「Web2.0(笑)の広告学」

「編集されない私」が発信する広告

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2008年2月5日(火)

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 シドニー五輪の柔道男子100キロ級金メダリストの井上康生と結婚することになったタレントの東原亜希さん。日本ハム・ダルビッシュ有投手と結婚した女優のサエコさん。お笑いコンビ、インパルス堤下敦さんと破局したモデルの土岐田麗子さん。

 ここ最近の芸能ニュースに登場するタレントやモデルの多くが自分のブログを持っています。そしてこうした芸能ニュースを伝えるテレビ番組でも、彼らのブログを画面に登場させて紹介することがすっかり一般的になりました。

東原亜希さんのブログはこちら
サエコさんのブログはこちら
土岐田麗子さんのブログはこちら

 こうしたタレントブロガーを現在約1300名、ブログサービスの中で一番抱えているのがアメーバブログです。そんなこともあって「なんでこんなに大勢のタレントさんがアメーバでブログを書くの?」という質問をよく社外の方から聞かれます。

 もちろん個別の事情もあるとは思いますが、共通している理由というのも確実に存在します。われわれサービス運営サイドは、著名人ブログを抱えることによってより多くの利用者や閲覧数を獲得できるといったメリットがあるわけですが、タレントサイドにとってのメリットは何で、今後どのような展開が想定されるのか、今回は考えてみたいと思います。

「編集されない自分」を持つ意味

 なぜ、既に一定のメディア露出を持っているタレントやモデルが、わざわざ忙しいスケジュールの中から時間を捻出してノーギャラでせっせとブログ記事を書くのか?

 彼らがブログを書く大きな理由は「ブログ記事は他人に編集されることがない」ということです。逆に通常のメディア露出は、たとえどんなに巨大なメディアであったとしても、むしろメディアが巨大であれば巨大であるほど、そこで紹介されるのは、あくまでも「番組のために編集された自分」でしかないということです。「本当の俺はこんな人間だから、ありのままを紹介してほしい」と思ったところで、メディアはあくまで視聴者や読者が待ち望むコンテンツを作り上げることが目的であり、当然ながらタレントの本当の姿が何であるかは二義的な価値しか持っていません。

 それでも、メディアに露出できることは知名度アップなどの観点からも大きな意味を持ちますから、扱いが不満だから出ないということにはよほどの大物でない限りはなかなかなりません。しかしそれでは、1つのメディアによって規定された固定イメージの中で、やがて消費されてしまうというリスクもあります。

 その点、ブログはテレビのような圧倒的なリーチ力はないかもしれませんが、「ありのままの自分」を好きなだけ表現することができます。もちろん所属している芸能事務所やマネージャーの監視の目は当然あるでしょうが、それでも最終判断はブログを書いている自分に、通常はあります。しかも、交際宣言や結婚や離婚といった大きな注目を集める出来事の際には、自分の言葉でつづったブログ記事をそのまま世の中に発信することができます。

 「編集されない生の言葉が世の中へ飛び出していく」という大きなメリットは、日常的に編集される体験をしている著名人だからこそ人一倍実感できる、と言えるかもしれません。たとえ記者会見を開催して60分話しても、テレビ局の編集マンがその中のどの30秒をピックアップして、他のどんな映像や音楽とくっつけて編集するかに関して、まったく主体的にはコントロールできないのと、自らつづるブログは大きく違います。

 私が話を聞いた何人かの著名人ブロガーは異口同音に「自分の言葉をそのままストレートにファンに向けて発信できることが何より嬉しい」と言います。この喜びを知ってしまった著名人ブロガーがブログをせっせと書くことで、これまでのファンに加えて、今までは「編集されたイメージ」によって興味を抱いていなかった人までファンに取り込むケースも頻繁に見られます。

自分の人気アップのツールとしてのブログ

 テレビや雑誌といったマス媒体の関係者も影響力を増した著名人ブログを注視しています。今、どんなタレントが人気なのか、次にブレイクしそうな芸人は誰か、そんな情報をもとめて、アメーバブログの著名人ブログのランキングを見て、場合によってはそれがきっかけで出演や取材のオファーを出すとこともあるそうです。そんな話もあってか、知名度を上げていきたいタレントの間ではアメーバブログのランキングの上位に行けば仕事が増える、という都市伝説のような噂も流れていると聞きました。

 またテレビなどで紹介されてブログにアクセスが殺到したときに、個人や所属事務所が自前で持っているサーバーなどでは、怒涛のような同時アクセスの波をさばききれず、サーバーがダウンしてしまうことがよく見られます。しかしアメーバブログのような、大規模なアクセスを前提に設計されたシステムを利用すれば、そうした有事の際にもブログを自分の情報発信装置として機能させることができます。もちろんこうしたシステムを自前で持つことも可能は可能ですが、アメーバブログの規模のシステムを個人や事務所で持つことはコストの面からも非効率です。しかしそれだからといって千客万来の時にアクセス過多でブログがダウンしてしまったのでは、大きな機会損失です。そこにアメーバのようなブログサービスを利用するメリットが生まれるわけです。

 また著名人にとってはブログで情報発信することはチャンスである一方で、誹謗中傷コメントにさらされるといったリスクもあります。

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著者プロフィール

スダシン(須田 伸 すだ・しん)

須田 伸

サイバーエージェント ネットトレンド研究室長/コミュニケーションディレクター。1992年株式会社博報堂入社。CMプランナー/コピーライターとして「ACC賞」「日経広告賞」「消費者のためになった広告コンクール」などの広告賞を受賞。 1998年カンヌ国際広告祭ヤングクリエイティブ・コンペティションに日本代表コピーライターとして出場。2000年にYahoo! Japanに転じてコミュニティサービス担当プロデューサーとして「ヤフー・チャット」を立ちあげ「ライブチャットイベント」では初代「Y! Chat MC」として活躍。2002年より株式会社サイバーエージェントに勤務。同社の企業ブランドを一新する。現在は同社ネットトレンド研究室長。ブログとインターネット広告に関する著書として『時代はブログる!』(アメーバブックス)がある 。「サイバーエージェント/アメーバ」は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。



このコラムについて

Web2.0(笑)の広告学

ブログやSNSのように、普通の人がインターネットで気軽に情報を発信するようになったことが「Web2.0」という流行語(バズワード)を生みました。Web2.0の切り口には、技術も、商売も、哲学もありますが、このコラムでは、基本的に「広告」という視点で考えていきます。筆者はテレビ広告業界を経験後、サイバーエージェントに転じ、ネット広告の世界で活躍している須田 伸氏です。

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