「川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」」

川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」

2008年4月7日(月)

世界的サウンドエンジニアの技

音づくりの最前線、Goh Hotoda氏の現場(1)

1/4ページ

印刷ページ

 以前このコラムでは、道具から出る騒音を心地良い音に仕立てる「快音設計」に取り組む“音職人”、中央大学理工学部の戸井武司教授の研究について紹介しました(「“快音設計”という売りモノ」)。

そのエンジン音自体に価値があるとされるハーレーダビッドソン。写真は、米カリフォルニア州グレンデールで催された、約2万人による「Harley Davidson Love Ride」に参加したハーレーダビッドソンのライダーの1人。(c)AFP/Robyn BECK

そのエンジン音自体に価値があるとされるハーレーダビッドソン。写真は、米カリフォルニア州グレンデールで催された、約2万人による「Harley Davidson Love Ride」に参加したハーレーダビッドソンのライダーの1人。(c)AFP/Robyn BECK

 その中で、名車フェラーリやハーレーダビッドソンなどがブランディングにサウンドデザインを重視し、設計段階から排気音の「調律」にこだわっていること、あるいはトヨタ自動車のレクサスなどが完全静粛を突き詰める段階を卒業して、風切り音やタイヤ音などはカットしつつもエンジン音の一部は車内に恣意的に残すように伝えるという一段上の段階に入っていることも紹介致しました。自動車の運転音を騒音ではなくドライビングサウンドとしてとらえる考え方です。高度な防振防音技術を持ち合わせたうえで、寸止め的に残すべきところはあえて残すというのは上級者にのみ許される贅沢な設計思想です。

バーチャルリアリティーではなく“リアルバーチャリティー”

 電装化技術が大きく進歩した今、その先には、合成したエンジン音を聴かせる世界、すなわち効果音の世界が到来する可能性が広がっています。一度静粛にしたうえで合成音を付加するわけです。我が家のコンパクトカーが車内ではフェラーリ12気筒300馬力の咆哮に変身する、その先にはF1サーキットの900馬力のエンジンや、1500馬力のM1エイブラムス戦車のガスタービンエンジン音だって可能です。そして究極は宇宙戦艦ヤマトの波動エンジンの音だってアリ。バーチャルリアリティーに対して、“リアルバーチャリティー”とでも申しましょうか。現実を彩る劇場化機能は今後各方面に開拓されていくことでしょう。

 気分次第でそれらの合成音を切り換えることだって簡単です。車内オーディオの選曲に合わせ、カントリーウエスタン音楽が流れていれば、自動車側が気を利かしてハーレー風な音に調律することもさして難しい話ではないでしょう。

 このような話は冗談のようですが、程度問題こそあれ、自動車メーカーは真剣に考えていると戸井教授も言っていました。もちろん安全性の問題を十分にクリアすることが大前提ですが。

 戸井教授にとって、あらゆる騒音発生源は楽器となり得る可能性を秘めています。エアコンだって、掃除機だって、完全静粛の無音がゴールなのではなく、仕事をしているという存在感を担保しつつも、爽快な感じのBGMになることがゴールなのである、と。楽器という意味では、テニスラケットやゴルフクラブは、もはや楽器の範疇でしょう。高級品ならイメージ通りに高級な快音が響かないと、ユーザーは納得しないのです。

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。








Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント5 件(コメントを読む)
トラックバック

著者プロフィール

川口盛之助
(かわぐち・もりのすけ)

川口盛之助

慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所で材料や部品、生産技術などの開発に携わった後、KRIを経て、アーサー・D・リトル(ADL Japan)に参画。現在は、同社プリンシパル。世界の製造業の研究開発戦略、商品開発戦略、研究組織風土改革などを手がける。著書に『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社)がある (写真:山西 英二)


このコラムについて

川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」

このコラムでは、商品の機能やデザインにフォーカスし、その商品が生まれた発想の起源を探ります。特に日本の商品に密かに隠れたいかにもニッポン的な「和」のテイストに注目しながら、日本のものづくり文化に息づく競争力の源泉をひもといていきます。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

日経ビジネスからのご案内