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電通が挑むメディア総力戦 【後編】

グーグルに負けない

2007年7月6日(金)

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メディア総力戦にシフトする電通の戦略転換の具体像が見えてきた。
だが、ネット広告市場を席巻するのは、米グーグルなどの新興勢力。
電通は指をくわえてひれ伏すのか。挑戦が始まろうとしている。


 日本のネット広告の歴史を語るうえで欠かせない男。長澤秀行、53歳。彼には、ネット広告市場の最先端を常に歩んできたという自負がある。

 電通のネット事業の歴史は、日本のネット広告の歴史とほぼイコールなんです。11年前の1996年4月にヤフーが立ち上がった時、僕たちはソフトバンクの孫(正義社長)さんたちと一緒にネット広告の専門会社を作った。ほとんどの人がブラウザーすら見たことがない時代ですよ。

 そこから電通が率先して、バナー広告のサイズから料金体系までネット広告市場の基礎を作ってきた。テレビや新聞の広告を作っている人間が、見よう見まねでホームページを作り始めてね。時間がかかったし、苦労もいろいろとあったんです。でも、苦労があったからこそ、日本のネット広告はここまで発展したんだと思います。

サイバー・コミュニケーションズ(CCI)社長 長澤秀行氏

サイバー・コミュニケーションズ(CCI)社長 長澤秀行氏 (写真:菅野 勝男)

 電通で新聞広告の畑が長かった長澤は95年、新聞局のデジタル担当部長を兼務しながら、国内の広告会社で初の電子メディア部門、サイバーアドバタイジング部の初代部長に就く。

 その翌年に、国内初のネット専業の広告会社「サイバー・コミュニケーションズ(CCI)」をソフトバンクと共同で設立。長澤はその立ち上げメンバーとして参画した。ヤフーなどネットメディアの広告枠を束ねる会社で、長澤は「世界の広告会社でも初めて」と言う。

 その後、ネット株バブル崩壊の苦しい時期を経て、2002年には電通IC局の局長に就任。2年後、CCIの社長に就任し、ブロードバンド(高速大容量)の波に乗って急拡大するネット広告市場の成長を牽引してきた。

 最大手のCCIが押さえるバナー広告のシェアは5割以上。今では電通のほか、サイバーエージェントやオプトなど300社近い代理店にネット広告枠を提供する。年商は500億円。電通のネット戦略の中核子会社になった。

 ネット広告市場の先頭を常に走ってきた長澤。ただ、彼には1つだけ後悔がある。米グーグルが市場を席巻する成果報酬モデルの広告。ここに本格参入しなかったことだ。

 成果報酬モデルについては、電通グループの戦略として、はっきり言って後れを取りました。テレビにしても新聞にしても、見ていようがいまいが、広告の露出に対して広告主さんからお金を頂ける。ところが成果報酬モデルは、露出してもクリックしなければお金を頂けない。今までのモデルを否定するところがあって、やっぱり積極的に入りづらかった。

 でも、成果報酬広告のニーズは膨らみ、グーグルモデルは大成功しました。グーグルの立ち上がり期に様子を見ていたことは、「市場を作る」という電通のカルチャーに照らせば反省点。1人の電通マンとしては、早めに突っ込むべきだったなと思っています。

 グーグルは2001年、検索連動型広告「アドワーズ(AdWords)」を開始した。グーグルでの検索結果に対応した内容の広告を表示し、クリックされた分だけ課金する成果報酬モデル。検索語に関連する商品に興味を持つ消費者は多く、低コストで購買行動を促せる利点が、広告主を次から次へと呼び込み、巨大な市場を創出した。

 2004年には、広告枠を広げるサービス「アドセンス(AdSense)」も開始。企業やブログを持つ個人をグーグルの広告ネットワークに呼び込み、サイトに露出したアドワーズ広告がクリックされた分だけ、広告費の一部を支払う仕組みだ。広告主と広告枠の提供者を取り持つ「広告代理店事業」に参入したことになる。

伸びる検索連動型広告

 この結果、グーグルの収益は驚異的に伸び、2006年は全収益の99%に当たる約1兆2400億円を、広告による収入で稼ぎ出した。広告世界最大手、米オムニコム・グループの広告による収入を上回る規模だ。

 グーグルは、この「一大広告ネットワーク」をすべて自前で築き上げた。広告主やアドセンスの参加者をウェブサイトで集め、コンピューターでマッチングを行う、完全な直販モデルだ。

 だからこそ、利益率も33%と極めて高い。グーグルの2006年12月期の連結営業利益は、電通の連結営業利益659億円(2007年3月期予想)の約6.4倍、約4200億円に上る。

 電通グループはこのグーグルが得意とする新たな市場に乗り遅れた。長澤はその理由として、従来の広告のビジネスモデルとの違いを挙げる。だが理由はもう1つある。グーグルを「メディア企業」と捉えていたことである。

 電通は広告主に最適な広告戦略を提案する一方で、いかなるメディア企業とも公平につき合い、日本有数の広告枠を揃えることで強さを発揮してきた。前門の広告主、後門のメディア企業。双方は、電通の根幹を成す大切なお得意様。電通自身がメディアとなって他のメディア企業と競合関係になることはタブーとされてきた。

 グーグルも電通にとって、広告枠を提供してくれる大切なメディア企業。少額だが、大手広告主がアドワーズ広告を出す際、電通がグーグルとの間に入って取り次ぐこともある。

 しかし、電通を介さずにグーグルと直接取引する企業は増える一方。グーグルへの取り次ぎも、結果として「広告会社グーグル」を肥えさせることになってしまう。

 このままでいいのか。国内最大手、世界5位の広告会社としてのプライドが、眠れる獅子を動かした――。

先手必勝で動いてきた歴史/グーグルは世界最大の広告会社

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「電通が挑むメディア総力戦 【後編】」の著者

井上理

井上理(いのうえ・おさむ)

日経ビジネス記者

1999年慶応義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。以来、ネット革命などIT業界やゲーム業界の動向を中心に取材。日本経済新聞への出向を経て2014年4月より日経ビジネスの電機・ITグループ

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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