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未知への挑戦が“強いブランド”を築く

日産の旗艦車種「NISSAN GT-R」開発チームの挑戦(2)

  • 宮田 秀明

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2007年11月2日(金)

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 東京モーターショーで鮮烈なデビューを果たした「NISSAN GT-R」。このスーパーカーの誕生は、チームマネジメントの成功が導いたと言えよう。「GT-R開発プロジェクト」の車両開発主管、水野和敏氏と、開発担当役員である大伴彰裕執行役員へのインタビューをもとに、前回に続いて、「世界にない絶対的な価値の作り方」をテーマにお届けする。

 日本の貿易収支において、自動車は主要商品輸出総額のうち約20%を占めていて最も多い。まさに自動車産業は日本の輸出産業の主力である。この自動車産業の国際競争力を支えているのは、技術力にほかならない。

 トヨタ自動車の強さは、製販統合やカンバン方式、カイゼン運動などの生産マネジメントによるものと思われがちだが、それ以上に、創業者の豊田喜一郎さん以来の、技術と技術者を尊重して生かす理念が、トヨタ経営の根幹にあることが大きい。

 ホンダの場合はもっと明快である。本田宗一郎さんの技術者魂と現場現物を大切にするDNAが、最大の経営価値とされている。F1への参戦も技術者を鍛えるのが目的である。

「NISSAN GT-R」開発プロジェクトを進めた大伴彰裕 執行役員(右奥)と水野和敏 車両開発主管(左)。手前は、インタビュアーの宮田秀明氏

「NISSAN GT-R」開発プロジェクトを進めた大伴彰裕 執行役員(右奥)と水野和敏 車両開発主管(左)。手前は、インタビュアーの宮田秀明氏

 日産自動車(7201)も「技術の日産」を標榜し続けている。トヨタやホンダと同様、経営がどんなに傾いても技術だけは大切にしてきた。だから優秀な技術系の学生にとって魅力的な企業だった。経営が傾いていた時期の日産でもそうだった。学生たちにとって身近な存在である車の技術に興味のある者は、インセンティブを気にしないで自動車産業に向かい続けていたのだ。

 日本の多くの大学に自動車部があるのも、自動車産業の隆盛と無縁ではないだろう。ラリーやジムカーナなどのカーレースが主な活動だが、当然整備も行うので、技術にも親しくなる。ホンダの福井威夫社長のお父さんは造船技術者だったが、ご本人は早稲田大学の自動車部の出身だ。かく言う私も東大自動車部の出身で、今はその部長を務めている。

素晴らしい技術者がいるからこそ改革ができる

 自動車産業にとって一番大切なのは技術と技術者である。米国自動車産業の凋落は、経営の失敗でもなく、労働組合のせいでもない。技術力の喪失の結果だと私はみている。つまり、優秀な人材が自動車産業に向かわなくなって久しいので、どんなに経営者が優秀であっても、技術力をなくした状況では盛り返すことができなかったのだ。

 ダイムラーとクライスラーの統合の失敗が示唆するのは、技術力に大きな格差のある企業間の統合は難しいということだ。技術者同士のコラボレーションができなければ、相乗効果の代わりに、足を引っ張り合うようなことばかりが発生し、本質的な企業価値である技術力を毀損してしまうからだ。

 日本の自動車会社の素晴らしい経営は、素晴らしい技術者がいたから可能だった。日産のゴーン改革の場合も同じだ。ゴーンさんの様々な改革は経済合理性の追求や生産性向上の部分が多かった。しかし、結局は売れる車を開発しなければ、本当の価値は発生しない。技術者がそれを実行する力を持っていなかったら、改革は成功しなかっただろう。売れる車、つまり顧客満足度の高い車を優秀な技術者が開発できたから、再生に成功したのだ。

 ゴーン改革の内側では、フェアレディZというスポーツカーを復活させたり、「GT-R」のプロジェクトを推進したりしていた。自動車会社の本質的な競争力である技術力の強化育成とブランド力の向上にも経営の中心軸を置いているわけだが、これは極めて正しい。

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