「NTT迷走の裏側」

NTT迷走の裏側

2008年2月6日(水)

第2回 体制維持にこだわる事情

色濃く残る「技術系」と「事務系」間の権力闘争

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 NTT持ち株会社は会見などで、「株主の利益」や「ユーザーの利便性」を強調することがしばしばある。例えば、2006年7月のNTT持ち株会社の定例社長会見。そこには、総務相の私的懇談会でNTTの組織問題が検討されたことについて、渋い顔で苦情を述べる和田紀夫社長(当時)の姿があった。

 「(NTTグループの)資本分離や、(NTT東西のアクセス部門を)構造分離するという議論は、NTTグループにとって企業価値に大きく影響してくることである。株主にしてみれば、財産権の侵害だという気持ちになる。これまで以上に株主重視ということを重く受けとめて対応していきたい」

 さらに、報道陣からNTTのNGN(次世代ネットワーク)に規制がかかる可能性について問われると、「我々は事業をやっている会社であり、持続的に発展していかなければサービス提供ができない。サービス提供ができないとなれば、ユーザーに迷惑がかかるし、国益にもならない。株主にしても非常に大きな影響を与えることになるので、我々は主張すべきことは主張させていただく」と述べた。

 その主張は、企業としては筋が通っている。しかし、持ち株会社の主張と行動を追っているうちに、ある疑問が浮かんでくる。「現在のNTTは、株主やユーザーのことをそれほど大事に考えている会社なのだろうか」、という点だ。そして、この疑問を突き詰めていくと、NTTが大事にしており、本気で守ろうとしているものの存在が姿を現す。

守りたいのは今の体制

 NTT自身は決して口にしないが、必死で守ろうとしているものは、NTTの行動パターンを見ているとよく分かる。例えば、2006年に当時の竹中平蔵総務大臣の私的懇談会(竹中懇)と繰り広げた組織形態を巡る議論の際のNTTは必死だった。その攻防においてNTTは政治家へのロビー活動を繰り返し、政治に頼って組織問題の議論をかわそうとする戦略を露骨に見せた。こうしたNTTの姿は、何よりも周囲に、「NTTは古い体質を持ったままだ」という印象を与えることになった。そして同時に、NTTが大切にしているもの、絶対に守りたいものがここにあるということが見えてきたのである。

 ある証券アナリストはこう断言する。「竹中懇とNTTのやり取りを見ていて、やはりNTTは普通の株式会社ではなく、古いまま変わらないなと思った。株主のためとか言っていたが、今まで株主のことを考えたような経営なんてしてこなかったはず。あの攻防で、NTTが守りたいものは“今の体制”であることが、改めてはっきりした」。

 その背景にあるのは、やはり「電話的価値観」ではないだろうか。この古い価値観によりNTTは、インフラ機能先行のサービス開発から抜け出せないばかりか、時代遅れの体制にしがみつくことになってしまうのだ。株主やユーザーが優先なのではなく、まず自らの体制を守ろうとする。ここには、電話時代のインフラ更新やサービス開発と同様に、市場のニーズよりも自己都合を優先させる内向きな考え方。プロダクトアウト的な発想が垣間見える。

 また、電話網を一度構築した後は、それを計画にしたがって維持し続けることが大切とする“現状維持のマインド”も透けて見える。電話時代の発想で再編された現在のグループ体制は既に時代遅れになりつつあるが、それでも今の体制の維持に汲々としてしまう。だがNTTは、そのことを悪いとは思っておらず、むしろ今後、組織防衛の強化に走ろうとしている。

「妥協の産物」を死守する不思議な発想

 もっとも、NTTが必死で守りたいと考えている現体制は、必ずしも理想的な形ではない。1999年に誕生した今のNTTグループは、純粋持ち株会社の下に地域通信のNTT東西、長距離通信のNTTコミュニケーションズ、移動通信のNTTドコモなどがぶら下がる。資本関係で結ばれたNTTグループの現体制は、「妥協の産物」と呼ばれてきた。

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著者プロフィール

中川 ヒロミ(なかがわ・ひろみ)

1996年に青山学院大学理工学研究科機械工学専攻修了後、日経BP社に入社。『日経コミュニケーション』誌の記者として、通信事業者やブロードバンド技術の動向を取材。2005年から単行本の編集を担当。

宗像 誠之(むなかた・せいじ)

2000年に慶應義塾大学経済学部卒業後、NTTコミュニケーションズに入社。2001年8月に同社を退社後、2001年10月に日経BP社に入社。『日経コミュニケーション』誌の記者として、通信事業者の再編やNTTグループを中心とする通信業界の最新動向について主に取材。2008年1月から日本経済新聞社産業部に出向。

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