「白水徳彦の「世界自動車事情」」

モノまね中国自動車産業が脱皮へ躍起

新開発手法で開発時間を数分の1に

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2007年11月22日(木)

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 米ゼネラルモーターズ(GM)が提訴した奇瑞汽車の「QQ」、ホンダの「CR-V」と外観がそっくりの双環汽車「S-RV」。

 トヨタ自動車が提訴するとウワサされている長城汽車の「bB」のコピー車「酷熊」(クールベアー)。ごく最近ではBMWの「X5」を“真似た”とされる双環汽車の「CEO」…。

 急速なモータリゼーションの道を歩む中国、世界第2位の自動車市場に成長し自動車のメージャーリーグに仲間入りしたが、中国のクルマといって思い浮かぶのは、残念ながら独自性のない商品ばかり。コピー車の例を挙げればきりがない。

「模倣して何が悪い」と開き直る

 しかし、なぜ新興の中国自動車メーカ、特に外資メーカーと提携関係にない「民族系」メーカーが既存の日本車や欧州車の模倣に熱心なのだろうか。

 一番大きな理由としては、経済的な事情が挙げられる。模倣の背後には、開発費をなるべくかけずに、急速に成長する中国国内市場の勢いにあやかり、市場が熱いうちに一儲けしようという赤裸々な貪欲さが見え隠れする。

 事実、湖南省のあるメーカーの開発責任者は、コピー車が、本格的にゼロから作り上げたクルマに比べて開発費が3分の1なのだ、と模倣が横行するわけを、最近のインタビューで筆者に語った。

 また、なぜコピーするのかと聞かれて、どうしてそんなことを聞くのかとうそぶく中国メーカーの関係者も中にはいる。日本の自動車メーカーだって、韓国のメーカーだってそうやって成長してきたではないかと、前出の湖南省の自動車メーカーの幹部は指摘する。

独自技術も最初は模倣から始まった

 「日本は何百年も前に中国から漢字を導入して、その知財権にたいして正当なロイヤリティー(使用料)を支払ったでしょうか」

 「欧米のメーカーだっておなじです、中国が発明した火薬にその知財権に正当な使用料を払った国はいまだかつてどこにもないのです」

 ちょっとぐらい中国のメーカーが自動車のデザインを真似たからといって、自分のことを棚にあげてがたがた言うな、ということらしい。

 といっても、「ただ乗り」だけが中国自動車メーカーが模倣をする理由ではない。もちろんそんなメーカーもあることは事実。

 しかし、音楽や書道などの芸術の基本が模倣であるように、先見の明のある中国の自動車メーカーには、真似をすることを通してクルマ作りの基本を急速に学ぼうとする強い意志が感じられる場合もある。また、その習得した基本を応用して、中国独自のデザインプロセスや、クルマ作りの新しい工程を生み出そうという動きもある。

北京汽車「勇士」の記事用の写真

北京汽車「勇士」の記事用の写真

 その1つの例として挙げられるのが、北京汽車の「勇士」(ユンスィ、英語名はウォリアー)と名づけられた軍用ジープだ。コピーかどうかは定かではないが、あるトヨタのエンジニアによると、「勇士」の簡単な図面を見る限りでは、そのシャーシなどの基本的な技術はクライスラーの「ジープ」の技術に酷似しているという。

 「ハンビー」が米軍の象徴であるように、「勇士」は中国人民解放軍のアイコンとになることを目的としてデザインされた。

香港生まれのデザイナーが外観から内装まですべて担当

「勇士」のデザイナー、エドワード・ワン(Edward Wong)氏

「勇士」のデザイナー、エドワード・ワン(Edward Wong)氏

 猿真似と揶揄される中国自動車メーカーの「独自商品」の現実ににくさびを打ち込み、これまでクライスラーとの提携で学んできた成果を土台に、中国の自動車パワーとしての象徴的なクルマを目指したいと関係者は語る。

 また、クルマの開発におけるデザインプロセスの短縮の試みとして、これまでの欧米や日本での自動車開発の常識を破る新しい中国流のプロセスの確立という意味もあるという。

 「勇士」のデザインは、香港生まれのデザイナー、エドワード・ワン(Edward Wong)氏が外観から内装にいたるまですべて担当した。ワン氏によれば、「もちろん私はエンジニアではないが、私の知る限りにおいて、勇士は100%北京汽車による中国製なのだ」と断言する。

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著者プロフィール

白水 徳彦(しろうず・のりひこ)

米ウォール・ストリート・ジャーナル記者。自動車産業の担当が長く、米国のビッグ3はもちろん、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車などにも深く食い込んで、切れのある記事を書き続けている。英語による深い分析記事は、日本車メーカーをしばしば震え上がらせることもある。ウエスタン・ワシントン大学卒業後、スタンフォード大学大学院で国際関係学・修士号を取得。



このコラムについて

白水徳彦の「世界自動車事情」

世界の自動車産業は大きな変化の時代を迎えている。米国、欧州、日本といった先進国の市場が伸びない中、中国やインド、ロシアなど新興市場が急速に発展しているからだ。さらに、燃料電池車の本格的実用化を目前に控え、ハイブリッドシステムやディーゼルエンジンなども技術革新が進んでいる。世界の自動車産業は市場も技術も大きな転換点を迎えようとしている。米ウォール・ストリート・ジャーナルの辣腕記者が、その市場と技術の変化に鋭く斬り込む。

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