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レンズとビール、世界商品を生み出す「細部」

  • 石山修武

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2007年3月20日(火)

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 企業を生命体に例えてみる。恐竜の数々や、マンモスを引き合いに出すまでもなく、非効率な巨体を持つ種族は必ず滅亡する。深海に生きるプランクトンは微細であるがゆえに強い。が、他の生命体、魚や他の小生物の食べ物になるばかりか。弱肉強食はアフリカのサバンナでは日常のことであり続けるが、それは私たちの現代社会でも全く同様の現実になった。

 人間はいつの時代でも常に未知への好奇心を持ち続けてきた。そして、その好奇心こそがあらゆる人間社会の細部の進歩の源、つまり原動力だった。現代社会の特質はほとんど無限に近いような細部の連関で、それが成り立っていることだろう。

 1つの企業の源をたどっていけば、必ず創始者にたどり着く。そのほとんどは、活力に満ち、創意工夫の力にあふれた人ばかりであったろう。もの作る人の遠い原型(モデル)でもある。しかし、時は流れる。決して立ち止まらぬ。

 21世紀初頭の今は、そのようなもの作る人の原形質はすでに変化し、別の形になって見えているはずだ。その具体、現実を見たい。それが、この連続取材の1つの目的でもある。かつて20世紀に職人と呼ばれ、生産者、メーカーの人と呼ばれた人々が、すでにどのように変質しているのだろうか。その実体を探りたいと考えたのである。

 神は細部に宿るばかりではない。神の去った現代では、企業は細部に胚胎し、運動すると言い直さなければならない。分かりやすく言えば、企業体にはそれに特有な個性、有機性はあるのだろうか。それが知りたい。

 メダカは個体であるが、常に一方向へ群れて動く性向、群体の特質を持つ。多くの渡り鳥も然り。イルカやマグロも同様、アリもオランウータンもマウンテンゴリラも皆同じである。組織体の動きに独自性がある。企業体も、特に世界を相手に様々な戦略を立てねばならぬような企業には特に、そのきらいがある。そして、個体には時に優性、劣性の判別がまかり通るように、さらに過酷に、企業体にもそのような評価が下されやすいのではないだろうか。

 企業体はますます精妙さを求められるようになる。それがグローバリズムの宿命的帰結だ。精妙さは管理力の強化だけでは十分なものではない。企業体のそれぞれの細部の力、そして力の連関性によって作り出されるものだ。つまり、企業体内で働く、もの作る人々の力の現実と彼らの意志こそが、その全体の形質を特徴づけているはずだ。

企業の細部に固有なカラー、特質を探る

 1970年代から80年代を頂点にして、コーポレートアイデンティティー、略して「CI」というのが話題になり、一時大変に盛んであった。企業はこぞってその活用に取り組んだ。CIに取り組むことが一流企業の証しであるような時期さえあった。軒並みに企業は社名を変更したり、多くはそのシンボルらしき企業マークを変更した。少なからぬ費用がそれに投じられた。究極の広報活動と受け止められたりした。

 バブルと呼ばれた経済状態が終了すると同時に、CI熱も一気に冷めた。その冷め方は、今、思い返せば企業体成長期の麻痺であったとしか考えようがないのであった。憶測するにCI活動の適用とは、社名変更や企業マーク、ロゴタイプ等の変更、大掛かりなデザインの実施にとどまるべきものだったのだろうか。

 企業は今、その細部に固有な特質、カラーを持ち得るのかの疑問と、コーポレートアイデンティティー活動の休止状態と思われる状況、そして、もの作る人の現在を知りたいという気持ちは、勝手極まる言い草ながら脈絡を持っているはずなのだ。

 フジノン、そしてキリンビールという2つの企業の工場で働く人たちにお目にかかって、話をうかがった。フジノンは埼玉工場のハヤ島政雄さん(「ハヤ」の字は草かんむりに配)、キリンは取手工場の渡邊康司さんである。

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