(前編から読む)
親指世代の口コミ力を利用し、幅広い世代の顧客を狙うネット企業。だが、彼らの魅力に気づき始めているのは、ネット企業に限らない。
販路を拡大する大前提
「高校生に火をつければ、都市の若年層に加え、地方も含めた中高年層まで話題を拡散させることができる」。親指世代の魅力を評するのは、キャラクターグッズの開発や販売を手がけるラナ(大阪市中央区)の鈴見純孝社長だ。

「お父さん世代のアニメが、キューピーと合い、10代にも好まれる」と商品を持つ鈴見純孝社長 (写真:スタジオキャスパー)
懐かしのアニメキャラクターとローズ・オニール氏のキューピー人形。2つを合わせたキャラクター商品が好調な売れ行きを示している。その種類は、鉄腕アトムとキューピー、アルプスの少女ハイジとキューピーなど、現在53種類。来年には100種類以上に増やす計画だ。
このシリーズの携帯ストラップは、追加注文が相次ぎ、生産が追いつかない状況。発売から1カ月半で累計受注数が120万個に上っている。通常、1つのシリーズで1万個売れれば「ヒット商品」と言われる携帯ストラップ市場では異例のことだ。
鈴見社長は「予想以上に売れている」と笑みを浮かべながらも、「40代や地方はまだこれから」とさらなる拡販に意欲を見せる。
現在、キュージョンの売り上げを牽引しているのは、東京、大阪、名古屋などの大都市に住む20〜30代。同社の直販サイトでの販売動向を見ると、東京、大阪など主要な9都府県での販売が66.8%で、購入者の約75%を20〜30代が占めている。だが、地方に住む人や、40代以上の層での販売を強化するには、「高校生に広まることが大前提」(鈴見社長)という。
第1の理由は、親指世代の購買力があれば、一気に販売数量を引き上げることも可能で、地方の販売店などの関心を引きつけられるからだ。「店頭での販売数が100万個を突破すれば、地方の販売店も仕入れ始める」(鈴見社長)。
2つ目の理由は、親指世代の親世代である40〜50代も、子供たちの持ち物に興味を示すことにつながるからだ。鈴見社長は「高校生は情報に敏感で、ほかの世代で流行っていることを察知するのが早い。最近、電車に乗ると、キュージョンを持っている高校生を見るようになった。このように消費者が実物を目にする機会が増え出すと、広まり方は加速する」と爆発の時を待ちわびている。
親指世代に広め、一気に販路を全国に広げようとしているラナ。だが、彼らに広まる利点はそれだけではない。
使い方を生み出す創造力

携帯情報端末を販売する通信会社のイー・モバイルは親指世代の創造力に目をつけ、来春以降、主に10代を対象とした端末の販売を検討している。
広告宣伝部長の花岡隆春氏は「10代には新機能の利用シーンを自分たちで見つけ出す力がある。その使い方をほかの世代が真似る。10代が端末の使い方を創造することで市場が大きく育つ」と言う。
花岡氏が例として挙げるのは、携帯で撮影した写真をメールで送る「写メール」だ。
「実は、これほど高校生に流行るとは思いませんでした。当初、写メールは年配向けの補助サービスとして発想されたもの。観光地で風景の様子をメールで送っている年配の女性を見た時に、当時のJ‐フォン(現ソフトバンク)の開発者が、『写真を付けたらさぞ便利だろう』と思ったのが発端です。ですが、10代は開発者たちが予想できなかった使い方を、自分たちで発見していったのです」(花岡氏)
高校生マーケティングコンサルタントのアイ・エヌ・ジー(東京都渋谷区)の竹永新治社長はこう振り返る。
「最初は写メールの機能をどう使えばいいか分からなかったようだが、何日か経つと、バス停で時刻表を撮ったり、メークした自分の顔を友達と送り合ったりするようになった」
イー・モバイルが提供する携帯情報端末は、ノートパソコンでもなく、携帯電話でもない。このような新しい機能は通常、新しい使い方が見いだされずに、本格的に使われるまでに時間がかかるケースが多い。花岡氏は、親指世代が創造する使い方が幅広い世代に広がれば、ビジネスパーソン以外の人にも浸透するはずと期待している。
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