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真似をしたら、勝てない

「船は飛行機である」と考える発想転換の思考法

  • 宮田 秀明

バックナンバー

2007年7月6日(金)

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 先月23日からスペインのバレンシアで開催されていた世界最高峰のヨットレース「第32回アメリカズカップ」で、現地時間の3日、防衛艇であるアリンギ(スイス)が、エミレーツ・チームニュージーランド(ニュージーランド)の挑戦を5勝2敗(9回戦制)で退けて、欧州勢として初めてアメリカズカップを防衛した。

 今回の挑戦者と同じニュージーランドのチームが初めて優勝カップを手に入れたのが、1995年の第29回大会である。この大会の予選に私は日本チームの技術陣を率いて参戦した。しかし、結果は屈辱的な敗北。初心を与えられた私は、その年の夏まで、優勝したニュージーランド艇を徹底的に解剖した。

 再現模型を作って実験もしたし、コンピューターシミュレーションも行った。次の第30回大会に参戦するためには必要不可欠な仕事だった。新しい仕事やプロジェクトを始める時、このようなベンチマーキングがいいかげんだと、後で悔やむことが常である。1年後にノルウェーのトロンハイムで行われた国際会議に参加した時、フランスの海軍研究所の元所長が私に近づいてきて言った。

 「ニュージーランド艇の解析を一緒にやらないか」

 アメリカズカップのプロジェクトでは民間だけでなく公的部門(ほとんどは海軍の研究部門)が協力することも多い。もちろん、私は即座に断った。私たちはニュージーランド艇の解析で1年先行していたからだ。

解析したことは、一度忘れるべし

 ベンチマーキングが終わってからは、開発と設計という創造の仕事に移った。ニュージーランド艇を超えるコンセプトを探す思考の旅に出たのである。

 創造する時には、解析した内容をすべて忘れてゼロベースで考えることが大切だ。ベンチマーキングしたニュージーランド艇のことを少し遠くへやり、自分自身の新しい発想を求める旅なのである。ニュージーランド艇を解析した結果、その素晴らしさは十分に分かった。けれど、真似をしたら絶対にニュージーランドには勝てない。世界一になるためには真似は禁物。“真似は負け”につながるのだ。

 設計コンセプトを見て私のチームの有力メンバーたちは言ったものだ。

 「ニュージーランド艇の船型は素晴らしいですね。あんな形にして下さい」

 「こんなにニュージーランド艇と違う船型はダメなのではないですか」

 最強の設計チームを作ったはずなのだが、実際はこんなことも少なくなかった。だから、2000年のアメリカズカップ艇の設計では、チーフデザイナーである私の発想を100%優先させた。

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