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80年先の未来を見通していた肘掛け椅子

  • 若井 浩子

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2007年6月19日(火)

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 日本で「デザインブーム」という言葉を耳にし、目にするようになって久しい。1980年代はイタリアン・ポストモダンのあおりを受けて、丸や三角、円錐などの形を取り入れたオブジェのような家具や食器が人々の目を引いた。90年代はバブルが崩壊して景気はどん底と言いつつも、その残像のような特異な建築(例えば巨大な古典様式の柱や、金色の謎のオブジェを戴くオフィスビルなど)があちこちにできた。

 新世紀を迎える頃は、空前のミッドセンチュリーブーム。2001年にイームズ(注1)の回顧展が開催された上野の東京都美術館では、門の外にまで入場待ちの列ができ、訪れた人はもちろん、主催者、関係者も驚いた。

 そして現在は北欧ブームである。この北欧ブームは、前述のミッドセンチュリーブームと重複して始まり(ミッドセンチュリーのデザインは30年代の北欧デザインの影響を大きく受けている)、メディア主体の狂騒がひと段落してからも静かに確実に続いている。もはやブームという言葉ではくくれない、デザイン以外の様々な要素を内包する“考え方”や“思想”のようなものとして定着しているようだ。

“1つの北欧”は存在しない

 今年4月、長崎県美術館からスタートした「北欧モダン──デザイン&クラフト展」(注2)では、そんな北欧的な“考え方”に触れ、学ぶことができる。企画を手掛けた橋本優子氏(宇都宮美術館主任学芸員)は同展についてこう語る。

 「北欧と言っても、この地域をひとくくりに語ることはできません。穀物生産と酪農のデンマーク、海運事業、海底油田を持つノルウェー、豊かな鉱物資源のあるスウェーデン、森林に工業化政策を託したフィンランド…、それぞれの背景があり、文化的にも異質です。

 “1つの北欧”という歴史的な政治上の目標も強固な共通認識ではなく、国と国を結ぶ伝統にはなり得ませんでした。でも、それはもう一方で『お互いの違いを認識し尊重しつつゆるやかに共存する』という精神を育む土壌にもなりました。その姿勢は北欧諸国の生活のあり方、ひいてはデザインの根底にあるものだと思います」

図版

アルヴァ・アアルトの肘掛椅子「パイミオ」(1935年~/フィン ランド・アルテック社)のプロトタイプは1930年に制作された。 持続可能な森林資源カバ材を活用したサスティナブルデザイン。成形合板を曲げ加工する技術は当時としては革新的だった

 同展の300点を超える展示作品の1つに、「パイミオ」という肘掛け椅子がある。これはアルヴァ・アアルト(フィンランド、1898~1976)が1930年にデザインした椅子だ。

 パイミオは、ヘルシンキ近郊に作られたサナトリウム(パイミオサナトリウム/1933年)のためにデザインされた椅子である。その後一般商品として生産され続け、今日に至る。カバ材の成形合板を曲げ加工する技術は当時としては革新的で、しかも低コスト。フィンランドではほとんど唯一の自然資源とも言える森林資源を有効活用する画期的なデザインだった。

(注1)チャールズ&レイ・イームズ夫妻。チャールズ(1907~78)はアメリカ、ミズーリ州、レイ(1912~88)はカリフォルニア州生まれ。ミッドセンチュリーモダンの巨匠と称される夫妻は家具、建築、映画、グラフィックなど数々の名作を残した。

(注2)長崎県美術館(5月17日終了)を経て、これから宇都宮美術館(7月1日~9月2日)、京都市美術館(9月15日~10月21日)、東京オペラシティアートギャラリー(11月3日~08年1月14日)と約1年をかけて日本を巡回する。

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