究の隊員以外は思い切って減らして、その分を夏期中心の体制に移行する。

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松﨑 曉 良品計画社長