「宮田秀明の「経営の設計学」」

文化なき経済の弱点

経済と文化が両輪を成すEU社会を学べ

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2007年10月12日(金)

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 今、韓国南部の慶尚南道(キョンサンナムド:半島の南部の行政区)の近隣地域では、造船業をはじめ重厚長大産業の元気がいい。海に面していて、日本で言えば九州のような地域である慶尚南道の道庁所在地、昌原(チャンウォン)にある慶南発展研究院から、7月のある日、電話がかかってきた。滑らかな日本語だ。きっと日本への留学経験のある方なのだろう。

 「昌原で今年、“ヨット・コリア2007”というフェスティバルを11月1日から4日まで開きます。韓国では海洋文化や海洋スポーツを振興する動きが高まっていますし、アメリカズカップにも関心があります。ぜひ、先生に来ていただいて基調講演をしてほしいのです。OKでしたら、これから全体のプログラムを企画します」
 
 韓国では、最初はアカデミックな業績で、その後は私のヨットの科学や、アメリカズカップのプロジェクトマネジメントをテーマにした都合3冊の本が韓訳されていることで、どうやら私のことを知っている人も多いらしい。
 
 10年前、私の研究室のメンバーとなったI君は釜山出身。お父さんはベトナム戦争の兵士で、複雑な家族を持つ学生だったが、釜山海洋大学でヨット部に所属していた。いろいろな意味で珍しい学生だった。彼の話では、その頃の韓国のヨット人口は300人か3000人かよく分からないけれど、取るに足らないレベルだと言われていた。この10年のうちに、韓国の海洋文化は大きな進歩を遂げたようだ。

韓国の造船産業はなぜ活況を呈しているのか

 今、世界の造船産業は韓国が引っ張っている。現代重工、三星重工、大宇造船海洋の3社が中心企業だ。

 この3社の拠点はすべて、韓国南部の釜山から車で1時間ほどのところにある。日本の瀬戸内海地方もまだ存在感があるが、釜山周辺地域はその一けた上の存在感を世界に誇示している。液化メタンガスを運ぶLNG船や、1万個以上のコンテナを運ぶ超大型コンテナ船のほとんどは、この地域で建造されている。世界の海洋資源開発用の設備の約50%もここで製造されている。

 世界の海洋産業のメッカは米国ヒューストンだが、製造のメッカは釜山周辺地域と言っていいだろう。港湾としても日本のすべての港を抑えて、釜山が国際ハブ港としての地位を確固としたものにしている。西日本の企業は、神戸、大阪の港を使う代わりに釜山を使うケースが増えている。東京から釜山まで48時間でコンテナを運ぶサービスも行われている。釜山が国際ハブ港で、日本にはハブ港がなくなったからだ。

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著者プロフィール

宮田 秀明 (みやた ひであき)

宮田 秀明

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズ・カップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術―』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクトマネジメントで克つ!』『理系の経営学』(日経BP社)など



このコラムについて

宮田秀明の「経営の設計学」

経営には「論理」が必要である。論理を積み重ねた理系思考がイノベーションを育む。技術力を最大限に生かし、プロジェクトをまとめ上げ、新しいビジネスを創造する。「理系の経営学」を提唱する東京大学の宮田秀明教授が理系の視点による経営の要諦を語る。

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