ウェブはテレビ・新聞・ラジオ・雑誌の4大マスメディアに続く、第5のマスメディア「ではない」という認知が、広告業界では広がっている。
単体で成立する媒体というよりも、他のマス媒体と重ねて使う、クロスメディアの要(かなめ)に据えるべきでは、ということのようだ。例えば、ほとんどの宣伝にホームページは不可欠だが、ホームページだけ作ればいいという扱いではない。テレビとネット、新聞とネットなどというように、既存の媒体と結びつけることで、認知だけでなく、顧客の囲い込みや販売などの効果を期待しているわけだ。
今回はいよいよ、大手広告代理店側の認識や戦略について聞いてみよう。2006年に、ネットやデジタル放送などのデジタルメディア環境で、クリエイティブ、メディアプランニング、コンテンツ製作までを総合プロデュースする目的で作られた「博報堂DYグループ i−ビジネスセンター」に取材することにした。ご対応いただいたのは、センター長の勝野正博さん、室長の井上昇さん、ディレクターの水谷典雄さん。それぞれ、テクノロジー、クリエイティブ、モバイルに精通した広告のプロだ。
(以下敬称略)
―― まずは、総論としてのクライアント側の意識がどんなものなのかを。
井上 クリエイティブの立場からみても「ウェブで何かをやらないと……」という意識はもうはっきりしてきていますね。予算はそれぞれですが、やっておかないと企業のコミュニケーション戦略としてまずいという危機感があるんですね。「何かしてください」という要望はひしひしと伝わってくる。
それがマスなのか、クロスメディアなのか、ウェブ中心なのかは、これはそれぞれの事情と、我々の提案にもよるわけですが。
勝野 広告会社の仕事は、広告を創ることと、それをちゃんと伝わるように成立させること。この基本は変わりませんが、過去に、こんなにメディアが変わった時代はありません。
クリエイティブも変わりはじめています。ぼくが入社してから30年近くたちました。ラジオを20年、iメディアを3〜4年担当して、今、このプロジェクトのリーダーをやっていますが、テクノロジーの進化に応じて、毎年ビジネス環境が変りますから、ここ数年は大変です。
現状のインターネットメディアで、広告モデルが劇的にうまく回っているのは、ご存知の通り検索広告です。オーバーチュア(現在はヤフージャパン子会社)やGoogle(のアドセンス(AdSense)広告)が代表的です。
米国ではネットの広告費の4割以上が検索広告です。従来のマス広告では生活者が広告にアクションを起こした時に、広告主に請求する仕組み(クリック課金)というのはなかった。これまでの、露出することが主軸だったマス広告の概念そのものを変えちゃったわけですよね。
そして、これでもう1つ変わったのは、メディアの「買い方」です。
―― 時間枠や場所の枠を買う、という発想がウェブで変わったわけですね。
勝野 ええ。いわゆるマスメディアというのは、ナショナルクライアントが効果を発揮しやすいようにできています。
テレビの全国放送される広告枠はそれなりの予算を持っていないと提供できません。
―― 全国に放映される番組は、全国に顧客が存在する、大手のクライアントしか使えなかった。
Googleモデルに収斂するのか?
勝野 ところが、検索連動型広告は、基本的にクレジットカードを持てる人だったら誰でも広告枠が買えます。しかも、その枠は入札制で他社の入札金額もオープンになっています。
ただし、クライアントが「お金は払うから、この日、ここに出したい」と言っても、その場所が取れるかどうか保証できない。検索ワードに紐付く広告をクリックするのはユーザーです。よくクリックされる広告は掲載されるけど、クリックされなくなる=ユーザーにとって必要のない広告という判断が出ると、掲載が自動的にとまる。
こんな具合に、広告掲載の仕組みを変えちゃったんです。こんなモデルは今までなかったわけですよ。そこまで広告とか情報体験の意味を変えちゃった企業(Google)が、図抜けて今うまくいっている。これは従来の広告代理店とクライアントの関係とは、もうまったく違うわけです。
―― そのモデルに全体が収斂していくとお考えですか。
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