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「実は梅雨が明けていた」が許される不思議

“海の安全”をビジョンに――ウェザーニューズ(2)

  • 宮田 秀明

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2007年8月31日(金)

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 世界最大の気象情報会社、ウェザーニューズのオフィスには大きく「66億人の気象台」という標語が掲げられている。

 同社では、前回紹介した船舶に対する気象・海象のデータ提供のような企業向けのサービスに加えて、個人(一般消費者)向けのサービスを提供している(前回の記事はこちら)。気象予報会社だからそうなったと言えば簡単だが、企業向けと、個人向けのサービスを同時にマネジメントするのは、そう簡単なことではない。

 ウェザーニューズが提供する個人向けの天気予報サービスは、大きく3つある。パソコン向けのインターネットサービス、テレビ放送サービス、携帯電話を対象にしたサービスである。携帯電話向けのサービスは、月額100円という非常に安いサービスで、解約率は極めて低いそうだ。どうも日本人は天気予報が好きな人種なのかもしれない。雨に濡れることを嫌う傾向は欧米人よりはるかに強そうである。天気の変化が豊かで急なのも大陸国とは違う。

 だから、日本の天気予報はきめ細かい。全米ネットワークのテレビ放送では、日本の20倍もある広い国土全体が映し出されて、西海岸のサンフランシスコと、東海岸にあるボストンの雲の動きが一緒に説明される。気象の大局はつかめるが、個人個人の今日の行動に対する情報サービスというイメージではない。さすがに地方局の天気予報は、大分きめ細かくなるが、そもそも天気の変化が日本ほどではないので、情報の質が大雑把である。求められる天気予報サービスの質は国民性を表しているのだろう。

2005年6月に始めた「雨プロジェクト」でモニターに配布している「雨カップ」のセット。梅雨期間中の全国各地の降雨量や酸性度をビーカー(雨カップ)を使って毎日観測してもらう。1万人規模のモニターが参加している

 ウェザーニューズの個人向け天気予報サービスには面白い特徴がある。情報の流れが双方向なのである。サービスを受けている顧客は、同社の気象予報士による気象情報を一方的に受け取るだけでなく、自分がいる場所の気象情報をウェザーニューズに送ることができる。その情報をインターネット上で顧客同士が共有するだけでなく、気象予報の参考情報として情報提供に活用する。

 例えば、顧客が「雨カップ」と呼ばれる目盛りの付いたコップで1時間当たりの降雨量を計測して電子メールで報告してきたり、台風や豪雨の時は、その状況を撮影して写真や動画で送ってきたりする。その報告の数は、平日で1000件、豪雨や台風の時はさらにその数倍の件数に達するそうだ。

地球市民一人ひとりが、直に情報交換する世界

 気象衛星による雲の動きや、降水確率のように全体を絵や数字で把握する一般的な天気予報はもちろん大切だが、実際に現地で体験している映像の方が伝える情報の質が高い。気象衛星による情報では決して分からない現実だからである。顧客がサポーターになって、企業との“ウィン-ウィン”の関係を作っていると言えるだろう。インターネットや携帯電話といった通信手段の発達のおかげと言えばそれまでだが、天気というテーマで顧客と企業が双方向でつながる新しいビジネスモデルは興味深い。

 このサービスが発展して、世界中の人が気象情報を発信する「66億人の気象台」が本当に実現するとしたら、それは素晴らしいことだ。もし、地球上の一人ひとりが発信する情報が気象情報にとどまらず、経済・平和・生活・環境など、地球市民にとって大切なものだったら、双方向の情報交流による新しい地球経営システムができる可能性を秘めている。夢のような話ではあるが、地球規模の全体最適を目指す理想社会に向けた方向性が得られるかもしれない。

 世界には経営力のない政府を持つ国は少なくない。経済力の高い企業が強い影響力を政府に与えているケースも少なくない。国と国のエゴのぶつかり合いが、地球の全体最適を阻んでいるし、資本主義の経済原理によって動く国際企業は、“その場主義(アドホック)”の拡大戦略を取ることを善としてしまっている。そうして、毎年1億人以上の人口が地球上に増え続けている。果たして、50年後に120億人の人間を生存させる力が地球にはあるのだろうか。

 アドホックな政府活動、企業活動が全体最適の解へ近づかないのなら、地球市民一人ひとりがインターネットを通して、情報交換し、意見交換し、人と人との理解と信頼を進化させて、地球の全体最適を目指す。各国政府の代わりに、66億人からの情報を統合し、解析し、見える化し、最適化し、結果を66億人に伝えて共有する、こうした地球情報を統合する双方向のインターネットサービスが、平和と環境の問題を解決する有力な手段になるのではないか。

 ウェザーニューズの「66億人の気象台」という標語を見て、私の思いは空想的に広がってしまった。

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