「Web2.0(笑)の広告学」

Web2.0(笑)の広告学

2007年10月2日(火)

“金麦妻”は実在するか? 「サントリー金麦のCM」の研究

ツッコミどころこそカギになる

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 今週は先週の「広告デート論」の第2弾をやります、と予告していたのですが、ちょっとそれは来週にまわして、巷で話題のサントリー金麦のテレビCMを論じてみたいと思います(リンクはこちら)。

 金麦のCMをオンエアで初めて見た瞬間「ぜったいこのCMは話題になる」と確信しました。また、単なる偶然やなりゆきではない「プロによる徹底的に計算しつくされた仕事」だとも思いました。金麦のホームページへ行って、女優の檀れいさんのことも知りました。

 果たして、檀れいさんはこのCMで認知度&好感度ともにアップし、CM自体も話題です。金麦のCMのどこが「徹底的に計算しつくされたプロの仕事」なのか。今回は分析してみたいと思います。

都市伝説としての「“金麦と待っている”妻」

 今回のコラムでは、金麦のCMに登場する妻を短縮して「金麦妻」と呼ぶことにします。

 この金麦妻は、実際には2007年の日本には存在しえない、幻想であると皆わかっています。

 「いねーよ。ありえねーよ」と突っ込みを入れながら「でも、いいなぁ」と嘆息する。そんなCMなのです。

サントリー金麦のポスター

 衣装などのディテイルを見ればわかります。エプロン。白いブラウス。橙色のスカート。そして上目づかいの目線。

 ポスターは、もっとツッコミどころ、満載です。だって、「KINMUGI」の「MU」は、文字ではなく檀れいさんのクチビルですよ!

 いったい、金麦を冷やす以外に昼間、家でひとり、何をしているのでしょうか? 彼女は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のような、古き良き昭和にいたような、いないような、そんな幻想の中でのみ存在しうる女性なのです。

 現代において金麦妻のコストを賄える男性は、「発泡性リキュール」ではなく、シャンパンとは言いませんが、普通のビールを飲むのではないか? と誰もが思うわけです。

 この金麦妻のコストを賄える男性を短縮して「金麦夫」と呼ぶことにしましょう。これは、相当、稼がないと難しいです。そして稼ぐ男は一般的に、帰りの時間が一定ではありません。かつての労働のように、定時で帰るのが基本ではないのです。残業もあるでしょう。会食もあるでしょう。いろいろあるはずです。

 毎日「金麦冷やして待ってる」妻がいたのでは、困ってしまうはずです。

 「金麦、冷やして待ってたから!」と手を振る家は映画「幸福の黄色いハンカチ」のような丘の上の家で、黄色ではなく白いハンカチのような布が風にたなびいてます。

 これはもう、ぜったいに偶然なんかじゃなく、確信犯で「どうぞツッこんでください!でもお好きでしょ」という作り手のメッセージが明確に見えてきます。

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著者プロフィール

スダシン(須田 伸 すだ・しん)

須田 伸

サイバーエージェント ネットトレンド研究室長/コミュニケーションディレクター。1992年株式会社博報堂入社。CMプランナー/コピーライターとして「ACC賞」「日経広告賞」「消費者のためになった広告コンクール」などの広告賞を受賞。 1998年カンヌ国際広告祭ヤングクリエイティブ・コンペティションに日本代表コピーライターとして出場。2000年にYahoo! Japanに転じてコミュニティサービス担当プロデューサーとして「ヤフー・チャット」を立ちあげ「ライブチャットイベント」では初代「Y! Chat MC」として活躍。2002年より株式会社サイバーエージェントに勤務。同社の企業ブランドを一新する。現在は同社ネットトレンド研究室長。ブログとインターネット広告に関する著書として『時代はブログる!』(アメーバブックス)がある 。「サイバーエージェント/アメーバ」は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。


このコラムについて

Web2.0(笑)の広告学

ブログやSNSのように、普通の人がインターネットで気軽に情報を発信するようになったことが「Web2.0」という流行語(バズワード)を生みました。Web2.0の切り口には、技術も、商売も、哲学もありますが、このコラムでは、基本的に「広告」という視点で考えていきます。筆者はテレビ広告業界を経験後、サイバーエージェントに転じ、ネット広告の世界で活躍している須田 伸氏です。

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