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繊維産業復活へ! 多品種少量の壁を5代目が越える
~片山商店・片山象三

(第1回「ものづくり日本大賞」内閣総理大臣賞受賞)

  • 南山 武志

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2007年4月3日(火)

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 「地場産業を守れ」。その言や良し。だが本気で守るのは、決してたやすいことではない。時代に適合し、さらにはそれを先取りする気概や技術革新が常に必要である。それは時として「伝統」との軋轢を生む。

 兵庫県の西脇市周辺で、200年以上の歴史を誇る播州織物。いうまでもなく、典型的な地場産業である。時代の波に洗われ、その存立基盤が脆弱化しつつあるのもまた、他の多くの産地と同様だ。

 1913年、この地で創業した繊維機械商社・片山商店の5代目である片山象三さんが、軋轢や困難に抗して、新たな織物生産システムの完成に執着し続けたのは、「物心ついた頃から機織りの音を聞いて育った」という原体験があったからだ。

大量生産から少量多品種へ。転換を急がねば

片山象三氏。機械販売だけでなく、開発やアフターサービスまで手がける (写真:押山智良)

片山象三氏。機械販売だけでなく、開発やアフターサービスまで手がける (写真:押山智良)

 このままでは、地域から機織りの音が消えてしまうかもしれない。片山さんが、そんな強い危機感を抱いて立ち上がったのは2000年のこと。西脇市一帯では、現在でも国産シャツ地の9割を生産しているとはいえ、中国などとの価格競争が激化、全体の生産量は最盛期の3分の1にまで減っていた。

 ただし、“敵”は中国だけではなかった。市場では個性的な商品が求められているのに、現場の生産体制は、相変わらず大量生産に適した構造から脱しきれていないという現状がある。少量多品種生産型への構造転換。それ以外に生き残りの道はない、というのが片山さんの問題意識だった。

 最初に着目したのが、織物生産の際に大量に発生するロスと呼ばれる残糸。兵庫県立工業技術センターと共同で、まずは、それらをつないでカラフルな織物をつくる技術を開発した。従来、産業廃棄物にしかならなかった半端な糸が、見事製品として生まれ変わったのである。コンテストで賞も取った。しかし、それだけだった。あくまでも、原料はロス。2度と同じ製品をつくることはできず、商品としては「不合格」というわけだ。

 だが、この経験は、結果的には成功への道しるべとなる。ここで諦めず、あれこれと模索し続けた「糸をつなぐ」という技術。ロスを使うのではなく、織物の色柄を決める縦糸そのものに、それを応用することを思い立つ。

任意の長さで異なる色がつながった1本の糸を

 片山さんの呼びかけで、産学官共同のプロジェクトがスタートした。布陣は、システム開発、制御ソフト開発を担当する兵庫県立工業技術センター、繊維の基礎情報を提供する京都工芸繊維大学、そして機械製造に携わるメーカーをはじめとする民間企業。

 目指したのは、何色もの糸を自在につないで1本の糸をつくるシステム構築だ。

 従来、織物の工程においては、縦糸の色が変わるたびに機械を止め、基本的に手作業で5000~1万本もの糸をそろえ直す必要があった。大変な時間と労力が求められる。さらに極端な話、10着でも1000着でも、それに費やすエネルギーはほとんど変わらない。これが、少量多品種生産の大きなネックになっていたのだ。

 もし、任意の長さで異なる色がつながった糸ができれば、途中で機械を止めることなく、連続して様々な色柄を織り上げることができるはず。それが片山さんの考えだった。

 だが、実際に開発を始めてみると、事は理屈どおりには進まない。最も困難だったのが、糸の長さを正確に計測すること。糸は引っ張れば伸びるため、機械的な計測はきわめて難しいからだ。しかし、色柄をピタリと合わせるためには、精度に寸分の狂いもあってはならない。

 実証試験は、地場のいくつかの工場に依頼していた。実際のところ、いい顔をされないことも多かったという。開発当初、作業は従来よりかえって煩雑で、試し織りをすれば柄は合わず、糸がよじれ…。なかなか形にならないチャレンジに、「もう付き合いきれん!」と怒鳴られたこともある。だが、片山さんは立ち止まろうとはしなかった。「この産地を、みんなの力で次の世代に残しましょうよ」と、説得し続けたのだ。

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