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深海の油田開発で、世界トップに挑む

ものつくらぬ、ものづくり世界企業――三井海洋開発(1)

  • 宮田 秀明

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2007年6月8日(金)

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 もう35年も海に関係する仕事をしてきて、痛切に思うのは、日本人のほとんどは海洋民族ではないことだ。娯楽用の船のマーケットは米国の100分の1程度。だからジェットスキーやボートなどを商品とする日本企業は開発から販売の多くを米国の子会社で行っている。

 日本の海洋産業は過去30年のうちに、ほぼ実態がなくなりつつある。現在、世界の海洋機器のほぼ半分は韓国で生産されている。1980年頃には日本でも海洋開発ブームがあり、その後、6500メートルの深海まで潜れる“しんかい6000”が建造されたし、沖縄では海洋博が開かれた。民間企業も、大型の海洋開発機器の開発と製造に力を入れていた。

写真1

三井海洋開発が米国メキシコ湾沖合のマルコポーロ・フィールドに設置したTLP(緊張係留式プラットフォーム)。水深は1311メートルで、設置当時は世界最深記録だった。2004年7月から生産を開始。1日当たり平均産出量は石油が12万バレル、天然ガスが4億立方フィート

 しかし、それから30年近くが過ぎ、日本の海洋産業はほぼ白紙の状態にまで戻ってしまった。過去10年間に海洋開発機器を開発・製造する日本企業がしたことは、半潜水(セミサブ)型の石油掘削装置とLPガス(液化石油ガス)の海上生産設備という2つの製造プロジェクトで多額の赤字を出して、完全撤退の姿勢を業界に確認させたことだ。この2つのプロジェクトは、気持ちはあるが技術もマネジメントも中途半端な企業は世界で戦えないということを実証した。今年4月には、海洋政策の基本理念を定めた海洋基本法が国会を通った。しかし、海洋産業の現場はさびしさを通り越している。

 そんな海洋産業の中で一人気を吐いているのが三井海洋開発という企業だ。

 18年前に多角化がたたって一度倒産したが、その後、海洋油田の生産貯蔵設備に特化して、オランダのSBMに次ぐ世界第2位の企業に成長した。3年前に上場し、たった120人ほどの会社なのに、今期(2007年12月期)の連結売上高は1100億円を見込む。給与水準も東証1部上場企業の中で、トップクラスにある。

現場志向が“コロンブスの卵”を生み出す

 現在、世界の石油生産の30%は海洋油田での生産である。北海油田が発見されて、英国とノルウェーが石油輸出国になったのはずいぶん昔のことである。今では新規に発見される油田の半分以上が海洋におけるものだ。現在の可採石油埋蔵量は30年分とか40年分とか言われているが、これをキープできているのは、海洋で新しい油田が発見されているからなのだ。

写真2

TLPは、海上に浮かんだ構造物をワイヤーやチェーンで海底に固定(係留)している。深ければ深いほど、係留技術の難易度は増す

 海洋で石油を生産するのは難しい。だから、私が学生だった頃は、水深50メートルまでの海洋油田しか生産できなかった。当時の目標は200~300メートルの大陸棚で生産できるようになることだった。それが、この10年間で、年々水深が深くなり、今では1500メートルの深さの海でも生産できるようになった。世界の石油資源問題の重要な一角を、三井海洋開発と世界1位のSBMが競い合いながら、深い海での石油生産技術を開発してきたのだ。

 長さ300メートルくらいのタンカーのような浮体をチェーンやワイヤーで海底に固定し、ライザー管というパイプで原油を水面まで上げ浮体に貯蔵し、タンカーに移して消費地へ輸送する。チェーンやワイヤーで固定するといっても、なにしろ1500メートルの深さだ。これだけ深いと、海底はもちろん真っ暗で水圧は150気圧にもなる。ここで活躍するのは海中ロボットである。ロボットの進歩がなかったら、このような難しい深海技術は発達しなかったかもしれない。

 浮体を係留するチェーンやワイヤーは、長さが1500メートルにもなると、自分の重さで切れてしまう状態になる。これを解決したのは現場の技術者という。普通の発想だと、切れない素材を探す。自重で切れないようにもっと軽くて強い材料、例えばカーボンを使えばいいということになる。大企業の研究所にこもっている研究者ならば、こんな答えを「ほかに考えられません」と頑なに主張するかもしれない。しかし、現場でのマネジメントを経験した若い技術者は、発想の転換で答えを見いだした。

 「チェーンやワイヤーに浮きをつけて上向きに引っ張ればいい」

 コロンブスの卵である。このような現場的な発想が大水深化の技術開発競争を支えているのだ。

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