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名門は、なぜ転落したか

リスク意識の欠如が生む負のスパイラル

  • 宮田 秀明

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2007年3月30日(金)

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 目の前で巨大なヨットが真っ二つに折れた。何しろ船底に20トン近い鉛の重り(バルブ)をぶら下げているので、あっという間に深さ150メートルの太平洋の海底に沈んでしまった。

 1995年に開催された世界最高峰のヨットレース「第29回アメリカズカップ」での出来事である。米国サンディエゴ沖で戦っていたオーストラリア艇が沈没した。

 幸い、乗船していた16人のクルーは海に飛び込み、無事だった。144年間続いていたアメリカズカップ史上でも初めてのことだったので、世界中の人々が映像を見て驚いた。大事故を起こしたにもかかわらず、オーストラリアチームは、2日後には別の艇をレースに出場させ、結局、予選ではニュージーランドに続いて2位に食い込んだ。この年は、米国が予選に加わらないレベルの低い予選だったし、日本を含めたほかの5チームが弱過ぎた。

名門チームがはまった落とし穴

 さすがに船が真っ二つに折れてしまうような大事故を目にするのは、これっきりだと思っていた。だが、見る機会は意外に早く訪れた。今度は、2000年の第30回大会だった。オーストラリア艇が沈んだ第29回大会はニュージーランドチームが米国チームを破って優勝したため、この年は米国の5チームが加わって、11チームで予選を争った。会場は、ニュージーランドのオークランド湾。予選2回戦でのことだ。日本と戦っていた米国ニューヨークの名門チームの艇が、また真っ二つに折れたのである。

 この時は、懸命の応急活動で艇の沈没は免れた。イタリアチームや日本チームの伴走船が救助活動をして、クルーも無事に救出された。しかし、3日後に第2艇を使って試合に復帰したニューヨークチームに大きな負のスパイラルが働いているのは誰の目にも明らかになった。

 そうして、156年のアメリカズカップの歴史で、実に132年にわたってカップを保持し続けた名門チームの転落に歯止めがかからなくなったのである。予選敗退。誰も予想しないことだった。チーフデザイナーは世界一のレース艇デザイナーと言われたブルース・ファー氏だったし、日本チームの艇を設計した私も、最も性能の高い艇を持つ4チームの1つだと思っていた。

 速さの極限を追求するレース艇では故障はつきもの。安全の限界を追求しながら、軽くて速くなるように艇を設計するからだ。全レースが終わった瞬間に全部壊れてしまうくらい、ギリギリの強度を追い求めるのである。しかし、レースが終わる前に壊してしまったら、すべてが終わりになる。

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