「宮田秀明の「経営の設計学」」

「失敗は成功の母」を信じるなかれ

狩猟民族的な組織がイノベーションを生む

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2007年4月27日(金)

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 「人は、失敗を重ねて成功に至る」というのは間違いである。失敗ばかりでは落ちていくだけだ。小さな成功体験を積み重ねてこそ、大きな成功を手にできる。

 負けてばかりいるサッカーチームは、いつまでたっても弱いチームでしかない。負け癖とはよく言ったもので、それを解消できない限り、いずれチームは消えてしまうだろう。負けてばかりいるチームに参加したいというフレッシュマンもいないに違いない。

 もちろん、失敗体験も大切だ。ただし、失敗から得られるのは成功への道筋ではなく、初心である。初心に帰ることが成功につながり、その成功をバネに人間は成長していく。

 技術開発でも、企業経営でも、成功を収めるために意識しなければならないことがある。それは、「機能」と「構造」の関係である。

ものづくりの歴史は機能と構造の追求にあり

 旅客機は単純化すると、円筒型の胴体に5つの翼がついた構造をしている。この構造によって、安全に効率よく空を飛ぶという機能を果す。同じ飛行機でもステルス戦闘機は、胴体と翼が一体になって区別できない、旅客機とは全く異なった構造になっている。これは、旅客機の2倍以上の速度で飛んで、なおかつ敵に探知されないという機能を優先するからだ。

 すべてのモノは、目的の機能を達成するための構造を備えている。構造と機能の関係は、モノを設計する時に大変重要で難しいことなのだ。空を飛ぶという機能はとても高度なので、構造を少しでも間違えると、飛ばなかったり、不安定な飛行をして危険性が高まったりする。

 建物の構造と機能の関係は、航空機ほどは複雑ではない。自重と地震に耐えるという機能を満足すれば、あとは自由に意匠を楽しむことが許される。

 いずれにせよ、ものづくりの歴史は人間が求め、かつ自然が許す機能を実現するための構造を追求してきたということが言える。ものづくりの場合は、構造と機能の間に自然現象が介在しているから、自然現象を理解し、コントロールする技術が機能の実現に必要なのだ。

 求める機能を実現するための構造をつくることは設計の重要部分である。これは経営でも同じことが言える。会社として求める機能を実現するためには、それに合った組織構造をつくらなければならない。これは、設計と同様に経営の重要部分である。

 素晴らしい機能を発揮する組織構造をつくることは、そう簡単なことではない。ものづくりと違って、組織構造と機能をつなぐのは人間だったり、人間社会だったりするので、場合によっては、ものづくりより難しいことも多い。

 組織改革を試みて、結局何も得るものはなかったという例は枚挙に暇がない。しっかりと機能する組織構造をつくるためには、大きな経営力がいるのだ。

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著者プロフィール

宮田 秀明 (みやた ひであき)

宮田 秀明

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズ・カップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術―』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクトマネジメントで克つ!』『理系の経営学』(日経BP社)など



このコラムについて

宮田秀明の「経営の設計学」

経営には「論理」が必要である。論理を積み重ねた理系思考がイノベーションを育む。技術力を最大限に生かし、プロジェクトをまとめ上げ、新しいビジネスを創造する。「理系の経営学」を提唱する東京大学の宮田秀明教授が理系の視点による経営の要諦を語る。

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