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「パーフェクトワールド」からの旅立ち

  • 須田 伸

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2008年3月18日(火)

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 アメリカ大統領選挙は、何度かこの連載でも取り上げていますが、広告のF1レースのような世界で、投入される予算も、展開スピードも手法も、最大・最新のものです。そんな選挙戦でまた面白いことがありました。

 民主党の大統領候補を決める党の予備選挙で、一時期バラク・オバマ氏に追い込まれて劣勢になったヒラリー・クリントン候補が放ったテレビCMは、上院議員としてまだ1期目のオバマ氏の経験不足を容赦なく突く、いわゆる「ネガティブキャンペーン」でした。

 そのCMの内容をざっと説明すると以下のようなものです。

「真夜中の3時。あなたの子供たちは静かに眠っています。そんな真夜中に世界で不穏なことがあった際に、ホワイトハウスで緊急事態を伝える電話をとってほしいとあなたが思うのは、より経験豊かなヒラリー・クリントンではありませんか?」

 このCMの効果も手伝って、クリントン候補は、オハイオ、テキサスといった大票田で勝利を収め、またもや崖っぷちから蘇ったわけです。ところが、このCMには続きがありました。

 今回のCMに使われた「夜、ベッドでスヤスヤと眠っているあどけない子供たち」の映像は、時間のかかる新たな撮影はせずに、ストック映像会社「Gettyimages」の既に撮影された素材(いわゆるストック映像)を使用(もちろん使用料金を支払った形で)したわけです。

 ところが、その中のストック映像の中のメインのまだ幼い女の子は、スヤスヤ眠っている少女から、自分の意見をしっかり表明できる17歳の女性に成長していました。

 しかも今回の大統領選挙においてはオバマ氏を支持しており、自分が登場する過去に撮影された映像が使われたヒラリー陣営のこのCMには好感が持てない、とニュース番組に出演して発言したのです。

 この事実を知らされた時、ヒラリー陣営のCM制作スタッフは椅子から転がり落ちるくらい驚いたと思います。自分たちの制作したCM作品の中に思わぬ「敵」が潜んでいたわけです。

テレビCMは「競合商品の存在しない世界」

 当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、特殊な比較広告のような手法(日本では国民性からなじまないと言われ、あまり見かけることはありませんが)をのぞいて、トヨタ自動車のテレビCMでメルセデスベンツが大写しになることは通常ありません。資生堂の口紅を塗っている女性の化粧台にシャネルの香水が置いてあることもありません。テレビCMの世界は、美しくコントロールされた、ありそうで、けっしてない、ライバル商品が存在しない世界において展開されています。

 たとえばドキュメンタリー風のCM撮影の場合であっても同じです。商品である炭酸飲料水が、今時の若者の部屋でごく自然に飲まれる姿をリアルにとらえたい、そんな企画があったとします。でも、完全ドキュメンタリーでも、その若者の部屋の片隅やゴミ箱からはみ出す格好で競合ブランドの商品があってはいけないのです。その日の朝、たまたま飲んだ牛乳のパックがテーブルの上にあってはいけないわけです。

 CMの世界で描かれるべきなのは「競合商品が存在しない世界」=「パーフェクトワールド」だからです。もとめられているこの若者の「リアルな」部屋は、競合会社のブランドは存在しないことが約束された上での「架空のリアルさ」です。

 「競合商品を登場させたほうがもちろんリアルだ。でも、そこまでしてユーザーの生活実感を伝えたって、それはわざわざ広告費を使って、敵に塩を送るような話じゃないか」。パーフェクトワールドの中にあるのは、こういう考え方です。

 そういえば、大統領を扱ったアメリカの人気テレビドラマ「ザ・ホワイトハウス」にこんなシーンがありました。

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