自由であるが故に急速に普及した一方、制御が難しいインターネット。
そんなネット自由主義への異議申し立てとも言うべき通信網が誕生する。
安全・確実を売り物にするNTTの次世代ネット網「NGN」だ。
ようやく我が家でもブロードバンド(高速大容量)の通信環境が整った。ここは一つ、話題のブロードバンド放送でも見てみようか。勇んでコンテンツ提供サイトに接続し、動画の配信を受けようとするが、どうも様子がおかしい。滑らかな動画が流れてこない。遅く、時にはコマ送りのようになる。
パソコンが悪いのか、インターネット接続会社が悪いのか、はたまたコンテンツ提供会社が悪いのか。苦情を申し立てようにも誰に文句を言えばいいのか分からない。そんなブロードバンドへの失望体験を何度か繰り返すうちに、大容量のコンテンツを提供するサイトから徐々に足が遠のくようになってしまった――。
寄せ木細工の「動脈硬化」
こんな経験を持つ人は少数派ではないだろう。USENによると、同社が提供する無料のインターネット放送サービス「GyaO(ギャオ)」の利用者のうち、電話線を使ったデジタル高速通信のADSLで視聴している人の39%、光で視聴している人の32%が何らかの不具合を経験している。
最大速度が毎秒100メガビット(メガは100万)の光、50メガビットのADSLなら本来、不具合は起こらないはずだ。なぜ、こんなことになるのか。
インターネットというブラックボックスの中では、原因の特定は極めて難しい。ただ、USENは「あくまで推測だが、ネット接続業者がGyaOの配信に制限をかけている可能性がある」(GyaO事業本部の石川和男企画調整室長)と見ている。視聴者が利用している接続会社によって、不具合が起こる確率が大きく異なっているからだ。
インターネットは通信会社や接続会社のそれぞれのネットワークを組み合わせた寄せ木細工のようなもの。その中で、パケットと呼ばれる情報の断片を休むことなくやり取りしている。
最近は「リッチコンテンツ」と呼ばれる動画などの大容量コンテンツの配信がGyaOや「YouTube(ユーチューブ)」のようなサービスの登場によって急増。「Winny(ウィニー)」などのファイル交換ソフトの利用が広がっていることもあり、インターネットの混雑が深刻になっている。
そんな中、「インターネットの設備の増強が利用の増加に追いつかなくなるのではないか」という懸念がある。GyaOの配信を一部の接続会社が“制限”しているという見方は、こうしたネットワークの逼迫状況を考え合わせるとぐっと真実味を帯びてくる。
配信したコンテンツが利用者にストレスなく届くというのが、USENのようなコンテンツ提供会社の生命線。この生命線そのものであるインターネットが、手軽さ故に大混雑を引き起こし、動脈硬化のような状況に陥ろうとしているとしたら、USENのような事業者にとっては致命的だ。
では、どうしたらいいのか。
インターネットの混雑解消という根本的な解決に乗り出すというのが1つのやり方だ。しかし、それだけが解決策ではない。USENはNTTが今年度中に大都市圏などでサービスを始めるNGN(次世代ネットワーク、下の図)に密かな期待を寄せている。

100年に1度の通信革命
NGNが誕生すれば、インターネットを経由せずにGyaOのようなサービスを配信できるようになる。安定した通信速度で番組を提供することが可能になると見られる。インターネットという一般道が混雑しているなら、NGNという高速道路を利用するといった選択肢が生まれる。
「NGNはまだ料金体系などが不透明で、本当にサービスを始めるか、始めるとしたらどんなサービスにするのかはこれから決める」というのがUSENの公式見解。ただ、有力な現状打開策と見ていることは事実だ。
「ネット大混雑時代」の救世主にもなりそうな、このNGNとはいったいどんなネットワークなのか。
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