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顧客不在の官製予報に挑む

“海の安全”をビジョンに――ウェザーニューズ(1)

  • 宮田 秀明

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2007年8月24日(金)

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 現在、世界最大の船はコンテナ船である。昨年デンマークのオデンセ造船所で建造されたコンテナ船は長さがちょうど400メートルもあって、1万1000個のコンテナを積むことができる。この船はハイブリット船である。巨大船に必要な馬力を供給できるエンジンがないので、電気モーターで足りない馬力を補っているのだ。

 一般貨物の国際輸送の大部分はコンテナ船によるもの。「トラックに乗せた貨物を船に移し替えないで、トラックごと船に積んだ方がいい」と考えた米国のトラック運転手、マルコム・マクリーンが発想し、シーランドという米国企業が1956年に始めたビジネスだ。日本の海運会社が日本と北米間のコンテナ輸送サービスを開始したのは68年。この時は、わずか750個積みのコンテナ船を邦船各社が共同で4隻建造して、週1回の運航を始めたのだった。

 現在、1年間に世界で国際輸送されるコンテナの数は約8000万個で、これを約2000隻のコンテナ船で賄っている。200個しか積めない小さな船もあるが、前述した1万1000個積みもあり、大型化が進んでいる。最近、韓国に発注された1万2500個積みのコンテナ船は、2014年までに拡張される予定のパナマ運河を通航できる最大の船で、価格が200億円くらいする。

 こうした地球物流を担うコンテナ船の約9割に気象・海象の情報を提供している日本企業がある。ウェザーニューズという世界最大の気象情報会社だ。

ビジョンある経営で官業と闘ってきた

ウェザーニューズの気象予測チーム。天気図や気象衛星の画像が表示されたモニターがズラリと並ぶ

 船舶にとって気象・海象の予報情報ほど大切なことはない。船長は気象・海象のデータを適切に判断して、安全かつ経済的な航路を選ぶ。ただし、気象・海象の変化は急激に起こるから、判断が間に合わなくて大変な事故になることもある。海難にはならなくても、波をかぶって何個かのコンテナを海に流したり、壊してしまったりすることもある。今から30年以上前、私がコンテナ船で日本と北米を往復した時は、船長の判断ミスで東シナ海低気圧と正面から激突し、最大級の時化の中を丸1日航行するという貴重な体験をした。

 ウェザーニューズの創業者である石橋博良会長は若い頃、商社マンだった。木材輸入を担当していた時、木材を積んで福島県の小名浜港に入港した木材運搬船が、急速に発達した東シナ海低気圧に遭遇して海難事故となり、15人の人命を失った。材木船は重心が高く、荷崩れしやすいので、昔は事故が多かった。

 彼は、こうした悲劇をなくすために商社を辞めて、気象情報会社を作った。日本では、気象・海象の予報サービスを気象庁が行ってきた。しかし、そのサービスは、いかにも“お役所的”である。予報サービスを受ける人がどのような気持ちで利用しているかの理解がない。顧客満足度には全く無関心で、一方的にデータを送って、あとは野となれ山となれといった姿勢が感じられる。

 民間であれ行政であれ、サービス提供者にとって、顧客満足度を知ることが大切なのは共通であるはず。だが、公的サービスでは顧客という概念がないので、不親切どころか不祥事まで起こしてしまう。最近の年金問題がいい例だ。

 ウェザーニューズは、気象・海象の予報サービスを顧客の視点で提供するというビジョンによって設立された企業である。はっきりしたビジョンを軸に据えた企業の競争力は高い。最近、はやりの言葉になった“品格”の重要な部分はビジョンが作るのだと思う。

 民間ビジネスで顧客満足度をないがしろにすれば、顧客が離れてビジネスが成長しなくなる。だから結局は、顧客満足度を重視するレベルが高い民間ビジネスが競争力を持つ。ウェザーニューズも気象庁との闘いの中で急成長した。前期(2007年5月期)の売上高は112億円。創業15年目の2000年12月に株式公開し、2003年11月には東証1部上場企業となった。その後、海外でさらなる飛躍を目指す布石を打っていたため利益面では低迷したが、足がかりをつかんだ今期からV字回復を遂げそうである。

 気象庁という官業と闘うことには、きっとたくさんの困難があったはずだ。同じサービスを提供するのだから、民業圧迫に直面することも多かっただろう。

 ウェザーニューズの石橋会長が官による民業圧迫と闘う姿は、宅配便という新しいビジネスモデルを創造するため、旧運輸省や旧郵政省と闘ったヤマト運輸の小倉昌男さんの姿と重なる。宅配便という新しいサービスが物流にイノベーションをもたらしたことはよく知られている。石橋会長は、こうした新しいサービスを生み出す作業を、“ものづくり”ではなく“ことづくり”と呼び、「これからの日本は、“ことづくり”を大切にしていかなければならない」と話す。石橋会長は天才的な造語家であるが、“ことづくり”は平たく言えば“ビジネスモデルを作ること”である。

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