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“何となく離れられない”の秘密

ゼブラのペンに見る「配慮する文化」の奥ゆかしさ(2)

2007年9月3日(月)

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 前回は、ゼブラのマナーモード付きボールペンについて話しました。会議中にボールペンをカチャカチャし続けるおじさん。その“騒音公害”を未然に防止するという画期的な視点による商品創出に至った日本人の配慮の気質を分析したわけです。通常のカチャ音モードとマナーモードの切り替えスイッチまで具備させるこだわりで、隠れたヒット商品になりつつあることを紹介しました。

 しかし、ここで本質的な疑問が残ります。そもそも、なぜ人はボールペンをカチャカチャいじり続けてしまうのでしょうか。言うまでもないことですが、ペンのノック機構は芯を出し入れするためのスイッチで、シャープペンやボールペンの芯を出し入れするという目的を達成する手段に過ぎません。しかし、カチャカチャいじりという現象は、明らかに何らかの仕事を達成するための動作ではなく、いじり続けること自体が楽しい、あるいは気持ちいい、それ故に指を動かしている現象と言えるでしょう。“クセになる”とか“病みつきになる”という現象の1つです。

 指を動かし続ける動作が頭の体操によいという話は、色々な場面で耳にします。第2の頭脳とも呼ばれる指を動かすことは、脳の刺激になり、リラックスを促したり、ボケ防止にも効果的だと言われています。単純な動作を繰り返すことは、医学的にもストレスを晴らしたり、脳を活性化する効果があると言われているようです。

“クセになる”が定番化につながるヒント

ゼブラの多色ボールペン「クリップ-オンG」

 ストレス解消と言えば、「スポーツ」「カラオケ」「ショッピング三昧」「やけ食い」のように外向きにドーンと発散するものや、「温泉」「マッサージ」「アロマテラピー」のような癒やし系のものが一般的でしょう。こうした本格的なストレス解消イベントではなく、日常生活の中で溜まる“プチ”ストレスを“プチ”解消する手段として、手や指の単純な繰り返し動作があるのです。

 実は、ゼブラには、この切り口を織り込んだ先駆的商品が存在するのです。「クリップ-オンG」という多色ボールペンがそれ。前回紹介したマナーモード付きペンの兄貴的存在の商品です。文具店に足を運ぶとよく分かりますが、多色ボールペンは競合品のひしめく大激戦区。「クリップ-オンG」は、この成熟市場の中でトップシェアとなり、定番商品の称号を勝ち取った偉大なペンなのです。

 では、何がこのペンをして勝者たらしめたのでしょうか。このペンの主な特徴は、ゼブラの説明によると以下の通りです。

(1)クリップの部分に金属ジョイントが使われて広く開くうえ、壊れにくい
(2)軸中央部に押しボタンがあるので指を根元まで動かさずにノックを解除できる
(3)ラバーグリップで握りやすく疲れにくい
(4)リサイクル素材を一部に用いていてエコマーク適合している

 これらの特徴はどれも優れたもので、さすがにペンに経営資源を集中したゼブラならではの完成度の高い商品だと思います。特に(1)のクリップ取り付け部分の機構「バインダークリップ」は、2003年に日本発明振興協会の「発明大賞」で「考案功労賞」を受賞した優れものです。文具業界での受賞は初めてのことで、厚手の書類に挟めるし、テコの原理で押して開けるので使い勝手も優れています。金属製なので壊れる心配もなくなりました。

 しかし、これらの特徴だけで「クリップ-オンG」は横綱の座を勝ち取ったのでしょうか。私は、少し違う見方をしています。この多色ボールペンの“クセになる”機構にこそ、真の実力が隠れていると思っているのです。

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「“何となく離れられない”の秘密」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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