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トイレ戦線、死角なし

TOTOのトイレ技術に見る日本的感性の繊細さ(その2)

2007年7月23日(月)

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 前回は、TOTOが開発したトイレの擬音装置「音姫」を題材に、日本的な感性の繊細さと、それをものづくりに生かす日本の製造業の強みについて考察しました(前回の記事はこちら) 。

 トイレで用を足す音のような「ちょっとした恥ずかしさを隠したい」という欲求は、人間にとってとても高次な贅沢。そうした欲求を「そこまでやるか」というこだわりで商品に昇華させる技は、日本のお家芸という話でした。擬音装置に限らず、温水洗浄機能や、暖房便座、自動でふたが開く機能など、日本のトイレは世界でも類を見ない高機能化が進んでいます。

 それでは、なぜ日本のトイレ業界はそうした高次のものづくりに踏み込むことができたのでしょうか。それを解き明かすため、今回も、引き続きトイレの話題におつき合いいただければと思います。ヒントは、前回も登場していただいたTOTOの技術主幹、林良祐さんが教えてくれました。林さんによれば、「トイレの個室は、最後に残された究極のプライベート空間」だというのです。

 独りで用を足せるようになってから、トイレの個室に自分以外の人がいるという体験のある方は、よほど特殊な事情のない限り、ほとんどいないと思います。トイレの使い方について、誰かにアドバイスを受けることもなければ、干渉されることもありません。個室内では、自分がルールブックであり、各人が自分流の営み方を作り上げているというところに、他の空間とは全く異なるトイレの特殊性があります。

 各人各様のミステリアスな使い方であるが故に、トイレの個室は人間の本性があらわになる空間です。個室の隣人は何をしているか、知る術はありません。暖かい便座を枕にして居眠りする酔客がいるかもしれないし、フタの上によじ登って、戸棚のロールペーパーを取ろうとジャンプする子供がいるかもしれません。もっともっと想像を絶するシーンがあるそうですが、企業秘密ということで林さんには教えてもらえませんでした。

トイレメーカーの神髄は“人間の本質”に迫るものづくりにあり

 トイレメーカーにとって最も大事なポイントは、こうした人間の本質を理解すること。「小さい頃、自分がトイレメーカーに就職するなんて想像すらしませんでした。なんか格好悪い感じでしょ。でも、トイレほど人間の本質に触れられる商品はない。これほど楽しい仕事はありません」。林さんは、こう言い切ります。

 “人間の本質に迫るものづくり”―― ここに日本のトイレメーカーが、より高次なものづくりへと踏み出せたカギがありそうです。

国内における温水洗浄便座の世帯普及率の推移。着実に普及が進んでおり、現在はほぼ3分の2の世帯が温水洗浄便座を設置している。 出所:内閣府、消費動向調査

 「それにしても、暖房便座や温水洗浄便座、擬音装置などのトイレ技術は、海外では広まっていないではないか」という読者の鋭いツッコミが聞こえてきそうです。実際、前回のコメント欄にも、同様の趣旨の指摘をいただきました。確かに、日本が誇る高機能トイレは海外でも人気、とは言い難い状況です。日本人からすれば、こんなに便利で快適なものが普及しない。なぜでしょうか。

 理由はいくつかあるようです。

 日本では現在、温水洗浄便座の国内普及率が既に65%を超えています。この高い普及率に一役買ったのがテレビCM。特に、タレントの戸川純さんを起用した1982年のTOTOのテレビCMはセンセーショナルでした。コピーライターの仲畑貴志さんによる「おしりだって洗ってほしい」という当時としては斬新なキャッチコピーを、覚えている方は多いのではないでしょうか。

 温水洗浄便座の魅力は、実感しなければ分からない類のもの。使い心地の素晴らしさを知り合いから口コミで聞くか、実体験しなければ、消費者は財布の紐を緩めないでしょう。その最初のハードルを越えるために、テレビというメディアが、とても効果的だったことは想像に難くありません。

【お知らせ】本コラム著者の書籍が出版されました

 本コラム「ニッポン的ものづくりの起源」の筆者、川口盛之助さんが7月19日に著書を出版しました。題して『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社、1575円(税込))です。

 マンガやアニメ、萌え系、ギャル文化など、一見、能天気で退廃したように思える文化の中にこそ、日本経済の柱になる製造業を支える潜在力がある――。長い日本の伝統の上に花開いた「オタク的な文化」や「女の子のように細やかな文化」から生まれた、世界に誇るべき製品や技術を分かりやすく解説し、豊富な実例とともに日本の真の強さを解き明かします。

 推薦の言葉を寄せているのは、麻生太郎外相。本コラムの原点となった論考が満載です。

コメント27件コメント/レビュー

要望です。駅の個室トイレ、TOTOさんの力でもっと増やしてください。朝どうしようもないときに混みまくってます。皆さんもそう思いませんか?(2007/07/31)

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「トイレ戦線、死角なし」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

要望です。駅の個室トイレ、TOTOさんの力でもっと増やしてください。朝どうしようもないときに混みまくってます。皆さんもそう思いませんか?(2007/07/31)

海外での普及率が低いのは規格が無かった事もあるのでしょうが、むしろ海外では、状況がそこまでいってないのでは、と感じます。前回のコラムでもあったように機能が充実して初めて感性の段階になるありましたが、海外ではトイレが水洗でなかったり、余り衛生でない事も多々あります。そのような状況では暖房便座/温水洗浄便座/擬音装置より必要な物が沢山あり感性などは2の次という事だと思います。ただ、トイレが電子化されてるとは思ってましたが、自動車クラスの制御とは知りませんでした。一見すると本来関係がないような物も感性を満たす為に、深く追求(電子化も1例)する事が、日本の強みと思います。(2007/07/29)

我々の暮らしは、入り口が食事で出口がトイレ。衣食たりれば、トイレにもエネルギーをかける価値がありそうですね。トイレ機器メーカーという業種自体の面白さと今後の潜在的な可能性がよく伝わってきました。(2007/07/26)

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