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夢見れど決して会えない理想の美女

マネキンに見る日本的「記号化」の強み(その2)

2007年4月23日(月)

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 前回は、最近の子供服売り場で異彩を放つアニメ顔のマネキンを例に、日本のものづくりに隠れた「記号化」という強みについて考えてみました(前回の記事はこちら)。私たちが認知する世界とは、実物を写実的に再現したものではなく、印象的な特徴をデフォルメしたもの。その意味では、アニメ顔に代表される日本特有の「記号化」文化には、ものづくりにおける重要なヒントが隠れているのではないか、という話でした。今回も、この深遠なるマネキンの世界についての話題におつき合いいただければと思います。

日本的マネキンの礎は島津製作所にあり

 日本のマネキン業の歴史をひもとくと島津製作所(7701)にたどり着くという話をご存じの読者は少ないでしょう。2002年にたんぱく質の解析手法でノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが在籍する、あの精密機器メーカーです。

写真1

京都造形芸術大学の藤井秀雪教授。同大空間演出デザイン研究センターで主任研究員も務める。マネキンの研究のほか、京都の伝統産業との産学連携プロジェクトなども推進している

 マネキンが日本に入ってきた1920年代、フランス製の舶来マネキンの修復を手がけていたのが島津製作所の標本部。理科室に置いてある人体標本などを作成していた部署です。その後、人体標本の流れは現在の京都科学に引き継がれ、商用マネキン部門は創業家の島津良蔵さんの肝いりで島津マネキンとして独立、日本独自のマネキンづくりの礎となりました。この島津マネキンが、七彩やヤマトマネキン、吉忠といった現在のマネキン大手に分離していったというわけです。

 この話を教えてくれたのは、京都造形芸術大学で教壇に立つ藤井秀雪教授。もともとは七彩の社員で、戦後のマネキン業界のビジネスを実体験した人物です。今は、マネキンの持つ魅力や意味の重要性を体系化して後進に伝える仕事に取り組んでいます。

 「日本のマネキンの特徴を論じる際には、まず日本と海外の人形の作り方に根本的な違いがあることを理解しなくてはなりません」。こう藤井教授は言います。もともとは輸入品だったマネキンが、日本で独自に進化したという話は、前回のコラムで少し触れました。写実的に人体を模す西洋のマネキンに対し、日本のマネキンは日本人が最も美しいと感じるように人体をデフォルメし、記号化を追求してきたのです。

日本的記号化の伝播で生まれたジャポニズム

 マネキンに限らず西洋の人形はどちらかと言えば写実がベースであり、本物の美しいお姫様を写真のように再現します。これに対して、日本の人形はイマジネーションの産物です。例えば、京都伝統の御所人形は、私たちの頭の中にある、ふっくらとしてかわいらしい稚児のイメージをそのまま形にしています。実物の幼子とはまるで似ていないのですが、そこに躊躇はありません。これは印象派の画風に近い概念であり、記号化された稚児を追求したものと言えるでしょう。

 そもそも、モネやゴッホに代表される印象派の画法は日本の浮世絵がルーツと言われています。19世紀後半、日本からの輸出品であった陶磁器の包み紙に使われていた浮世絵が引き金となって、いわゆる「ジャポニズム」という美術運動が興り、西洋の美術界に大きな影響を与えたというのは有名な話です。

 日本が得意とする「記号化」の代表例であるマンガ文化は、こうした世界に影響を与えた日本の伝統工芸や美術の世界観の上に成り立っています。世界のちびっ子たちの心をとらえて離さないのも当たり前。マンガやアニメは長い時間をかけて日本人が磨き上げてきた完成度の高い芸術なのです。

 さて、マネキンの話に戻りましょう。

コメント17件コメント/レビュー

「アルバート・ヒューボ」韓国技術院の開発したロボット(実物はhttp://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20090985,00.htm)を参照。」先日テレビで紹介されたのだが、一斉に「気持ち悪ーい!」との声が出た。本コラムを見て納得した次第。そういえば、ゲームの世界でもDQ(ドラゴンクエスト)とFF(ファイナルファンタジー)があり写実化が進むFFに対し、DQの最新作は任天堂DSでリリースされる。このDQ最新作、見事に記号化された鳥山明氏のキャラクタを継承しているのだ。ゲームへの感情移入は記号化されたキャラの方が向いているようだ。昔、DQで倒したはずの中ボスが戦闘の最後、こちらのHPが激減している状態で復活巨大化したときの「身の毛もよだつ」感覚はわたしだけ?(2007/05/14)

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「夢見れど決して会えない理想の美女」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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「アルバート・ヒューボ」韓国技術院の開発したロボット(実物はhttp://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20090985,00.htm)を参照。」先日テレビで紹介されたのだが、一斉に「気持ち悪ーい!」との声が出た。本コラムを見て納得した次第。そういえば、ゲームの世界でもDQ(ドラゴンクエスト)とFF(ファイナルファンタジー)があり写実化が進むFFに対し、DQの最新作は任天堂DSでリリースされる。このDQ最新作、見事に記号化された鳥山明氏のキャラクタを継承しているのだ。ゲームへの感情移入は記号化されたキャラの方が向いているようだ。昔、DQで倒したはずの中ボスが戦闘の最後、こちらのHPが激減している状態で復活巨大化したときの「身の毛もよだつ」感覚はわたしだけ?(2007/05/14)

マネキンに注目した事はユニークで素晴らしいと感じましたし、マネキンの歴史には興味深いものを感じました。ただ今回のテーマである日本的な記号化の強みがマネキンと結びつくのはやや納得しない気がします。仮にマネキンが日本的な記号化の一つとしても、それは日本に合った日本独自の進化をしただけで、別に日本的強さを証明してるとは言えないのでは。全世界で日本のマネキンが使用されてるのであれば、強さの証明になるとは思いますが。又、ロボットの表情や仕草が人間に近づく程不気味になるのは同感です。ロボットの違和感を無くすには、姿は人間に近づけても仕草は機械的にするか、仕草を人間に近づけたら姿をロボット的にするか、のどちらかでしょう。(2007/05/04)

川口さんの文章はいつも日本人である事に誇りを持たせてくれるようで、読んでいて気持ち良いです。マネキンの事に限らず、頭に浮かんだおぼろげなイメージを視覚化するための、技術と芸術の融合を成せるのは日本人であろうし、日本人であって欲しいと感じました。(2007/05/03)

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