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ニッポン男児の心をとらえる様式美とは

NTTドコモのケータイに見る「日本的仕草」の表現(その2)

2007年3月19日(月)

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 前回は、NTTドコモ(9437)の携帯電話を例に、「道具の使い手を美しく見せる技術」について考えてみました(前回の記事はこちら)。ものづくりに携わる日本の技術者やデザイナーが、知らず知らずのうちに手中にしつつある誇るべきワザの1つです。最後に少しだけ、このワザが未来の携帯機器の姿である「ウエアラブルコンピューター」で大きなアドバンテージになるという話に触れました。今回は、もう少しこの話題を続けたいと思います。

写真1

NTTドコモの携帯電話「D702iF」。女性をメインターゲットに開発した (写真:稲垣 純也)

 前回の記事に対する読者コメントに「ウエアラブルは“着られる”ではなく、“身につけられる”と訳すべき」という指摘がありました。全くその通りです。ウエアラブルな道具の大先輩には、既にメガネや腕時計があります。今となっては当たり前のように肌身に触れているこれらの道具は、今の居場所を確保するまでに大変な苦労を乗り越えてきました。

 13世紀頃には既に現在の形に近い双眼レンズのメガネが実用化されていましたが、必要な時だけ手に持ってかざすオペラグラスのようなものでした。その後、長い年月をかけて居場所を探し求め、今のような耳架け型が定着するのは17世紀に入ってからのことです。同様に、腕時計も苦難の道のりを歩んできました。駆動機構の小型化で懐中時計が登場したのは15世紀のこと。まずは仮住まいとして上着のポケットに間借りして、紳士用の腕時計が一般化したのは20世紀に入ってからです。メガネは耳に、時計は腕に、終の棲み家を見いだすのに400年近くもの時間を要しているのです。

携帯電話は第2世代のウエアラブルの萌芽

 人の作り出したメカが、異物でなく身体の一部として受け入れられるためには大変な努力が必要なことが分かります。先輩のメガネや腕時計でさえも、今の居場所が安住の地かどうかは不確かです。携帯電話が当たり前の若者世代は腕時計をしなくなっているという話をよく聞きます。

 携帯電話は、通信機能だけでなく、腕時計から財布、身分証明書、鍵、鏡、手帳、テレビ、カメラ、音楽プレーヤーなど、これまで「懐中」「ポケットサイズ」と冠のついたあらゆる機能を取り込むブラックホールのような魔法の装置です。衣服やメガネ、腕時計を第1世代のウエアラブルとすれば、携帯電話は第2世代のウエアラブルの端緒となる機器と言ってもいいかもしれません。メカやエレクトロニクス技術を織り込んだ本格的なウエアラブルコンピューターの登場なのです。

 前回紹介したように、この第2世代のウエアラブルが、携帯使いこなし先進国のこの国で、「使い手を美しく見せる」フェーズに入っています。NTTドコモの携帯電話「D702iF」に代表されるようにデザインを意識した携帯電話が続々と登場しているのは、「機能的な便利」や「道具自体のデザインが美しい」を超えて、ウエアラブル時代をにらんだ「使い手の美しい立ち居振る舞いが誘発する」という高い次元の設計志向へと進んでいることの証左でしょう。何しろ、電子と電波を身にまとう第2世代の“衣服”なのですから。

写真2

「D702iF」を企画に携わったNTTドコモの佐藤一裕さん(左)と、長沼知春さん(右) (写真:稲垣 純也)

 「D702iF」の企画に携わった長沼知春さんによれば、デザイン性を重視した携帯電話は着実に売り上げを伸ばしているそうです。当初は、デザインと機能のトレードオフが明らかだったのですが、電子部品のモジュール化で機能性とスタイリッシュが両立できるようになり、もはやデザイン系の携帯電話は廉価版という位置づけではないのです。

 女性の所作の美しさを引き出す技術として、携帯電話のデザインと、自動車や冷蔵庫に使われ始めた半ドア防止技術「オートクロージャー」を前回紹介しましたが、実は使い手の美しい立ち居振る舞いを誘発させる道具は、ほかの分野でも現れています。

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「川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」」のバックナンバー

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「ニッポン男児の心をとらえる様式美とは」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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