アメサマ、終わりました。ただちょっとこの連載で自分の今回の企画をレビューするには、時間をおいてからのほうがいいかなと感じてます。「ひと夏の終わったばかりの恋」みたいなもので、もう少し落ち着いて冷静になってから記事にさせてください。
ということで、今回は広告に関連してまもなく出版されるある本に関して書評します。
結論から言うと、「一家に一冊、必携の本」なのですが、なぜそうなのか、細かく書いていこうと思います。
コミュニケーション不全が多発する現代
家族が家族を殺したり、職場や学校でうつ病の人が増えていたり、すぐにキレて電車内での口論や駅職員への暴力があったり、嫌な事件や事故が多発していますが、その原因の1つに「コミュニケーションが、独りよがりな一方通行になっている」ことがあるのではないでしょうか。
「おれの気持ちが分からないのか!」という態度で部下に職場で接したのではパワハラですし、同じ態度で好きな異性にしつこくつきまとえば、それはストーカーです。
どうやって、自分の思いも大切にしながら、受け手である相手方に届くコミュニケーションをつくるか。それは、現代を生きる誰しもが必要としているスキルです。
今回紹介する本は谷山雅計著『広告コピーってこう書くんだ!読本』(宣伝会議刊)です。著者の語りかける想定読者は、広告業界にいる人、もしくは将来的に広告業界で働きたいと思っている人、が中心になっていると思いますが、実際には、誰が読んでも、学ぶことができる、しかも非常に平易で分かりやすい、実例やたとえ話で構成された良書です。
ケーススタディやハウツー、ライフハック系の本は、常に「例外」が大量発生するものですが、この本が独特なのは、自分を、相手の心に届くコミュニケーションのアイデアを生み出せる「発想体質」にしてくれる、そのためのヒントが満載であること。
だから、半年や1年で賞味期限が来てしまう刹那的広告トレンド本ではない。コミュニケーションを作っていくうえで必要な心構えはもちろん、具体的な方法までかなり詳しく書かれています。片思いの相手に自分の恋心を伝えたい少年少女から、会社で部下への指導に悩む上司、逆に上司との会話に悩む部下、学校の先生、主婦、リタイアしたシニアの方々、誰にとっても役にたつ、魔法みたいな本です。
著者の谷山さんは博報堂出身の尊敬する大先輩であり、時々、お仕事もお願いするのでおつき合いがあるのですが、広告に対して、コピーに対してアツイ人です。
ビリー・ザ・ブート・キャンプは挫折しちゃった人でも、この本は最後までいけると思います。だって、ホントに読みやすい文章で、例が的確で、あっという間にペロリといけちゃう、最高の一皿です。
ボクはゲラを既に3回読みました。
そして3回、泣きました。どこで泣いたかは内緒です。
「書き手のよろこびと受け手のよろこびは違う」
谷山さんは本の中で「書き手のよろこびと受け手のよろこびは違う」ということを、実に的確な例で説明されています。少々長くなりますが、この本の分かりやすさ、素晴らしさ、普遍性をお伝えするうえで格好の部分だと思うので引用させていただきます。
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「二毛作ジェル。」
商品は、髪のスタイルを整えながら髪に養分も与える、という2つの用途をもつ男性用ジェルでした。
ぼくは、このコピーを書いた人の思考回路が、とてもよくわかる気がします。「2つの用途がある・・・・髪に2つの用途のあるジェル・・・・2つの髪、2つの髪、・・・・あ、二毛作! やった、書けた!」と思ったのでしょう。
クライアントも、「商品の特徴が言えてるね」と、OKを出したのかもしれません。
しかし、このコピーを冷静に受け手の目から見ると、どうでしょう。
男性用ジェルというのは、2つの用途があるのも大切だけれども、そもそもそれ以前に「おしゃれをして女の子にモテたい」のような動機で使うものですよね。そう考えると、おしゃれじゃない言葉は、基本的にツライものがあります。
農業関係の方にはたいへん失礼ですが、「二毛作」という言葉は決定的におしゃれじゃありませんし、「オレ、二毛作ジェル使ってるんだぜ」なんて、人にはぜったい自慢できませんよね。
これは、「書き手はよろこんだけれど、受け手からすれば、全然うれしくない言葉になってしまった」というコピーの、ある種の代表例ではないかと思うのです。
(以下略)
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分かりやすいでしょう? あまりの分かりやすさと、明快な説明に、逆にクラクラしてしまいました。
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