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海の男の現場力に感嘆する

日本を支えるプロの仕事を間近に見た

  • 宮田 秀明

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2008年4月11日(金)

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 海上自衛隊のイージス艦と漁船の衝突事故で、発生から3日たって「イージス艦は衝突1分前まで自動操舵していた」という事実が判明した。これにはビックリした。あり得ないことである。この事実だけで、イージス艦側に“ゆるみ”“たるみ”に基づく“重大な過失”があることが明確だった。

 車に比べて、船には大小様々なものがある。今度のケースではイージス艦は長さ165メートル、馬力が10万馬力ある。漁船は約1/10の長さ、1/1000の重さで、馬力は1/100以下である。ごく一般的に言って、船の長さの3倍の距離は極めて危険な領域になる。イージス艦にとっては約500メートル以内で、約1分で到達する距離だ。漁船にとっては50メートル以内で、速力が半分だとしても、12秒で達する距離になる。

 つまり、操縦性能を実際の距離と時間で比べると差が大きすぎるのだ。50万トンのタンカーに至っては、エンジンを止めても、停止するのは9キロ先になる。

 大きな船は操縦性能が悪いので、漁船などのいる海域では緊張感がみなぎる。厳重な監視をして、少しでも危険があると、10分前、5分前には避航操船するのが基本操作だ。漁船群を余裕を持って回避するように車線変更のような操船を行うのだ。

公的部門は現場力が低下している?

 大型船に優先権があっても事情はそう変わらない。例えば、漁船が漁労中だったりしたら、優先ルールなど無いに等しい。操縦性能の悪い大型船は子供たちを守る大人のように早め早めに危険回避するのが海のルールだ。

 それなのに、イージス艦は自動操縦して直進してしまった。小学校の校庭を突っ走った大型トラックと例えてもいいかもしれない。

 この事故に対して、新聞などの報道はいろいろだったが、海のプロにとっては事実関係は極めて明確である。イージス艦が見張りもしくは避航操船のいずれかを怠ったのである。サボタージュによる事故と言ってもいい。直接かつ最大の責任は当直士官にある。疑いようのないことだ。

 この事故からしばらくして、青函航路で運航する東日本フェリーの新型高速フェリー「ナッチャンRera」に乗った。私にとっては、競合他社の製品をチェックしに行ったという具合だったのだが、この船上で目にしたのは、制服姿の若い陸上自衛隊員約10人のだらしない姿だった。

 座席に寝転がったり、足を投げ出したり、ゲームに興じていたり、とても勤務中の自衛隊員とは思えなかった。上は次官から下は若い隊員まですべてが緩みきった組織になっているとしか思えなかった。

 自衛隊や社会保険庁だけではないだろう。公的部門の現場力は地に落ちていると言わざるを得ない。

コメント22件コメント/レビュー

公的部門の人材劣化は危惧しているところですが、その原因についての言及がなかったのが残念です。私は、近年特に激しさを増している「公務員バッシング」が主因であると考えています。優秀な人材は自分がその職にいて満足できるかを十分に考えますが、公務員は元々収入面では恵まれていません。そのうえ、直接的間接的(現場やテレビ)に誇りまで汚されることが往々にあります。これでは優秀な人材は集まらず、「そこそこの給料でそこそこ働いていればいいや。」という人材だけになってしまいます。20~30年後には公的部門の人材劣化は取り返しのつかない状態にあることでしょう。ちなみに自衛隊のみをみて「公的部門の力が衰えている」と断ずるのは誤りではないでしょうか・・・。逆に民間部門でも力が足りないグループというのは存在しますし。(2008/04/16)

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公的部門の人材劣化は危惧しているところですが、その原因についての言及がなかったのが残念です。私は、近年特に激しさを増している「公務員バッシング」が主因であると考えています。優秀な人材は自分がその職にいて満足できるかを十分に考えますが、公務員は元々収入面では恵まれていません。そのうえ、直接的間接的(現場やテレビ)に誇りまで汚されることが往々にあります。これでは優秀な人材は集まらず、「そこそこの給料でそこそこ働いていればいいや。」という人材だけになってしまいます。20~30年後には公的部門の人材劣化は取り返しのつかない状態にあることでしょう。ちなみに自衛隊のみをみて「公的部門の力が衰えている」と断ずるのは誤りではないでしょうか・・・。逆に民間部門でも力が足りないグループというのは存在しますし。(2008/04/16)

「現場力」が大切だ、あるいは衰えているぞという指摘にしても、同様の意見があちこちに出ているし、誰もがそう感じたことがあるはず。しかし、このコラムには違和感が残る。たとえば「校庭を突っ走った大型トラック」という喩え。漁師は小学生なの?という疑問はさて置き、海の現場では、そもそも校庭と幹線道路が区分けされていない実情があるのではないか。プロ同士の事故のはず。海の現場に校庭はない、という言い方もできる。一方で、筆者は船の設計の専門家で大学教授ではあるが、コラムの文脈上は「海のプロ」ではない。漁の現場にいるわけでもないし、ましてや軍隊の現場にいるわけでもない。海のプロを代弁する立場ではないと思う。コラムから「現場力」が見えて来ず、説得力がないのはそのせいか。「公的部門の現場力は地に落ちている」と言われても、ワイドショーみたいにしか聞こえない。(2008/04/15)

事故は気の毒な話。だが、この事故が示す国の課題はもう少し違うところにある。最先端の軍事機密の詰まった軍艦に海保が立ち入り検査というのは国として緊張感に欠けている。本来、軍法と軍内部の警察組織があって行うべき。一般の国内法と警察で軍をコントロールとはあきれる話で、文民統制を履き違えている。軍という特殊なハードのための制御ソフト(軍法)が無いという点が、日本の問題。また、いかに小さな船舶でもその接近を軍艦は安易に許すべきではない。軍艦は移動する軍事拠点。当然と思う。緊張感に欠けていると感じたことは正しいとおもう。が、自衛官は法的には軍人ではないのだ。(2008/04/14)

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