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膝の痛み・悩みへの救世主
~佐喜眞義肢・佐喜眞保

(第1回「ものづくり日本大賞」経済産業大臣賞受賞)

  • 南山 武志

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2007年3月20日(火)

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 「よっこらしょ」と立ち上がり、脚を引きずってつらそうに歩く。あなたの身近にも、こんなお年寄りがいないだろうか。膝が湾曲してしまい、痛むだけでなく運動や歩行にまで困難をきたす変形性関節症。国内の患者数1200万人といわれるそれは、人口高齢化の進展に伴って増加の一途をたどる“国民病”だ。

 症状を改善する方法の1つが、膝に装具を着けて関節にかかる負担を減らすこと。そのために、これまで様々な膝装具が使われてきた。しかし、そのほとんどには泣き所がある。

従来品に比べ、重量は2分の1~4分の1の180g。違和感がないので、患者は痛みもなくトレーニングができる (写真:押山智良、以下同)

従来品に比べ、重量は2分の1~4分の1の180g。違和感がないので、患者は痛みもなくトレーニングができる (写真:押山智良、以下同)

 たとえば、数ある製品の中でも、軽くて丈夫だと評価される「スウェーデン式装具」。装着すれば、確かに多少の歩行の改善効果は認められる。だが同時に、歩行時にズレ落ちやすい、関節部がない構造であるため膝を曲げるのが困難である、装着時に転倒するとけがをする可能性がある、見た目が悪い、といった数々のデメリットもまた、抱えていた。

 こうした問題点を見事にクリアしたのが、佐喜眞保さんの手によって開発された関節装具「CBブレース」である。重さは約180 gで、従来品の2分の1~4分の1という大幅な軽量化に成功。着けても、違和感はほとんどない。

 注目すべきはその効果で、脚をさすりながら生活していた人が、装着しただけでスムーズに歩けるようになり、ほとんどの場合、使い始めて2、3カ月で関節症そのものに顕著な改善がみられるのだという。「痛くない、楽に歩ける、だから喜んで歩く。それによって骨を支える脚の筋肉が回復する」というのが、その理由である。

秘密は1本の“棒”にあった

 軽いうえに、効果バツグン。そんな性能をもたらしたのは、製品名にもなっているCB(センター・ブリッジ)という、“棒”にほかならない。

開発の要となったCB(センター・ブリッジ)。シンプルな構造だが、これが画期的な性能をもたらす

開発の要となったCB(センター・ブリッジ)。シンプルな構造だが、これが画期的な性能をもたらす

 従来の膝装具は、膝の左右に位置する部材で患部をサポートする構造。軽量化に向けた試行錯誤の末、佐喜眞さんがたどりついたソリューションは、その部材同士の中央を、膝裏を通した1本のCBでつなぐことだった。物理的には、これによって支点から作用点までの距離が従来品の半分になり、力をより効率的に伝えることに成功した。結果、部材を小型・軽量化することが可能になったのである。

 棒を1本増やしたことで、装具の上下に付いていた金具は不要になり、形状はかえってシンプルに。外見的にも重々しさはない。加えて、装着したまま運動ができるほど、強度も十分に保たれている。

患者の期待を裏切ってはならない

 「CBブレース」の開発にこぎつけた端緒となったのは、1998年のある患者さんとの出会い。顔なじみの医師から、脳出血の後遺症で半身マヒになり、片方の足首が反り返ったままになってしまった女性を紹介されたのだ。付き添いの夫は、「どうか、いい装具をつくってやってください」と深々と頭を下げる。聞けば、いろいろな靴型装具をつくってもらい試したものの、満足のいくものがないのだという。

 ワラにもすがる思い。そう感じた佐喜眞さんは、「喜んでやりましょう」と、ふたつ返事で引き受けた。だが、反った足首を固定する装具をいくつつくってみても、症状を改善させることはできなかった。これでは、期待を裏切ることになる。佐喜眞さんの職人魂は、それを許さなかった。

 発想の転換は、ここで生まれた。ターゲットを足首から膝に切り変えたのである。「膝が安定すれば、足首の反りも軽減するのではないか」。1980年の開業以来、数多くの患者と向き合ってきた技術者の“勘”だった。

図面おこしは、丁寧に手作業で行う

図面おこしは、丁寧に手作業で行う

 筋力の落ちた半身マヒの人に、重い装具は無理がある。ならばどうやって軽くするか。既成概念にとらわれず、自由な発想でこの難題に取り組んだ結果、CBというコロンブスの卵にいきついた。そして、勘は当たった。小型軽量の「CBブレース」を装着した女性の膝はしっかりと固定され、それによって、ぎこちないながらも確かに歩けるようになったのである。

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