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リスクを評価して定量化することの意味

サブプライムローン問題と金融システムシミュレーション

  • 宮田 秀明

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2007年11月9日(金)

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 私の研究室(大学工学部システム創成学科と大学院環境海洋工学専攻)の学生が研究するテーマは近年、多様になっている。小売業から国際的企業まで大小様々な「経営システム」を研究対象とするのが主流なのだが、流体力学や高速船を研究するグループもある。

 研究の入り口は、それぞれの研究分野やビジネスの現状調査だ。インターネットのおかげもあり、最近の学生の調査能力は高い。ただし、毎週各グループで5回近くあるミーティングや、全員ミーティングの場で学生が調査結果のプレゼンテーションを行う際、どうしても定型的な表現だけで説明するケースが多い。

 よくお目にかかるのはパワーポイントなどを使った2次元マップ。ビジネススクールやコンサルティングファームがよく使うやつだ。縦軸に成長性を取って“高い”から“低い”と書き、横軸には収益貢献度を取って、やっぱり“高い”“低い”と書いてある。

 そんな図表を説明する学生に対して、私はこう言う。「“高い”や“低い”では感想みたいなものだ。縦軸にも横軸にも数字を入れなさい」。基本的な情報が数字で表現できなければ、結局、科学的かつ論理的な手法へと発展していかないからだ。例えば、“顧客満足度”のような定量化しにくいものも、5段階で表示するようにする。そうすることによって新しいビジネスを定量的に評価できるし、リコメンド(推奨)システムを創る時などに威力を発揮する。

 “高い”や“低い”といった形容詞や、キーワードに頼った仕組みのままだと、いつまでもアナログで低いレベルから抜け出せなくなるから、最初の段階から避けねばならない。

アナログのままでリスクを定量化していない危うさ

 世界に動揺を与えているサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の根本原因は、評価対象の価値とリスクを定量化(デジタル化)できなくてアナログのままにしてしまっているシステムと見ている。基本情報をアナログ的なものに依存しているシステムが、抱え続ける問題だろう。

 企業や債券、投資信託は、格付けによってリスクが評価されている。企業であればムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)といった機関が格付けを行い、権威さえ持つようになっている。しかし、格付け自体はAとかBとかアナログなのだ。

 それでは、例えばAAAの企業の株式とBBの債券が50:50で組み込まれた投資信託の格付けはどうなるのだろう。基本情報が数字で示されていないから、その組み合わせ結果のリスク評価の科学的論理性は低くなる。それらが組み合わされてさらに複雑な商品になれば、複雑さによって誤差が拡大し、しかもその誤差の大きさがよく分からない商品になる。リスクの高い商品になっているかもしれないが、その大きさが不明になってしまうのだ。

コメント13件コメント/レビュー

複雑現象を単純モデル化してデータ検証するという工学のアプローチを経済に応用すれば「最適化」の道具になる、という筆者の意見だと思いますが、何度読んでも混乱した印象を受けました。顧客満足度なんて抽象概念的なものを5段階評価することを勧める一方で、企業をABC格付けすることはアナログで頼りにならないと言う。AとかBってデジタル表現だと思うのですが。分かった上で、敢えてそういう文章表現をしていらっしゃるのでしょうか。定量化するしないと、アナログ/デジタル表現するか、は全く別問題です。アナログ/デジタルの違いなんて実はどうでも良くて、肝心なのは用いたモデルが効果的かどうか、だと思います。モデルの良し悪しは実験する以外に確かめようがない。ただし、経済現象は非常にモデル化しにくい。と言うのも、工学と違って、今月の実験で役に立ったモデルが、来月も役に立つかどうか分からないから。サブプライム問題が示しているのは、金融工学の導入が進んでいないことではなく、むしろその逆で、未熟な金融工学の濫用、ではないでしょうか。つまり、金融業界で蔓延る考え方や使われていたモデルが、この側面において役に立たなかった。しかし、これから改良モデルを作ってみても、やがて破綻して「~問題」とかまた出て来るでしょうし、今の形で(近視眼的な)金融工学が進めば、その被害規模は大きくなる一方でしょう。工学的アプローチは条件付で有用だとは思いますが、本質的に複雑な現象を単純化した上でデータ抽出しただけなのに、そこに「満足度50%」とか「リスクは2%」とか文学的ラベルをつけることで、一般の人々の混乱や誤解を招くとしたら、あるいはそれによって金儲けを企む輩が出てくるとしたら、それこそ大問題だと思います。「お金」の意味とか、資本主義の限界とか、根本的なところから考え直すべきではないでしょうか。(2007/11/30)

