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ビジョンだけでは何も生まれない

ビジネスを支配するコンセプトの力

  • 宮田 秀明

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2007年4月20日(金)

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 30年余り前、石川島播磨重工業(IHI)に入社した私の初任給は6万8500円だった。その新入社員が、小学校4年生の時以来、久しぶりに使ったソロバンではじいた最初の見積もり船価は245億円。米国の総合エネルギー企業、エルパソ向けの高速型LNG(液化天然ガス)船だった。この船の技術は、IHIとブリヂストン液化ガス(現・三井液化ガス)によるオリジナルのコンセプト(基本概念)に基づいたもので、全社的な大がかりな開発プロジェクトとして進められたのだったが、その1年後、開発に失敗してしまった。

 当時、IHIの技術者魂は健全だった。この失敗に懲りず、別のもっと安全で信頼性の高いLNG船のコンセプトを作って、実用化に至ったのである。失敗から10年を超える歳月が流れたが、何とか新しいコンセプトのLNG船2隻の受注に成功した。しかし、大きな赤字を計上してしまったので、この2隻以降、自社コンセプトによるLNG船の販売実績はない。

 現在、LNG船のほとんどは、EU(欧州連合)のコンセプトによるものである。そのコンセプトによる船の大多数は韓国で建造されていて、残りを日本メーカーが建造している。そして両国の造船業は1隻当たり10億円以上のロイヤルティーをノルウェーやフランスのコンセプト創造会社に支払っている。

 これはLNG船に限らない。ほとんどすべての船のコンセプトは日本ではなく、海外で創造されたものである。一般貨物を運ぶコンテナ船のコンセプトは、米国のトラック運転手だったマルコム・マクリーンが1930年代に考えたものである。彼は、このコンセプトをシーランドという船会社(現・マースクライン)の経営者になってから実現した。運んできた荷物をトラックごと船に載せられたら、どんなに楽かと考えたのが、コンセプトを生み出すキッカケだったという。このコンセプトは海運ビジネスを大きく変えた。

コンセプトのない経営はつまらない

 優れたコンセプトの力は大きい。IT(情報技術)の世界では、パソコンのコンセプトも、インターネットのコンセプトも、基本的には米国のものだ。これらが世界を変えている現状を考えれば、コンセプトの力は強大だと言わざるを得ない。世界に進歩をもたらすし、ビジネスを支配できるのである。

 コンセプトには色々なものがある。船やITのような大きなビジネスの話だけではない。一人ひとりの人間の生き方にも、小さな商店の経営にもコンセプトがあるだろう。言い方を変えれば、“私の信念”と表現できる。コンセプトを持つのは大切なことである。コンセプトのない人生、コンセプトのない経営はつまらないものだ。

 国家のコンセプトはどうだろう。国民にとって国の経営は最も大切だ。国の経営を正しく行うためには、国がビジョンを持って、その次にそれを実現するためのコンセプトを獲得し、モデル化して実行していかなければならない。だが、この当たり前のことを実行に移すのは簡単ではない。日本という国の要素技術、つまり個人の力は世界最強だと思うのだが、「ビジョン」「コンセプト」「モデル」を考えて、それを実行していく経営のプロセスの水準はかなり低い。政治家や行政担当者だけでなく、一人ひとりの国民が、このことをしっかり理解して行動を始めるべきだと思う。

 少し話が発散してきた。このあたりで、コンセプトの大切さに戻りたい。

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