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本音を見抜く力、望みますか

NECの感情認識装置に見る「察する文化」の底力(その2)

2007年6月25日(月)

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 前回は、NECとNECデザイン、日本SGIが共同開発した「言花(ことはな)」という感情認識装置を例に、空気を読む技術について考えてみました(前回の記事はこちら)。声の張り具合などから話し手の心情を推測し、「喜び」「哀しみ」「平常」「興奮」という4つの感情を花びらの色で表現する装置です。こうした会話の行間を読むというコンセプトの技術が生まれてきた背景には、伝統的な日本の「察する文化」があるのではないかと考えたわけです。

 前回の記事に対する読者コメントは、とても興味深い内容でした。「空気を読む」という言葉に、あまりいいイメージを持てないという内容が多く寄せられたからです。

 「空気を読むというのは、何か陰湿で、公にできないダーティーなものや、特定の実力者の意向を過剰に利する無言の圧力のイメージがあります」

 「“空気”で物事を進めると、誰も責任を取らなくなる。責任を取りたくない人が、あたかも自然現象のように見せかけて空気をコントロールする」

前回の読者コメント欄より

 確かにこれらの指摘には一理ありそうです。「空気を読む」といういかにも和風なコミュニケーションへの悪い印象は、2極化しつつある日本人のコミュニケーションスタイルを象徴しているのかもしれません。

感情認識に対する畏怖の念も

写真1

NECとNECデザイン、日本SGIが共同開発した「言花(ことはな)」 (写真:山西 英二)

 まず、察する文化がこれまで以上に先鋭化する流れがあります。これは、特に「最近の若いモン」で顕著のようです。博報堂生活総合研究所による10代の男子の意識調査では、同世代が好感を持つタイプの男子の筆頭は「他人に配慮ができる人」で、逆に嫌いなタイプは「場の空気が読めない人」なのだそう。いずれも、コミュニケーション能力が、若者の重要な評価基準になっているということを示しています。

 昔の感覚だと、若い時には単純に勉強ができたり、スポーツが得意だったりといった、個性や能力、リーダーシップなどが重視され、社会に出て揉まれていくうちに次第に人間関係の調整力の重要性に気づき、丸くウェットになっていくというのが相場でした。しかし、近頃は10代の時分から高いコミュニケーション能力が求められるようです。尖っていたはずの自分も、気づいたら、いわゆる立派なオヤジになっていたという成長の過程は、もはや今は昔なのかもしれません。

 もう1つは、逆に推し量るコミュニケーションを重視しなくなる流れです。特に匿名性の高いインターネットではこれが進んでいます。ネットの世界に出現した「モヒカン族」という種族はその典型でしょう。名の由来はさておいて、ウィキペディアによると、「社交辞令は抜かして端的に論点を述べることが望ましいと考える。ミスを指摘すること、ミスを指摘されることは悪意的なことや失礼なことではなく、間違った情報を訂正する大切な行為であると考える」という特徴がある人たちだそうです。

 正しいと思うことは論理的にストレートにぶつけ合う。前回紹介したドイツ語や北欧スカンジナビア言語でのコミュニケーションに近いコンテクスト性の低いスタイルと言えるでしょう。ドライな雰囲気ですね。

 ほかにも、こんなコメントがありました。

 「なるほど確かに本音と建前を使い分ける日本人らしい仕事とは思うが、技術とは便利だが御するのが難しいものだ。本音も見抜かれるようになると考えると恐ろしい」

前回の読者コメント欄より

 技術が持つ影の側面に対する懸念を指摘したこの意見も1つの真理をついています。実は、世界には言花に使われた感情認識と同じような要素技術が大きな価値となる分野があるのです。それは、何と軍事用途なのです。

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「本音を見抜く力、望みますか」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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