最近、「ユーザー向けの文章をチェックしてください」「サービスの概要を一言で表現したキャッチフレーズを考えているのですが知恵を貸してください」といった、依頼をサイバーエージェント社内でよく受けます。
そういった相談に対して、私は、問題なのは「言葉」ではなく「ココロ」だ、と話します。
別に禅問答がしたいのではありません。
パソコンからの「不正な操作が実行されました」。こんなメッセージに、ムカついた経験をみなさん一度はお持ちかと思います。
冷蔵庫やテレビ、エアコンといった、いわゆる「家電」ではゼッタイに許されない言葉づかいが、まだまだパソコン、インターネットでは、はびこっています。
これは、「インターネットをつかわせてやっている」「つながせてやっている」という「ココロ」が、提供者側にあるからです。
たしかに、ダイヤルアップ接続の頃、モデムの「ピーヒャラヒャラヒャラガー」の後に、「インターネットに接続しました」と表示されると「お代官様! ありがとうごぜえますだ!」と平伏したいくらいの気持ちになったものです。
でも、今やインターネットもパソコンも、あたりまえの存在。より家電に近づきつつあります。こんななかで、従来の殿様発想でメッセージを書いていないか、とサイバーエージェント社員に問いかけるようにしています。
コピーライターの小西利行さんが、うまいこと言っていたので、そのまま使わせてもらっているのが、「伝える」ではなく「伝わる」かが大事なのだ、という言葉です。
「アメーバブログに新しい絵文字が追加されました」だけでは「伝える」です。
その新機能が追加になったことで、これまでと違う、どんな楽しいブログになるのか、どんな活用方法があるのか、ちゃんとユーザーに「伝わる」ように表現しなければならない。
それは、「ハートとハート」のコミュニケーションであり、相手の心にリーチアウトできるかどうかだ、と言うようにしています。
またそれは、マニュアル化できるものではありません。でも、いくつか、参考になる方法があります。今回はその一部を紹介します。
ラジオDJになって、書いた文章を声に出して読んでみる
ラジオ通販の返品率は、テレビ通販の返品率より低い、という事実をご存じでしょうか? 本来、「想像していたカタチと違った」「こんな色だと思わなかった」といったクレームは、ラジオ通販の方が多そうな気がしますが、実はそうではないのです。
それはラジオDJの持つユーザーに「伝わる」チカラです。DJのチカラは、リスナーの心に届くコミュニケーションをつくるチカラ。だから、返品率が低いのです。
「あの人がすすめてくれたんだ」という思いが大事なのです。
サイバーエージェント社内のライターたちには、もっとラジオを聞こう、と言っています。私は、J-Waveをよく聞いていますが、クリス智子さんと秀島史香さんは、すごく参考になります。
クリス・ペプラーさんは、ちょっと上級者向けで、素人は真似しないほうがいいかもしれません(笑)。
「声に出して読む」。このちょっとした行為で、自分の書いた文章が、きちんと他人に伝わるものになっているかどうか、判断することができます。
僕も、毎回、この日経ビジネスOnlineの原稿を音読するようにしています。
そして、もうひとつ、社員に強調する言葉が「improvise」です。
「インプロバイズ」というキーワード
「improvise」という英単語は、辞書をひくと「即興」と出ていることが多いのですが、ちょっと違うと思います。
ジャズのトランペッターとドラマーとベースマンが、お互いの音を探りあいながら、徐々にグルーブしていって、ジャムして、一夜限りの最高の音をつくっていく。それが「improvise」なのです。
ユーザーの方からの問い合わせやリクエストは、さまざまです。
それを定型のマニュアル通りで返したのでは、ホスピタリティのある対応はできません。
でも、基本的なルールがなければ、サービスとしての統一感がとれません。
なので、基本的な約束事は共有したうえで、「improvise」していくことが大切なのです。
でも、「improvise」を共有するのは、とても難しい…。
なにかヒントはないか、と思っていたら、たまたま出張で出かけた大阪で、ひとつの答えに出会いました。
ザ・リッツ・カールトン大阪の現場
ザ・リッツ・カールトンというホテルに関しては、数々の本が出版されています。このコラムの読者の中にも「またリッツの話かよ」と食傷気味の方も多いでしょう。
でも、私が今回、書くのは、支配人目線でも、伝説のコンシェルジュ目線でもなく、一人の宿泊者として私が体験した「ホスピタリティ」と「improvise」の融合です。
書き出すときりがないほどですが、今回の1泊2日の短い滞在期間中、予約の申し込みメールから、タクシーで新大阪駅に向かうのを見送られるまで、驚きと感激の連続でした。
そして、その多くが、「マニュアル」ではなく、従業員ひとりひとりの「improvise」による部分が大きいサービスでした。
月曜の午後4時過ぎに、私はタクシーでリッツ・カールトンに到着しました。
たいていのホテルは、ドアマンがタクシーのドアをあけて、こう聞きます「いらっしゃいませ。お客様、当ホテルのご利用はご宿泊でしょうか? ご宴会、お食事でしょうか?」。
たとえば「宿泊です」と答えると、次に「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」と聞かれます。答えると、荷物を持ったベルボーイが、フロントへと誘導してくれて「ご宿泊の●●様です」とフロント係に伝える。だいたいこんな流れです。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。










