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半端な達成感が作り出す落とし穴

オシムジャパンはなぜ敗れたか

  • 宮田 秀明

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2007年8月3日(金)

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 2000年に開催された世界最高峰のヨットレース「第30回アメリカズカップ」の予選、1回戦、2回戦で日本チーム「ニッポンチャレンジ」の戦績はパッとしなかった。

 予選に先立って練習試合もほとんどできず、セーリングチームが実践抜きのぶっつけ本番で挑んだことが大きかったのだろう。格闘技のようなマッチレースの戦い方に慣れない日本チームは、予選に参加した11チーム中5位くらいをウロウロするばかりだった。

 その時に恐れていたのは、チームのメンバーが戦績を「こんなものだ」と思ってしまうことである。流れを変えなければ、このままずぶずぶと負けが込んでしまいそうな雰囲気だった。

 幸いなことに、2回戦が終わってから3回戦が始まるまで、10日間ばかりの期間があった。私は、いつも大学の仕事を片づけて、試合と試合の狭間に、試合会場であるニュージーランドに飛んでいた。

よくない流れを断ち切るには中途半端ではダメ

 大会中、試合のない期間の過ごし方は、どんなスポーツでも、とても大切な役割を果たす。次の試合相手を研究し、天候などを予測しながら、ベストの状態にチームをもっていかなければならない。アメリカズカップでこの期間に技術陣ができるのは、セーリングチームと話し合いながら、2艇ある試合艇に始まって、キールや舵、セールなど、様々な部品で最適なものを選択することである。

 私たちの技術陣も、考えられるすべての対策を打った。よくない流れを断ち切るには、小出しの対策ではダメだ。この時は、まず1番艇の「阿修羅」から、2番艇の「韋駄天」に切り換えた。部品も、それぞれできる限り一番いいものを選んだ。セーラーたちも、船体を2000番の紙やすりで必死に磨くという初めての体験をした。鏡のようになった船体の表面に映る周りの景色は、まるでチームの一体感を象徴しているようだった。

 現場の指導官であるスキッパーのギルモアの気持ちも高めるように努力した。彼はオーストラリアのパース工科大学出身だったが、技術について深い理解があるとは言い難かった。優秀なスキッパーや、F1のドライバーは技術的な理解度も高いことが多い。F1のドライバーなら、セナやシューマッハのような天才ドライバーがそうだと思う。命懸けでスピードを出すようなドライバーが世界の頂点を極めるのは難しいことなのだ。

 一方、私はセーリングの素人。ただし、セーリングチームの操船によって船が航走中にどのような状態になっているかは、ビデオや航行データなどを通じて、ほとんどデジタルに理解できていた。その時に気がついたのは、日本艇が方向転換後に増速する時のパフォーマンスがよくないことだった。

 ヨットは方向転換する時にどうしても減速してしまう。その減速を小さくすることが、技術陣の力の見せ所である。2000年の大会では、1995年に参加した前回大会で30%だった減速率を、半分の15%まで小さくできていたはずだった。技術革新の成果である。

 だが、スキッパーのギルモアの感想は違った。

 「方向転換の後、キールが引っかかったような感触がある」

 恐らく、操船技術の未熟さが出ているのだろうと思った。キールの迎角を最適にするような操船、つまり風との角度の取り方がうまくいっていないのではないかと。そうは言っても、連続的に変化させる微妙な操船技術を手中に収めるには、もう遅すぎる。仮に技術的な課題があったとしても、限られた時間では簡単に修正できない。もう本番の真っ只中なのだ。

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