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「ゼロベース思考」で過去と一度決別する

中途半端な成功体験から「その先」は生まれない

  • 宮田 秀明

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2008年3月7日(金)

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 「ゼロベース思考」という言葉がある。今までの考え方、成果、仕事のやり方、制度や設計、すべて忘れて新しいことを追求しようという姿勢のことである。

 人も組織も存続している限り、何らかの成功体験がある。そして、それを継続したいという気持ちがある。毎年、稲作に励んできた農耕民族には特に顕著な気持ちだ。昨年通りのことをすれば、そこそこの成果が得られるのが農耕だから、できればそうしたいと思ってしまう。

 しかし、ゼロべース思考では、過去と一度決別する。これはまるで、これまで一生懸命ためてきた貯金を一度捨てろと言われたみたいなもので、なかなか誰も行いたくはないことだ。しかし、この思考方法ができなければ、大きな成長も大きな成功もないと思った方がいいだろう。

途中で引き返し、イチからやり直すことの意味

 山登りに例えてみる。富士山に登ろうと固く決意して山登りを始め、何時間もたって、この山は富士山ではないことが分かった。どうも八ヶ岳のようなのだ。しかし、もう努力を重ねて6合目まで来てしまった。このまま、八ヶ岳でもいいから登ってしまおうと思いたくなるものだ。6合目までの努力がいじらしく思えるのだ。

 でも、この時は、6合目から下山して、富士山に登り直すのがいい。そうしなければ、いつまでたっても富士山には登れない。つまり、いつまでも二流のままにしかなれない。

 製品設計ではこのような例がたくさんあるだろう。例えば、エンジンの開発設計だ。60%の開発が終わったところで、多少の懸念が出てくることがある。ある部分の強度が少し不安かもしれない。

 しかし、開始から2年もたっていて、もう60%も開発を終えているので、この懸念個所にパッチを当て、先に進もうという例だ。

 このようなプロセスで開発されたエンジンは、後でトラブルや故障を引き起こし、競争力のないエンジンになってしまいかねない。

 もう一度、イチから設計し直すのが正解である。60%までの努力は無駄ではなく、ゼロベースからの再スタートの過程で十分に生かされる。心配しないでゼロまで戻るべきなのだ。

コメント29件コメント/レビュー

前提やルールが変わった、間違いに気付いた、となればおのずと到達方法は全く変わってしまうという、しごくもっともなご主張だと受け取りました。小手先の修正から考えるよりかは、ゼロベースで過去の経験を活かしながら目標像を描きなおした方が、既存物へのしがらみが無い分、速く的確な像を描く事ができます。目標像が描かれてから、どうやって効率的に到達できるのか、移行計画を作れば良いだけです。その時、ゼロベースで作り直すのか、部分修正で近づけるのかは、手法選択にすぎません。壊しただけの改革は、目標像を描かないまま壊しただけなので、「世界一」を目指す今回の記事とはレベルが違うでしょう。(2008/04/08)

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いただいたコメント

前提やルールが変わった、間違いに気付いた、となればおのずと到達方法は全く変わってしまうという、しごくもっともなご主張だと受け取りました。小手先の修正から考えるよりかは、ゼロベースで過去の経験を活かしながら目標像を描きなおした方が、既存物へのしがらみが無い分、速く的確な像を描く事ができます。目標像が描かれてから、どうやって効率的に到達できるのか、移行計画を作れば良いだけです。その時、ゼロベースで作り直すのか、部分修正で近づけるのかは、手法選択にすぎません。壊しただけの改革は、目標像を描かないまま壊しただけなので、「世界一」を目指す今回の記事とはレベルが違うでしょう。(2008/04/08)

「ノイラ-トの船」という比喩があるのをご存知でしょうか。航行中の船は、どこかに欠陥が見つかっても、一から作り直すことは不可能なので、ただ部分的な補修を繰り返すことしかできません。世の中というのは、そうした航行中の船に似ています。既に出航してしまっているのですから、何から何までゼロベースという訳にはいきません。もちろん、時にはゼロベースの心意気は重要です。しかし、ものづくりにおいてさえ、例えば既に稼働中の原発をゼロベースで設計しなおすことができないように、一からの設計が難しいケースは少なくありません。既に出航済みの社会を改革するのに必要なのは、ゼロベースではなく、過去の歴史を真摯に引き受けながら、それでも新たなものを創造していくことです。もし本当に社会においてゼロベースが可能なのであれば、東大教授の肩書きも、アメリカズカップの栄光も、すべてを捨てて、ゼロから人生をやり直す覚悟が必要ですが、それは宮田さんをもってしても難しいのではないかとお察し致します。(2008/03/25)

不死鳥は、自らを焼き尽くした灰の中からよみがえる。完全に燃え尽きなければ灰に離れない。焼けぼっくいではダメ。0ベースにはは一つのパターンだけではないはずだ。過程を捨てて無に替えるケースも有るだろうし、出来ることをやりつくした後に、新たに生じる場合もある。出来ることなら、燃え尽きた後で新たに生まれ変われた方が幸せなのかもしれない。(2008/03/13)

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