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ソフトバンク首位獲得は“ケータイ泥沼化”の前兆か?

  • 松本 敏明

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2007年7月18日(水)

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 ボーダフォン日本法人を買収し、通信業界の「聖域」だった携帯電話事業に乗り出してから1年強。ソフトバンクモバイルが5月、ついに携帯電話の月間純増数でトップの座を獲得した。

 同社が首位に立ったのは、前身のJ-フォンとボーダフォン時代を含めても、調査が始まった1996年以降初めてのこと。先々週発表になった6月の純増数でも首位の座を維持している。

 好調だったKDDI(auの増加分にツーカーの減少分を合わせた数値)をさえも追い抜いてソフトバンクモバイルが首位に立ったという事実は、携帯電話でも料金値下げがユーザーに高い説得力を持つことを語っている。そしてこの構図は、ソフトバンクが2001年に低料金のADSL(非対称デジタル加入者線)サービスを引っさげて通信事業に参入してから、固定通信で起こった一連の動きに重なって見える。

 というのも、現在の固定通信は市場縮小が目に見えて進んでいるからだ。電気通信事業の売上高が減る中で、固定通信と移動通信に占める固定の売り上げ比率は4割強で推移している。そして今後、携帯電話までが縮小方向に進むと、携帯電話だけでなく日本の通信産業そのものが危機的な状況に陥りかねない。

ARPUの低下は通信事業者の首を絞めかねない

 ソフトバンクモバイルが「ホワイトプラン」を投入したのは2007年1月。月額基本料を980円と低く抑え、一部の時間を除き同社のユーザー同士の通話料を無料にした料金設定で攻勢に出た。さらに追加料金を払えば通話料を抑えられる「Wホワイト」や家族に限り24時間通話料を無料にする「ホワイト家族24」といったメニューを矢継ぎ早に繰り出し、ユーザーにメリットを訴えていった。

 結果的にホワイトプランは、ユーザー獲得とシェア拡大のために有効だったと言える。業界3位のソフトバンクモバイルにとって、ユーザー獲得は至上命令だった。しかも端末の割賦販売とセットにしているため、ユーザーが短期間で契約解除するリスクも回避できている。

 ただし、料金値下げは事業者の収益に影響してくる。以前から携帯電話事業者3社の中でもARPU(ユーザー1人当たりの月間収入)が低いソフトバンクモバイルにとって、手放しに喜べる話ではない。実際、ソフトバンクモバイルの全1644万500契約のうち、3分の1以上を占める600万契約がホワイトプランを利用する。ソフトバンクモバイルの収益拡大の道筋が見えていないだけに、今回の戦略に対する評価は難しいところだ。

 ホワイトプランに対して、NTTドコモは「DoCoMo 2.0」と呼ぶキャッチフレーズを前面にキャンペーンに乗り出した。どこかで目や耳にしたであろう「そろそろ反撃してもいいですか?」というフレーズには、KDDIのみならずソフトバンクモバイルにも純増数で後塵を拝していたドコモのあせりが、図らずも透けて見える結果となった。

 多くのメディアをにぎわしたキャンペーンはDoCoMo 2.0という言葉を広めたものの、その名の下にある新サービスを伝える訴求力に欠けていた。キャンペーン開始後の純増数があまり伸びていないことが、その効果を物語っている。

 見方を変えると、このキャンペーンは「料金競争に乗りませんよ」というNTTドコモの意思表示にも取れる。この春商戦にはソフトバンクモバイルが打ち出した「料金」に対抗できるほどの弾(たま)を用意できなかったNTTドコモが、イメージ優先で展開したキャンペーンという解釈だ。KDDIも「料金競争には乗らない」と小野寺正社長兼会長が何度も繰り返しているように、値下げには慎重な姿勢を見せる。

 今後は、ソフトバンクモバイルが仕掛ける低料金競争にどこまでNTTドコモとKDDIが乗らずにいられるかが焦点になってくる。既に法人向けサービスの一部では、NTTドコモとKDDIが新メニューを打ち出し、それにソフトバンクモバイルが対抗するという値下げ合戦の動きが見えてきた。もしも値下げ競争による消耗戦に陥ると、次世代携帯電話システムの開発など将来に向けた活力が失われ、市場全体が先の展望が見えない“泥沼化”に突入する危険もある。

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