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受信料補完へ番組配信

NHK、安定的な収入構造には前途多難

2007年10月11日(木)

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NHKは放送済みの膨大な番組をインターネットで配信する準備を進める。
受信料制度に疑問を持つ人でも納得できる料金体系を導入する計画だ。
ただ、激動するネット時代の中で、新しい公共放送の姿を提示できるのか。

 寒い。その広い部屋に足を踏み入れると、身震いがした。しかも鼻を突く薬品の匂いに、思わず顔をしかめる。

 ここは埼玉県川口市。2003年に住宅街の真ん中に建てられたNHKの番組保管施設「NHKアーカイブス」である。

番組保管施設「NHKアーカイブス」館内のフィルム保管室

番組保管施設「NHKアーカイブス」館内のフィルム保管室 (写真:北山 宏一)

 館内のワンフロアにある大きなフィルムの保管庫を案内してくれた津野和洋館長も寒そうだ。「驚きましたか。フィルムを良い状態で保存するために室温を15度、湿度を50%に保っているんです。刺激臭のもとは、フィルムに残った現像液の酢酸ですね」。

 NHKは半世紀前にテレビ放送を始めてからしばらくの間、ドキュメンタリー番組などをフィルムで撮っていた。テレビの初期のこうした貴重なフィルムから、最新のデジタルテープに至るまでの膨大な番組資産が、ここのNHKアーカイブスに集まる。

 今日も20km離れた東京・渋谷のNHK放送センターから新たに放送された番組がトラックで送られてきて、格納される。そろそろ累計50万本に達しそうだ。津野館長は「アジア最大級の番組保管施設です」と胸を張る。

 保管された番組は、再放送に使うほか、新しい番組を作る際の映像素材としても活用される。

 もっとも、再放送や番組制作のためだけに巨大な番組保管施設を建てたわけではない。NHKにとってのNHKアーカイブスは、ネット事業進出を念頭に置いた重要な施設なのだ。

法改正に向け世論作り

 NHKが数年前に打ち出した成長戦略がある。「新サービスを提供して、受信料以外の新しい収入を得る」というものだ。先細りする受信料収入に代わる収入源の1つとして目をつけた新サービスが、ブロードバンド(高速大容量)化の進むネットだった。この時に打ち出した「受信料以外の収入源を開拓する」という方針こそ、現在のネット進出計画につながる起点である。

 今も昔も、NHKの収入の大半を占めているのは受信料。制度的にNHKは、テレビ受像機を持つ世帯から受信料を徴収できるという“おいしい特権”を与えられている。

 特に近年、受信料の増収を支えていたのが「衛星契約」だ。地上波テレビに加えて、BS放送を見ている世帯と交わす受信契約である。BS放送を本格的に始めた1989年に新設した。料金は、地上波テレビしか見ていない世帯を対象とする従来の「地上契約」(月額1345円=口座振替などの場合)よりも月額945円高い水準である。

 「当初は正直、大した需要は見込んでいなかった」。NHK関係者がこう告白するように、それほど期待していなかった衛星契約が、予想外にヒットする。地上契約から衛星契約への移行が進むことで、NHKは急拡大した。

 しかし、90年代を通じてBS放送の需要が一巡してしまい、次第に成長が伸び悩むようになる。そこで、ネットなどの新サービスに次の成長の可能性を見いだしたわけだ。

 ところが、NHKは「受信料を基に、公共放送を提供すること」と放送法で定められている。それ以外の事業に手を出すことは、基本的に禁じられている。放送法の範囲で認められているネット関連のサービスといえば、公共放送を補完するおまけ的な業務だけ。例えば、放送済みの番組を配信させてほしいと求めてくるネット企業に、番組を卸売りするといった細々としたビジネスに限られる。

 本格的にネット進出するには、法改正というハードルを乗り越えなければならない。そこでNHKはまず、世論を盛り上げようと考えた。

 NHKアーカイブスは、そうした合意形成を目指すための「ショーウインドー」と言える。膨大な番組を倉庫にしまい込み、「皆様の受信料で作った番組は国民の資産なんです。無駄に眠っているのは、もったいない。ネットで有効活用すべきだと思いませんか」と、官庁をはじめ各方面を地道に説得して回った。

 活動が功を奏したのか、NHKを監督する総務省は今年、ついに放送法の改正案を作成した。今臨時国会で法案が成立するかどうかは不透明だが、与野党とも反対していないことから、いずれは成立すると見られる。

放送済みの番組がネットに溢れ出す

 NHKはそう信じ、ネット事業の専門部隊も設置し、改正法案が成立してから10カ月後にはネット配信事業を開始できる臨戦態勢を取っている。

 サービス名も既に「NHKアーカイブスオンデマンド」に決め、サービス内容も固まりつつある。

 当初は、過去半世紀にわたって放送した番組のうち約1000本ぐらいをネットで見られるようにして、順次増やしていく見通しだ。さらに、放送を見逃した人のために、1週間以内に放送した番組も配信する計画。これらをまとめて「月1000円で番組を見放題」にしたり、1本数百円でバラ売りする料金案などを練っている。

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「受信料補完へ番組配信」の著者

吉野 次郎

吉野 次郎(よしの・じろう)

日本経済新聞社記者

1996年、日経BPに入社。2007年から日経ビジネス編集部で電機業界や自動車業界、企業の不祥事を担当。2015年4月から日本経済新聞社電子編集部に出向中。産業、経済事件を中心に取材・執筆する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師