今回のコラムは、前回に引き続き、気泡緩衝材「プチプチ」など包装資材のメーカーの雄、川上産業のお話です。1960年代に同社の創業社長によって実用化された「プチプチ」は、包装資材界の革新となりました。

「社員なら製法は簡単に見分けられます」と話す、川上産業プチプチ文化研究所の杉山彩香所長
それ以前は、オガ屑や新聞紙、セロハン紙などが用いられていた緩衝材でしたが、高度成長による大量消費型の生活スタイルへの変化とともに、大きく成長の道を歩みます。この商品はかさばることが重要ですが、逆に言えば、かさの割に付加価値が非常に小さいものです。空気を運んでいるようなものですから、原価の中に占める輸送費比率が非常に大きいという特徴があります。
従って、消費地のすぐ近くで生産することがコスト競争力のカギとなります。人件費の安い中国やベトナムで生産したとしても、船積みして輸送する手間と費用を考えると元が取れないのです。そういうわけで、幸いなことに安かろう悪かろう商品の流入に苦しめられることはありません。国内市場でも理屈は同じで、従業員320人、売上高114億円の同社が国内に6カ所もの生産拠点を構えているのにはそういう事情があります。
出来上がった商品の構造を一目見るだけで製法の違いが分かる
逆の視点で見ると、海外進出をしにくいという面があります。いまや世界に広まった「プチプチ」ですが、欧州やアジアの商品の中の少なからぬものが元祖・川上産業の生産技術を用いたものだということです。今でこそうるさくなった生産技術のブラックボックス化ですが、高度成長でイケイケドンドンだった頃は、基本技術の練磨やビジネス地盤の確立に突き進んでいました。気がついた時には、多くの大事な技術ノウハウが世界中に流出してしまっていたということです。一般の素人には全く区別がつきませんが、見る人が見れば、出来上がった商品の構造を一目見るだけで、川上産業方式の製法か、そうでない製法かが分かるのだそうです。
ちなみに、同社では月に1度、自社商品をずらっと机に並べて品質チェックを行う会を催しているとのこと。社長以下各部門の重鎮が、色艶や透明度、肌触りやプチ音の元気良さなどを“診る”のです。黒帯クラスの熟練者になると、同じ番手の商品でもどの工場で製造されたかまで特定できるようになるのだそうです。
工場内での通常のQC(品質管理)工程とは別にこのような感覚的なテストを実施することの重要性が理解され、社風として当たり前のように行われているのは、非常に興味深いことです。前回のコラムでは、技術と芸術が同根であるという話を商品開発の視点で申し上げましたが、検査から品質管理の視点でも、この哲学が咀嚼されているという安心感を抱きます。
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