シンプルなクロップドパンツに鮮やかなブルーのブラウスを着てポーズを取るモデル──、これはノルウェーのファッションブランド「FIN」の2008年春夏コレクションの1カットだ。
「FIN」のインド産オーガニックコットンのブラウスとパンツ。洗練されたカジュアルを提案している。「FIN」の価格帯は150〜400ユーロ
2006年にジャーナリスト出身のニコライ・ハルロフセン、社会学者のアイヴィン・ウーデゴール、マーケティングの専門家のニコライ・パルミノフの3人がオスロで設立したこのブランドは、フェアトレード(注1)のルールに則って、インドのオーガニックコットンやペルーのウール素材を使った“エシカル・ファッション”(ethical:倫理的な)を提案している。最新コレクションは、ノルウェーで最も注目されるデザイナーデュオ「Arne & Carlos」のデザインだ。
「“FIN”はノルウェー語で、“洗練された”“美しい”という意味。フェアトレード・ファッションのヒッピー風のイメージを刷新して、ハイファッションを届けたい」と設立メンバーのニコライ・ハルロフセン(以下ハルロフセン)は語る。
こうしたビジネススタイルは、生産地のインドの綿農家をオーガニックコットンの栽培へと転換指導することで、深刻化する農薬問題(注2)を解決し、同時に自立を促し、生産地により正当で持続的な利益をもたらしている。
「ファッション市場は環境問題に対して大きなポテンシャリティーがある。ここ数年、北欧のフェアトレード市場が本家の英国をしのぐ勢いで拡大しているのは、きっと多くの人たちが“正しい商品”を求めているからでしょう」(ハルロフセン)
「FIN」のオーガニックのピマコットンのニットドレス。綿花が製糸され商品になるまでの全段階を生産地で行っている
同様にエシカルで、かつ“eco sexy”を謳うのは、デンマークのブランド「NOIR(ノワール)」の設立者でデザイナーのピーター・イングウェルセンだ。
巨大衣料品メーカー、「リーバイ・ストラウス ヨーロッパ」のブランディング・ディレクターだった彼が、15年勤めたリーバイスを辞めて「NOIR」を作ったのは2005年。アフリカ、ウガンダ産のオーガニックコットンを使った服は、セクシャリティーや優雅さを表現して、欧州を中心に順調に認知度を高めている。来年にはさらに「Illuminati(イルミナテイ) II」というファブリックの新ブランドを展開する予定だ。
「“NOIR”を作ったのは、自分やファッションの常識を取り巻く様々なルールを変革して新しいことを始める時期だと感じたから。ファッション文化は行き着くところまで行って、現在、消費者は購買に社会的な正義や意義を求めていると思う。現在北欧では多くの人がCSR(企業の社会的責任)やフェアトレード市場に関心を寄せている」と語る。
(注2)農薬問題は、薬害だけでなく農薬購入のローンでも農家を圧迫している。借金苦による自殺者はインドで年間数万人とも言われる。
欧州のフェアトレードの歴史と背景
ウガンダ産オーガニックコットンを使用し商品に仕上げるまでを生産地で行う「NOIR」のテーマは“セクシー”
近年、日本でも振興の機運が作られつつある「フェアトレード」。1960年代初頭より英国の「オックスファム(Oxfam)」(注3)から始まったその活動は、欧州がアフリカやアジア、南米の植民地支配、搾取によって築き上げてきた富と社会構造を再分配、変革しようという人道主義とともに広まってきた。
周知の歴史ではあるが、欧州諸国は、17世紀以降アフリカやアジア、南米の国々の土着の文化(言語、集落、治水、灌漑、農業、手工芸など)を覆して、1次産品のみを生産する植民地とし、食糧、森林資源、鉱物資源を搾取し、東西のインド会社を通じての奴隷を含む三角貿易でその富を築いてきた。
20世紀後半、植民地だった国々が独立を得てなお、300年にわたる搾取の歴史は大きな歪みと自己矛盾を双方の国々と国際社会に残している。「アフリカ、アジア、南米に対する欧州の責任」──これが現在、多義的に解釈されているフェアトレードの最も大きな意義であり契機だろう。
プランテーションで築かれた生産体制は現在も形を変えて実質的に存続している。例えば世界中の綿の生産および貿易は85〜90%がほんの数社の多国籍企業によって支配されている。ちなみにコーヒーは85〜90%、紅茶は80%、バナナは70〜75%、鉄鉱石は90〜95%、銅は80〜85%が同様の状況だ。
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