ネット上のサービスでは米グーグルの後塵を拝する米マイクロソフト。
圧倒的な資金力と人材を武器に、王者がついに本気で動き始めた。
形勢逆転を狙うマイクロソフトが市場に放つ秘策とは──。
東京の上野駅から電車で50分、さらに車で20分行ったところに、その小さな飛行場はあった。広大な田園風景が広がる真ん中に、ひっそりとたたずむ茨城県の竜ケ崎飛行場。3月下旬の午前9時、ここから1機の小型セスナが飛び立った。
最高級クラスの航空写真向けカメラを搭載したセスナは、間もなく東京の上空に飛来。約1700mの高度を保ったまま、地上の撮影を開始した。
3月13日から極秘裏に進められているこのプロジェクト。雇い主は世界最大のIT会社、米マイクロソフトである。

まずは米サンフランシスコのダウンタウンの風景を写した右の写真を見てほしい。一見、航空写真かと見まごうほどの精緻なものだが、実はコンピューターが描いたCG(コンピューターグラフィックス)の画像なのだ。
世界中のすべての風景をCGで再現する――。
マイクロソフトは今、莫大な資金と膨大な人員を投入して、世界中の空から地上を撮影し、その写真を立体的なCGに変換するという壮大なプロジェクトを進行させている。
OS(基本ソフト)で覇権を握った、王者マイクロソフト。インターネットの世界では長らく米グーグルの後塵を拝してきたが、ようやく逆襲の狼煙を上げ始めた。
世界の500都市を3次元化
2005年6月、検索サービス最大手のグーグルは世界中の衛星写真、航空写真を自在に見ることができる専用ソフト「グーグルアース」を無償で提供し、世界を驚かせた。
グーグルはその技術や画像を、「グーグルマップ」などのウェブ上のサービスに生かし、ウェブサイトの検索のみならず、地図や地域情報の検索分野でも首位の座を確固たるものにした。
ここにマイクロソフトは画期的なサービスをぶつけ、形勢の逆転を狙っている。昨年11月から開始した「バーチャルアース3D」。これはグーグルアースやグーグルマップと同じく、世界中の衛星写真や航空写真を自在に閲覧したり、場所を検索したりできるネット上の無料サービスだ。
対グーグルの最大の武器は、3次元機能。「3Dボタン」を押すと、平面にビルや野球場などの建造物が次第に立体的な形を帯びていく。

実は、ページトップの画像はバーチャルアース3Dを利用して、サンフランシスコの上空で“撮影”した1コマ。空中を自由自在に飛ぶように視点を変えることができ、風景が変わっていく。まるで本物の都市を空撮しているかのような錯覚に陥る体験だ。
「技術やサービスの品質で言えば、既にほとんどのサービスでグーグルに追いついた。中には追い越したサービスもある。バーチャルアース3Dは、その1つだと確実に言える」
マイクロソフト本社でオンラインサービス事業部を統轄する、スティーブ・バークウィッツ上級副社長は、こう自信をにじませる(4ページの囲み記事「『消費者志向』へ企業文化変える」を参照)。
断っておくが、3次元で建造物を表示する機能は、グーグルアースにもある。だが、左上の画面を見ると分かるように、多くはのっぺりとした形状のみが表示され、バーチャルアース3Dほどの精細さはない。「グーグルアースとはリアリティーがまるで違う」(バークウィッツ上級副社長)のだ。しかもグーグルアースのように専用ソフトを必要としない分、簡単に楽しめる。
今のところ、3次元化されている地域は、シアトルやボストンなど米国31都市と、英国のロンドンなど5都市、カナダの7都市、合計43都市の中心部に限られている。そのほかの国や都市を3次元化していく今後のスケジュールは一切、公表されていない。日経ビジネスはその計画をつかんだ。
2010年までに世界500都市の3次元化を完成させる――。
そして、そのプロジェクトは、この日本でも着々と進んでいるのだ。
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