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科学技術の“粉飾決算”は許されるか

イノベーションを生み出す評価システムの大切さ

  • 宮田 秀明

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2007年7月27日(金)

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 「でも先生、勲章がありますから」

 数年前、課長補佐の肩書きを持つ役人が私に言った。彼は、当時私が任されていた国の研究プロジェクトの取り組みについて、私を説得に来たのである。

 私は即座に答えた。

 「2000円のブリキ細工なんかいりません」

 すると、課長補佐と一緒に来た若い技官が、つまらないことをつけ加えた。

 「先生、4000円くらいはすると思いますよ…」

真面目な担当課長の熱意にほだされたものの…

 国の研究プロジェクトは、役人がマネジメントを誤って失敗することが多い。彼らが作った通りのシナリオで実行し、大学の“有識者”や“専門家”に評価させて、お墨付きを得る。小泉内閣以降、内閣府が開く会議では、そうでもない例が増えたが、ほとんどの省庁の会議には、いわゆる「御用教授」が集められる。

 だから、正論を言って口うるさい私のような教授には頼みに来ない。誤解のないよう言えば、国から頼んでほしいから、こうしたことを書いているわけではない。何度かこのコラムで紹介しているように、私の研究室は、技術が使われる実際の現場を重視した産学連携の研究開発を主なテーマにしており、国の研究費を使った研究開発プロジェクトは基本的には手がけていないのである。

 しかし、少ないながらも国家プロジェクトのマネジメントを引き受けたことがある。その1つが、冒頭の会話の2年前に依頼された内航船の近代化プロジェクトだった。トンキロベースだと国内物流の40%以上が船によるものだ。石油や鉄鋼、セメント関連が船荷のほとんどを占める。それを支えているのは、多くが5000トンまでの小さな船で、性能は悪いし、船員も高齢化している。この船を操船しやすい、燃費のいい、環境にやさしい船にしようというプロジェクトだった。役人にしては珍しく真面目な担当課長の熱意にほだされて、引き受けたのである。

 ところが、2年もすると役人は人事異動でいなくなる。この時も、2年たって熱心な課長は異動してしまった。プロジェクトは順調に進み、実証船の建造を計画する段階に至っていたのだが、新しい課長は、不明朗な意思決定を通そうとするのである。それを拒否した私を説得に来たのが、冒頭の課長補佐だった。だが、その内容はとても納得できるものではなかった。そして、私はこの研究開発プロジェクトから身を引いた。

コメント16件コメント/レビュー

こういった問題の根底には、「責任の不在」があるとも考えられます。責任はプロジェクトの結果だけにこだわるのではなく、プロジェクトや進捗、調達などが計画通り行かなかった場合(かなり多いはず)に誰がどう対処してどう報告するか、失敗の原因の究明と対策の実施、副産的な成果等が出た場合、どうするか(別プロジェクトを立ち上げるとか)など多岐に渡っており、こうしたマネージメントを第三者的な立場でできる専門機関が必要だと思います。それによって、役人は評価に、研究者は研究に専念できるような環境が作られるのでは?また、計画通りいかなかった場合も、役人が直接失敗の言い訳をしなくても良いので、大本営的な発表になり難いでしょう。さらに全く無駄な研究はまず有り得ず、派生的な研究についての可能性もこういった機関が指摘できるとさらにスムーズに産学連携が進むのではないかと期待できます。(2007/07/31)

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いただいたコメント

こういった問題の根底には、「責任の不在」があるとも考えられます。責任はプロジェクトの結果だけにこだわるのではなく、プロジェクトや進捗、調達などが計画通り行かなかった場合(かなり多いはず)に誰がどう対処してどう報告するか、失敗の原因の究明と対策の実施、副産的な成果等が出た場合、どうするか(別プロジェクトを立ち上げるとか)など多岐に渡っており、こうしたマネージメントを第三者的な立場でできる専門機関が必要だと思います。それによって、役人は評価に、研究者は研究に専念できるような環境が作られるのでは?また、計画通りいかなかった場合も、役人が直接失敗の言い訳をしなくても良いので、大本営的な発表になり難いでしょう。さらに全く無駄な研究はまず有り得ず、派生的な研究についての可能性もこういった機関が指摘できるとさらにスムーズに産学連携が進むのではないかと期待できます。(2007/07/31)

私は、先生に参加されたプロジェクトに最後までのこって、役人と戦ってほしかった、おりられるしかなかったのでしょうか・・?(素朴な疑問です。)途中で降りられたからこそ、こういった検証ができるのかもしれない、と思いましたが、次に国家プロジェクトに参加される機会には、国家プロジェクトそのもののあり方、役人さんにぜひイノベーションを波及させてください。先生のような方がいるのだから、絶対できると思います。(2007/07/30)

評価。とても大事だと思います。仰るとおり、国立大学法人や旧国研・独立行政法人の研究者・そのOBが行っている現状です。つまりは内輪。内輪が内輪で話している以上、まあ、無理だと思います。そして、国家公務員が担当しています。自分の担当していたプロジェクトが評価悪ければ、出世に響く。おまけに仰るとおり、当初プロジェクトを始めた人は既に異動済みで、なぜ始めたのかも良くわからないまま、やっていることもあり、役人が替わるたびに方針や目的すら変わります。外圧によっても、変わります。そのような状態でまともな評価など行えるわけはありません。報告書を書いても、それをいくらと値段をつけることができない。民間会社で評価主義を取り入れましたが、評価などできるわけがない。目標を立てて、達成度を見る。聞こえはとてもいい。でも、目標を低くしておけば、達成度はいつも良好。学校であれば、試験で点数がついた。世の問題には絶対解など存在しない。報告書を書いても、それがいくらに相当する火などわかりもしない。だから、働いた時間で技術者の値段で決まる。青色ダイオードの話が出ていますが、あれは会社が製品化して儲かっているから、お金に換算し易い。しかし、金には換算できない技術もこの世にはある。それを評価する方法はこの世にはない。評価。言うのは簡単。必要なのも当然。しかし、小泉的○か×かの二元論による評価では何も生まない。(2007/07/28)

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