「経営の情識」

謎を呼ぶセブン銀行社長の行動
記者団の“襲撃”に立ち向かったセブン銀行

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2008年6月5日(木)

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 先日公開した三菱東京UFJ銀行の情報システム一本化を巡る拙稿「『トレードオフの概念は日本に無いのか』三菱東京UFJ銀のシステム一本化に思う」に、読者の方々から150件ものコメントが寄せられた。

 書き込んでいただいた方に、この場を借りてお礼を申し上げる。何らかの応答をすべきと思ったものの、コメントの件数に圧倒されてしまい書きあぐねている。だからというわけではないが、5月12日に起きたATM(現金自動預け払い機)の不具合について書き残した点を、今回は書く。

 本欄で既に書いた通り、12日の不具合は軽微なものであった。「大した話ではないと言うなら何度も書くな」と指摘されかねないが、実は12日付夕刊の記事を読んでいて驚いた点があった。ごく一部のATMが短時間使えなかったことよりもはるかに大事件と思い、その点を書こうとしたが、なぜそのような事態が起きたのかが分からずすぐには執筆できなかった。経緯を調べているうちに6月に入ってしまったが、誰もその事件に触れていないので、遅まきながら書いてみたい。

 事件とは、ATMの不具合が起きた当日の夕刊に、セブン銀行の安斎隆社長が登場したことである。複数の全国紙夕刊に安斎社長がセブン銀行のATMの前に立っている写真が掲載され、安斎社長は「こういうことは困る。早く原因を究明してほしい」といった趣旨の発言をしていた。

各紙の夕刊に登場したセブン銀行社長

 夕刊の記事によれば、東京三菱UFJ銀行のキャッシュカードがセブン銀行のATMで使えなくなっていたその時、東京・丸の内のセブン銀行本店にあるATMコーナーに安斎社長は姿を見せ、自らATMを操作し、トラブルの内容を確かめた。その結果、新聞に載ってしまったわけだ。

 企業情報システム関連の記者を20年以上続けているが、自社に原因があるかないかを問わず、システムトラブルのさなかにこのような行動をした経営者を筆者はほかに知らない。

 「困る」「早く直せ」とのたまうだけでは、「休み明けの午前中にこういう事態があっては困る」「ATMはわずかな仕事の合間に利用するので不具合のないようにしてほしい」「システム管理がずさん。早急に解決して」(以上いずれも12日付日本経済新聞から)とコメントした一般預金者と全く同じ類である。夕刊を読んだ金融業界関係者とIT(情報技術)業界関係者の間で、安斎社長の評判は大きく下がったに違いない。筆者にとってATMの不具合より安斎社長の行動が事件に映ったゆえんである。

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著者プロフィール

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所研究員、コンピュータ・ネットワーク局編集委員。1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。関わった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「日経ビジネス」「経営とIT」など。「ビジネスとテクノロジーの一体化」に最大の関心を寄せる。

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