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「馬鈴薯の底力」をイノベーションで引き出す

カルビー、ITでジャガイモ生産プロセスを改革

2007年10月17日(水)

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 「馬鈴薯の底力を引き出せ」。スナック菓子大手、カルビーの中田康雄社長の口癖である。ポテトチップなど同社商品の多くは馬鈴薯(ジャガイモ)が原材料であり、馬鈴薯の質と量を改善すれば本業を強化できる。馬鈴薯の底力を引き出すために、中田社長はIT(情報技術)を駆使する計画だ。米ガートナーのリサーチ部門最高責任者、ピーター・ソンダーガード氏が中田社長と対談し、カルビーの本業イノベーション戦略を明らかにする。

(谷島 宣之=経営とITサイト編集長)

ソンダーガード::ジャガイモ栽培のイノベーションを起こそうとしていらっしゃると聞きました。

中田:ジャガイモの生産プロセスそのものにITを活用しようと、国内ではまだ珍しいチャレンジをしています。一例を挙げますと、「ウェザーステーション」と呼ぶ施設を設置しています。これは日照時間であるとか、風の量とか、気温、湿度、土の中の水分量、温度、そういったものをリアルタイムで測定するための機器です。そこで測定したデータを分析して、ジャガイモの生産をお願いしている契約農家に最適な栽培資料を送る、といったことを始めようとしています。

 この仕組みは、実はオランダの会社が開発したんですね。オランダの会社は様々な農業のデータベースを持っている。日本のウェザーステーションで取ったデータをオランダに送って解析してもらう。オランダから解析結果をもらって、契約農家に適切な助言をするという仕組みです。米国カリフォルニアのナパバレーはワインの名産地として有名ですが、ITによるコントロールで今日の地位を築いたと聞いています。そういう先進事例に学んで、日本でも同じことができないかと考えています。

ソンダーガード::カルビーの全契約農家に展開していこうとしているのですか。あるいは一部の農家に対してですか。

中田:現在はまだトライアルですから、限られた農家だけで実施しています。しかし、やがては我々の契約農家全体で共用したいと思います。これはインフラストラクチャーですから、たくさんの人に使っていただくことで、1軒当たりの利用コストが下がりますから。

図版

中田 康雄(なかた やすお)氏
カルビー 社長兼CEO。1943年東京都生まれ。1965年慶応義塾大学商学部を卒業、67年慶応義塾大学経済学研究科修士課程修了、同年4月宇部興産に入社。79年カルビーに入社、85年取締役、2003年6月取締役副社長に就任。2005年6月代表取締役社長兼CEOに就任、現在に至る
(写真:栗原克己、以下すべて)

 ウェザーステーション以外にも、ITの活用をいろいろと考えています。ジャガイモの栽培プロセスは細かく数えますと、種いもの選択から始まって収穫まで10ぐらいのステップがあります。一つひとつのステップについて、取っているアクションを情報システムに記録し、適切かどうかをチェックする仕組みを検討しています。最終的に取れたジャガイモの品質と量と記録を照らし合わせて、栽培プロセス全体が適切であったかどうかを分析して、改善すべき点があれば翌年の栽培プロセスに反映させていくのです。

 ジャガイモ畑は一つひとつ特徴を持っているので、その土地に最適な栽培プロセスというのがあるはずです。それをなんとか探し出す。そして、継続的なプロセスの進化をデータベースによって実現しようというわけです。こちらはなるべく早く、契約農家全体に広めたいと考えています。1軒1軒の農家が創意工夫をしてベストプラクティスを生み出す、そういったものを共有して、全農家が活用していく、そんなインフラができればいいと考えています。

ソンダーガード::まるでIT会社のようですね。極端に言うと、ジャガイモ栽培やポテトチップの生産が2次的な仕事に思えるほどです。実際、多くの企業が起こしてきたイノベーションもそういうものです。ITを利用しながら、「サービスインフラストラクチャー」を作って、その一部を外部に提供するのです。サービスインフラストラクチャーを構成するものは、ナレッジ、知識であり、データです。御社はまさに今、そういった変革をされようとしていると思います。

 多くの企業が抱えている課題は、実際に変革しようという意識はあっても、準備がまだできていないことです。管理職あるいは経営陣が変革に逡巡してしまう場合が散見されます。御社は社長が先陣を切って実行しようとされているわけで、素晴らしいと思います。

個人が買える機器を活用

中田:一連のIT利用はこれから本格的に取り組むわけですが、契約農家のためのツールとして提供するので、使い込んでいただくための動機づけが課題と見ています。

ソンダーガード::農家の方が使われるテクノロジー、つまり外部の人に使ってもらいたいと思って用意しているテクノロジーは、「個人的に買って使えるもの」であることが重要ではないかと、ガートナー内部で最近、議論しておりました。

 買って当たり前のように使うもの、例えば、携帯電話やパソコンなどですが、「そのうちに買おうと思っていた」というものであれば、外部の人に使いこなしてもらえるのではないでしょうか。まず生活の一部としてそれが使われ、さらに仕事に使えば使うほど、事業が成功に導かれていくわけです。

 完全に一致する例とは思いませんが、興味深い似た例として、インドのたばこ会社の例があります。彼らは田舎の農村にパソコンと衛星通信によるワイヤレスアクセスの仕組みを敷設し、たばこ農家のためのシステムを構築したのです。というのも、たばこ農家がたばこの葉を売りに行くために街へ出るわけですが、その旅程だけでなんと3日間もかかるのです。街に行って交渉が成立するまでに、さらに5日もかかると。この間にたばこの葉の価格が著しく変わる。それなら、農場の方にパソコンを敷設し、パソコンからたばこの葉を売り買いできるようにしてはどうか。そうすれば、その時の一番いい価格で売買でき、ロスも少ないというのです。

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「「馬鈴薯の底力」をイノベーションで引き出す」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者、2009年1月から編集長。2013年から現職。プロジェクトマネジメント学会員、ドラッカー学会員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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