「シリーズ「産学連携」」

「カーブアウトは日本に適したベンチャー企業の育成法です」

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2007年6月8日(金)

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 ベンチャー企業をつくる手法として「カーブアウト」(Carve out)という言葉を最近よく耳にする。カーブアウトとは、大企業が自社の事業シーズの一部を“切り出し”、ベンチャー企業を創設する手法である。自社の中で選択と集中のふるい分けによってノンコア領域と判断されたものの、独創性があり、事業として有望な研究成果がある。それらを実際に事業化する際の有効な手段になりそうだ。

 大企業の経営陣は、社内の有望な研究成果を基に、自社の社員にベンチャー企業を設立させる。この時に、親となる大企業はある程度出資することで、ベンチャー企業と資本関係を持つ。ベンチャー企業が事業に成功すれば、親会社として自社にその事業を取り込んだり、M&A(企業の合併・買収)やIPO(新規株式公開)によって収益を得るなどの権利を行使できる。

 『カーブアウト経営革命―新事業切り出しによるイノベーション戦略』(東洋経済新報社、2007年2月発行)を執筆し、カーブアウト手法の有効性を唱える政策投資銀行新産業創造部の木嶋豊次長に聞いた。

――「カーブアウト」は日本企業に適したベンチャー企業の創業手法だと主張されていますね。

図版

政策投資銀行新産業創造部の木嶋豊次長。カーブアウトの第一人者

木嶋 カーブアウトは、現代版の“のれん分け”とも言える日本型の新規事業起こしの手法です。従来のベンチャー企業は、起業家精神(アントレプレナーシップ)に富んだ人物が、独創的な新規事業起こしに挑戦することで創業されてきました。その成功例が、米国のシリコンバレーモデルです。ある研究開発成果を上げた人物がそれを技術シーズとして、事業化に果敢に挑むものです。米国では、企業などをスピンアウトした起業家がベンチャー企業を設立し、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル(個人投資家)が支援するという仕組みが出来上がっています。

 米国では、挑戦に値する仕事を求めて転職することが当たり前だと考えられています。そのため、新規事業起こしに挑戦する人物が自然と集まってくるのです。これに対して日本では、会社を辞めてベンチャー企業を興す起業家は多くありません。またベンチャー企業を興しても、一部の成功例を除いてあまり成功していないのが実状です。

――日本ではなぜ新規事業起こしはうまくいかないのでしょうか。

木嶋 日本のモノづくりを支える製造業のリーディング企業は、自社内に研究開発部門を抱え、多くの優れた研究開発成果を上げています。優秀な社員も多く抱えています。ところが、この研究開発成果を生かした新規事業起こしはあまり成功していません。

 その理由は、日本の大企業では新規事業というと一般に最低で売り上げ100億円規模でないと成立しないと見られています。しかし、いきなり自社で100億円規模の新規事業を立ち上げることはやはり困難です。

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著者プロフィール

丸山 正明(まるやま・まさあき)

丸山 正明

日経BP産学連携事務局編集委員。東京工業大学と東海大学の大学院で、非常勤講師として「材料選択の仕方」「技術経営実践論」「産学連携事例」などを講義。経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所などの政策評価/技術評価/事業評価委員を務める。主な著書は「社長のためのTLO活用ブック」「東工大COE教育改革」「産業活性化を担うプロジェクトマネージャー養成講座」「九州大学COE大学改革」など


イノベーション・ジャパン2007



このコラムについて

シリーズ「産学連携」

大学と産業界との連携の仕方を主に取材している丸山正明が、産学連携によって生み出されるイノベーションの事例を紹介。基礎研究から事業化にいたるまで、産学連携が成功するための秘訣を探る。

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