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瞑想のプロレスラーが作る新たな観客集団

  • 石山修武

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2007年5月29日(火)

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 もの作る人々がいるならば、もの作られる人もいるな、と気づいた。あらゆる商品は市場があって、初めて出現する。一度、その市場の側から考えてみたらどうだろう。いわば逆転の発想だ。どうせ逆転するならば、大逆転の方が面白かろう。そこで周囲を見回してみた。あらゆるヒントは日常茶飯事にある。

図版

「無我ワールド」のプロレスラー、西村修選手(写真:田中昌、以下すべて)

 私の家には若者がよく集まる。私の周りにではなく、家族の友人達だ。明らかに異世代の人々だ。彼ら、彼女らを観察するに、その中でも異色の人間がいる。働くでもなく、何するでもなく、どうやらフリーターらしきを演じている。もしかしたら今流行のニートかもしれない。しかし、全然、沈澱したり、暗いふうはない。前向きなのである。でも、関心のない事、嫌いなモノにはサッと距離をとる。冷淡なのだ。

 S君はK大学の何年生だか知らぬが、まだ学生だ。スポーツに関心があって、それでニューヨークまで出かけて、バスケットボールや、ベースボールの試合を見て回ったりする。好きな選手に焦点を絞って追いかけたりもする。

 聞けば、スポーツというよりも、身体に関して強い興味があるらしい。そう言えば、私の若い友人にも、父親のビジネスを継ごうとせずに、鍼灸の道に入ったのがいる。彼も身体には深い関心がある。拡張、また拡張の道をたどってきた20世紀文明とは明らかに違った方向、縮んで縮小し切って、身体の組織への関心に若者が行き先を転換しているのかもしれぬ。

 S君の友人にA君がいる。同じくK大学出身で、こちらはアッサリともう大学は中退してしまった。関心のおもむくままに世界を見て回り、写真を撮ったりしている。彼らを中心に何十人かの「サークル」があるようだ。時々、集団で何かを試みたり、離合集散を重ねている。

 意地悪く考えてみれば、いい身分の若者たちだ。汗水たらして働かなくても、元々よい階層に属しているのだろうか。しかし、ブランドモノを買い漁る手合いよりも余程僕には興味深い。

静かに斜陽の道をたどるプロレスだが…

 彼らは何に関心を持ち、反応しているのだろうか。日本の経済成長の行き詰まり、人口減少社会を象徴するような、日本の未来を暗示するような彼らの関心はどの辺にあるのか、ウーム、といささか大時代風に考えてみた。

 プロレスなんである。

 彼らに共通する趣味はプロレス観戦、しかも、どうやら1人のプロレスラーに関心が集中しているようなのだ。一個のプロレスラーという人間の周りに人々が引き付けられ、新しい小集団が存在している。これは明らかに新市場のパイロット集団ではないだろうか。

 プロレスの今は、明らかにマイナーな存在である。「力道山VSルー・テーズ」の世界選手権白黒テレビ放映を中央線駅前まで出かけて、大群衆と共に観た世代としては隔世の観ありだ。ジャイアント馬場、アントニオ猪木時代の華も今は失せた。K1、PRIDEという新格闘技にも押され気味である。斜陽の道を静かに降りている最中であるかもしれぬ。

 しかしである。そんなプロレス界に全く新しい観客集団が現れ、新市場の芽が出現したと考えたらどうなのか。あながち希望がないわけではあるまい。

「哲学派」レスラーが登場

 某日、彼らに誘われて後楽園ホールへと足を運んだ。プロレス界のメインスタジアムである。新日本プロレスから分離独立した無我ワールドのレスラーたちの6試合を見た。A君、S君の解説付きであった。彼らは6試合すべての流れの性格と共に、1試合1試合の意味、見どころを微に入り細も尽くして解説してくれた。

 「この試合は、新人レスラーの力量を先輩レスラーが試す、観客もそれを見るのがテーマなんです。新人レスラーのトレーニングの成果、演出力を、つまりその将来性をマット界も、観客も値踏みするんです」

 「この試合は、力をつけてきた選手の成長の成果を先輩レスラーがどれ程引き出せるかが見どころです」

 「この金髪の日本人レスラーには得意技があって、かつてその技で対戦相手を本当に失神させてしまった。そんな神話みたいなのがあって、観客は皆、特にリングサイドや上階の立見席の連中はそれを知っています。だから、いつ、どのタイミングで、その技が出されるのか、それが見どころです。その技に向けて演出が集中し、高められていくんです」

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