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複雑現象を単純モデル化してデータ検証するという工学のアプローチを経済に応用すれば「最適化」の道具になる、という筆者の意見だと思いますが、何度読んでも混乱した印象を受けました。顧客満足度なんて抽象概念的なものを5段階評価することを勧める一方で、企業をABC格付けすることはアナログで頼りにならないと言う。AとかBってデジタル表現だと思うのですが。分かった上で、敢えてそういう文章表現をしていらっしゃるのでしょうか。定量化するしないと、アナログ/デジタル表現するか、は全く別問題です。アナログ/デジタルの違いなんて実はどうでも良くて、肝心なのは用いたモデルが効果的かどうか、だと思います。モデルの良し悪しは実験する以外に確かめようがない。ただし、経済現象は非常にモデル化しにくい。と言うのも、工学と違って、今月の実験で役に立ったモデルが、来月も役に立つかどうか分からないから。サブプライム問題が示しているのは、金融工学の導入が進んでいないことではなく、むしろその逆で、未熟な金融工学の濫用、ではないでしょうか。つまり、金融業界で蔓延る考え方や使われていたモデルが、この側面において役に立たなかった。しかし、これから改良モデルを作ってみても、やがて破綻して「~問題」とかまた出て来るでしょうし、今の形で(近視眼的な)金融工学が進めば、その被害規模は大きくなる一方でしょう。工学的アプローチは条件付で有用だとは思いますが、本質的に複雑な現象を単純化した上でデータ抽出しただけなのに、そこに「満足度50%」とか「リスクは2%」とか文学的ラベルをつけることで、一般の人々の混乱や誤解を招くとしたら、あるいはそれによって金儲けを企む輩が出てくるとしたら、それこそ大問題だと思います。「お金」の意味とか、資本主義の限界とか、根本的なところから考え直すべきではないでしょうか。(2007/11/30)

先生の普段の議論に首肯できるものが多いがゆえに、この記事への違和感がぬぐえませんでした。他のかたがたのご指摘にあるとおり、金融部門においても数多くの数量化がなされていることでもあり、単純に数量化されたリスクを開示すれば済むというものでもないと思います。一番の問題は、市場が生き物であるが故に、過去のex post 事象をもって将来のex ante 事象を説明しきれない、というところでしょう。たとえば物理学では、おそらく同じ条件であれば同じ事象が繰り返されるでしょうが、市場においては必ずしもそれが起こらない。ロシア危機のときには市場の動きは過去の動きの標準偏差の6倍の動きになった。こんな状況で「リスク」を開示するとしても何をもってリスクとするのか、定量化は困難です。 ご指摘の例のAAAとBBの債券を50%ずつ入れたとしても、実際その2つの債券の発行体のクレジットの相関をどう検証するかが問題となるでしょう。たとえばモンテカルロを10万回くらい回したら「正しい」ものが出るかといえば疑問が残ります。「十分でない設計」による商品だから問題なのではないと思います。「リスクを十分理解できない設計」であることには問題があると思います。個別の案件のリスクが理解できないのにそれを大量にプールしたら大数の法則なり分散効果が働くからいいのか? 一方、リスクを理解しているはずの業者がその在庫で損をしているわけで、結局は定量化しても過去の数字と異なる市場の動きが出てしまうリスクがある、ということかと思います。とりとめのないコメントですみません。(2007/11/16)

債券のリスクを数値化して明示する。すばらしいアイデアで、全面的に賛成いたします。金融商品取引法で、ぜひとも義務化すべきです。消費者としては、額面利回り、リスク、金融機関に支払う手数料等々、トータルに勘案しつつ、賢く購入でき、これまで「自己責任」の一言で片付けられてきた消費者被害を未然に防ぐことにつながるでしょう。金融機関の皆さん、誇りと自信と責任を持って、リスク数値をどんどん開示してください。(2007/11/16)

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