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誰が新聞を滅ぼすのか

再編進む米欧、「紙の常識」通じず

2007年8月2日(木)

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インターネットに読者や広告を奪われ始めた米新聞業界で再編が続いている。
生き残りを賭けた新聞、経済誌の「電子版」を巡る競争も激しさを増してきた。
米欧、そして日本のニュースメディアの未来はどうなるのか。最新の動きを追った。

 「ルパート・マードック氏の提案は我々の優れたジャーナリズムの価値を反映した結果。従業員には『胸を張れ』と言っている」

 こう語るのは、米ダウ・ジョーンズ(DJ)が発行する経済紙「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」の発行人、ゴードン・クロビッツ氏だ。

 DJとマードック氏率いる米大手メディアグループ、ニューズ・コーポレーションが買収について協議を続ける6月中旬、クロビッツ氏は日経ビジネスのインタビューに応じた。同氏は買収に反対している編集部門のトップ。マードック氏への思いは複雑なはずだが、発言は淡々としていた。どこか会社の命運を悟っているかのようでもあった。

 「創業一族のバンクロフト家が下した結論は、(売却先がニューズかどうかはともかく)大企業傘下になる方が成長戦略を描きやすいというものだ」

したたかなマードック氏

 ニューズが提示した「1株=60ドル」という価格は、買収案が公表される前の株価に65%のプレミアムを上乗せした破格の条件。そのため、「高級紙を傘下に収めたいマードック氏の野心から生まれた提案」との見方もある。

 だが、そこには「メディア王」の異名を持つマードック氏のしたたかな計算がある。ニューズは今、傘下企業をインターネット時代に合わせて再構築している。2005年にはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のマイスペース・ドット・コムを買収。そして今、DJに食指を動かす一方で、米ヤフーにもマイスペースとの株式交換を持ちかけている。

 その先に透けて見えるのは、DJ買収で得た経済情報をグループのテレビやネットで多重活用する狙いだ。傘下の24時間ニュース専門局「FOXニュース」はゼネラル・エレクトリック(GE)傘下の「CNBC」の勢いに押されているが、DJはそのCNBCに経済情報を供給する立場にある。買収提案の裏にはライバルから“キラーコンテンツ”を奪い取る思惑が見える。

 一方、当初反対を表明していたバンクロフト家や取締役が一転、株式売却に柔軟な姿勢を見せ始めたのは、自らの立場を冷静に考えた結果だろう。傘下に強力なテレビやネット企業を持たないDJはコンテンツの多重活用戦略は描きにくい。クロビッツ氏は「我々は中規模のメディア企業」と語る。

 業態は新聞社とは異なるが、5月には米カナダの金融情報サービスのトムソンが、老舗通信社の英ロイターを買収することで合意した。これも事情は似ている。

 経済情報データの豊富さでは定評のあるトムソンだが、ニュース部門は持っていない。その結果、分析を糧とするアナリストやエコノミストには活用されても、為替ディーラーなどマーケットと直接対峙する金融マンにはあまり受けない。やはり市場を動かすのは、ニュースそのものだからだ。

 片やニュース部門が有名なロイターは業態を変え、売上高の9割は金融情報サービスになった。ただ、「供給者の論理で商売をしている」「使い勝手が悪い」という声が少なくない。

 その結果、両社とも米ブルームバーグの後塵を拝している。ブルームバーグは1981年創業と後発だが、金融情報サービスでは世界シェア33%を握る。これに対し、トムソンは23%、ロイターは11%に甘んじている。ロイターの背中を押したのは、ブルームバーグの独走を止めるには共闘体制を敷くしかないとの危機感だろう。

 この時期に、経済情報を扱う2社が買収提案を受けたのは決して偶然ではない。「経済情報はカネになる」。マードック氏はこう口にしてきた。

 パソコンや携帯電話の普及で情報を提供する「箱」は増えた。だが、肝心のコンテンツが充実しなければ、ただの箱でしかない。その点、投資や運用に直結し、企業幹部や富裕層が読むことの多い経済情報は価値の高いコンテンツの1つであり、広告の価値も高くなる。

 ここに新聞や通信社などのニュースメディアが買収の標的になる理由がある。しかも米国では創業家があえて身売りに動くケースが相次いでいることが、この業界がかつてない変革期を迎えていることを象徴している。

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「誰が新聞を滅ぼすのか」の著者

井上理

井上理(いのうえ・おさむ)

日経ビジネス記者

1999年慶応義塾大学総合政策学部卒業、日経BPに入社。以来、ネット革命などIT業界やゲーム業界の動向を中心に取材。日本経済新聞への出向を経て2014年4月より日経ビジネスの電機・ITグループ

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師