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際限ない「欲望のモデル」

本音の個人を狙い、事業志向も続々

  • 田中 成省,池田 信太朗

バックナンバー

2007年6月14日(木)

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誰もが、パソコンや携帯電話の画面の前ではただ1人になる。
「考える」と「行動する」の差がない世界で、人々は欲望を加速させる。
ネットならではの個人の欲をうまく捉えれば、事業機会は拡大する。

 2月22日、長崎地方裁判所は長崎県佐世保市の男性に、著作権侵害などの罪で懲役2年・執行猶予3年の有罪判決を下した。男性が携帯電話向けの着信メロディーを著作権者に無断で作成し、不特定多数のウェブサイト訪問者にダウンロードできる状態で公開したからだ。

 この裁判記録から読み取れるのは、驚くほどの罪の意識の希薄さだ。「うまく着信メロディーのデータが作成できたため、公開した。喜ばれるのでうれしかった」と男性は語っている。日本音楽著作権協会送信部の渡辺聡部長は「自分がやっていることがそんなに悪いことだという意識はなかった。演奏時間が短いデータなので、何となく問題はないと思っていた。著作権を侵害している人が口にするのはそういう言葉です」と言う。

罪の意識が希薄なネット犯罪者たち

 同協会が著作権侵害者を突き止めて告発すると、その大半が未成年者だという。少年たちは自分がネットで起こす行動について、現実社会にどんな影響を与えるのか想像が及ばない。

 「インターネット犯罪」という言葉からイメージするのは、第三者のパソコンに侵入する「クラッキング」や、電子メールなどを使って決済のIDとパスワードを入力させて盗み取る「フィッシング」など、専門知識を生かしたハイテク犯罪ではないだろうか。

 ところが、実態はそうではない。警察庁の発表によると、「インターネット犯罪」を罪状とした検挙者数は2006年に4425人。そのうち、いわゆるハイテク犯罪に分類できる罪名で検挙されたのは830人余りに過ぎない。大半は、コンピューターに関する知識やスキルとは関係のない詐欺、児童ポルノ、淫行、著作権侵害などの容疑で摘発されている。

 パソコンや携帯電話などの画面の前では、誰もがただ1人だ。マウスの上に置かれた人さし指をわずかに動かせば、世界中の情報にアクセスできる。ネットの内部では、「考える」ことと「行動する」ことはほぼ等しい。欲望が際限なく高まる個人を巧みに誘い込み、荒稼ぎしようとする輩も後を絶たない。

撒き餌に誘われる未成年者

 「欲望のビジネスモデル」は東京のある建物の一室にあった。渋谷駅前から延びる坂道から路地に足を踏み入れ、しばらく歩くとラブホテル街が広がっている。その道すがらに、マンションのような外観の建物がある。ただし郵便受けに並ぶ表札を眺めてみても、個人名らしきものはほとんどない。無数に並ぶ法人名から目当ての会社を見つけ、呼び鈴を鳴らした。

 中に入ってみると、小さめの会議室程度の広さの部屋があった。窓や壁に向かって4台のパソコンがあり、中年男性と20代の男性がここで働いていた。「俺たち2人だけで、ちょっと言えないくらいに稼いでるよ」。中年男性は笑って言う。

 彼らの手口はこうだ。市販されている音楽CDなどから、携帯電話の着信音に使える楽曲データを作成する。次に、この楽曲データをダウンロードできる携帯電話向けのサイトを作成する。もちろん、著作権者の承認を得ていない違法のサービスである。

 ただ、すぐにダウンロードできるようには作らない(下図)。何段階かリンクをたどらないとダウンロードできないような仕組みにする。いくつも張られたリンクのうち、ダウンロードページにたどり着ける正解はただ1つ。残りは外部サイトへのリンクであり、広告だ。楽曲データ欲しさに集まったユーザーが、誤って広告のリンクにアクセスすることを期待しているわけだ。

無数の罠が仕掛けられている

 広告主は、脱法ドラッグの販売業者、オンラインカジノの代理店、児童ポルノの販売業者、援助交際を仲介する出会い系サイト運営者など。クリックしただけで課金されてしまい、支払いを要求される「ワンクリック詐欺」のサイトを運営する業者もある。「違法サイト」「脱法サイト」が目白押しだ。

 「つまり、着メロは撒き餌だよ」と男性は言う。その餌に誘われて集まるのは、主に10~20代の若年ユーザーだ。うまい餌に夢中になるうちに、違法、脱法業者の釣り針にかかって揚げられる。ネットのない時代には、都心の繁華街に足を運ばなければ出合わなかったような欲望産業に、わずか1クリックでアクセスできてしまう。

 「以前はパソコン向けのアダルトサイトで商売していたんだが、今は携帯向けが儲かる」と男性。「間違って踏み込んだリンク先でモノを買ったり、遊んだりする人が結構いるんだよ。ウチは成功報酬型だから、そういう人が多ければ儲かるからね」。

 肌身離さず持ち歩き、プライベートな情報を詰め込んだ携帯電話は、パソコンよりも個人的な道具。だからこそ、人は一段と欲望をさらけ出す。

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