「Web2.0(笑)の広告学」

Web2.0(笑)の広告学

2008年4月8日(火)

視聴率過去最低の「ちりとてちん」、でも買っちゃった

クチコミのカギは体験…だからブログにはテレビネタが多い!

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 先日最終回を迎えたNHKの朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」の平均視聴率は、関東地区で過去最低(15.9%)だったそうです。昔の考え方ならば「ああ、よほどつまらなかったのだな」と思うところでしょう。でも、この番組を見ている人たちのブログでの評価が、ものすごく高いのです。

 多くの人がこの半年の間、「ちりとてちん」のことをブログで熱く語っているので、ずっと気になっていましたが、結局オンエアでは見ることはできませんでした。そうした見ている人たちの間での好評ぶりを反映してでしょうか、総集編ではなく完全DVD化されるようです。アマゾンで既に予約が始まってますが、レビュー欄では熱い声が集まってます。

 それに押されて、僕もさっそく予約しました。
 今回はその体験から考えたことをお話ししていきたいと思います。

定着しつつある「クチコミのマナー」

 ブロガーに参加を促してのクチコミを売りにする広告商品がつぎつぎと乱立していた時期が過ぎたのか、最近こうしたクチコミまわりの新サービスのニュースをあまり聞かなくなりました。

 ただ自分が携わっているクチコミ番付に関しては、参加ユーザー数も、投稿される記事の数も、参加企業も、順調に数が増えているので、ブームが終わったというよりもむしろ、ひとつのジャンルとして定着しつつあるのかな、という実感があります。

 参加される企業の担当の方も「このくらい幅を持たせないとブロガーの方が自由に記事を書けないでしょう」と言って下さる方が増えました。自分たちの言いたいことを一方的に伝える従来の「広告」とは違って、ブロガーの自然発生的なブログ執筆意欲を刺激しなければいけないことも理解されつつあるようです。ブログネタに関して記事を書くことは「強制」することはできず、あくまでも「オファーである」という認識が広がってきたように思います。

 それに応えるように、企業からのオファーが、クチコミ番付運営局からの「このネタならきっと面白いブログが書けるでしょう」という純粋に面白さを狙ったブログのネタふりアイデアとくらべて遜色のない数や質のブログ記事を集めるケースも珍しくありません。特にうまくいくのは、ブロガーはけっしてプロの作家ではないので、すべてを想像力だけで書くことに委ねてしまうのではなく、何らかの「体験」を用意しておくことの重要性を認識しているケースです。今回は、そんな事例をいくつか紹介していこうと思います。

「体験」がないと面白く書けない。で、どうするか

 毎年、インターネットのさまざまなサイトが4月1日、つまりエイプリルフールにあわせて、ジョーク企画を準備します。大塚製薬ファイブミニの仕掛けた「新野菜レタモン」の特設ウェブサイトでは、有名パティシエの辻口博啓氏がこの「食物繊維がレタス1.8個分、ビタミンCがレモン15個分」という新野菜レタモンを使って新しい女性のためのスイーツが開発される模様を見ることができます。

 たとえ企画自体がジョークであっても、きちんとした「体験」をウェブサイト上でつくった後で、ブログネタで「謎の野菜レタモンをダシにつかった嘘、レタモンフールを4月1日についちゃおう」という呼びかけをしたところ、大勢のブロガーがこの企画に参加してくれて、ユニークなブログ記事を書いてくれています。

 例えば、特設ウェブサイトなしで、ブロガーに「何か新野菜を想像して、それに関して嘘をついてみてください」という依頼では難しかっただろうと思います。ユーザーが実際に目で見たり、「●●ジェネレーター」のように何か新しい情報が生成されたりすると、ユーザーはそのことをブログに書くことは比較的ハードルが低いですから、自然とブログ記事の数も増えます。また読み手にとっても「自分も見てみたい」「自分もつくってみたい」と、その記事を読んでさらに参加したくなる仕掛けになって行きます。

 これは通常のブログの「ネタフリ」においても同様で、まったくのイマジネーションでブログ記事を書いてください、というのは、書き手に求めるハードルとしては高すぎます。そうではなく、例えば、「誤送信しちゃったメールの失敗談を教えてください」とか「もう一回食べたい給食メニューは何?」といったように、ブロガーの「体験」を綴ることを促すネタフリがなされた時、記事の数も質も、高いものがブロガーから返ってきます。
 『女の仕掛け』という本の場合、1000冊の本を用意して、1000人の希望者を募って郵送して、実際に本を読んでもらうという「体験」をしてブログ記事を書いてもらいました。本のように実際にモノを送るということになるとコストの問題もあるので大人数に対して行うのが難しい、という判断もあると思いますが、他にも知恵を使えばやり方はいろいろあります。少人数のブロガーを集めての体験イベントから、ウェブコンテンツまで、さまざまな仕掛けで「体験×ブログ」をつくり、結果、でクチコミがうまくいくケースが増えています。

CMの続きはあなたのブログで…メディアの掛け算

 ブログ記事の読み手もそのクチコミするネタを「体験済み」であるとなお理想的です。その好例が、クレジットカードのマスターカードです。

 テレビCMは、登場人物がいろいろな買い物をしてその値段を表示して、最後に「●●●、プライスレス」という、ご存知の例のやつです。世界共通フォーマットで制作されているので、海外旅行に行った先のホテルのテレビをつけたら、その国のローカルで制作された同様のマスターカードのCMを見たという方も多いかと思います。

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著者プロフィール

スダシン(須田 伸 すだ・しん)

須田 伸

サイバーエージェント ネットトレンド研究室長/コミュニケーションディレクター。1992年株式会社博報堂入社。CMプランナー/コピーライターとして「ACC賞」「日経広告賞」「消費者のためになった広告コンクール」などの広告賞を受賞。 1998年カンヌ国際広告祭ヤングクリエイティブ・コンペティションに日本代表コピーライターとして出場。2000年にYahoo! Japanに転じてコミュニティサービス担当プロデューサーとして「ヤフー・チャット」を立ちあげ「ライブチャットイベント」では初代「Y! Chat MC」として活躍。2002年より株式会社サイバーエージェントに勤務。同社の企業ブランドを一新する。現在は同社ネットトレンド研究室長。ブログとインターネット広告に関する著書として『時代はブログる!』(アメーバブックス)がある 。「サイバーエージェント/アメーバ」は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。


このコラムについて

Web2.0(笑)の広告学

ブログやSNSのように、普通の人がインターネットで気軽に情報を発信するようになったことが「Web2.0」という流行語(バズワード)を生みました。Web2.0の切り口には、技術も、商売も、哲学もありますが、このコラムでは、基本的に「広告」という視点で考えていきます。筆者はテレビ広告業界を経験後、サイバーエージェントに転じ、ネット広告の世界で活躍している須田 伸氏です。

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