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創業者とCEOは電子メールを使わない

革新的掃除機を生む英ダイソンの“二人三脚経営”

2008年7月3日(木)

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 主力製品と中核技術を開発したエンジニアにして、非公開企業のオーナーであり、会社の顔である創業者から雇われたCEO(最高経営責任者)は、一体どのような経営をすべきであろうか?

ダイソンのマーティン・マコートCEO

ダイソンのマーティン・マコートCEO(写真:菅野 勝男、以下同)

 遠心分離(サイクロン)技術を使った掃除機で知られる英国のメーカー、ダイソンのマーティン・マコートCEOが取った方法は、創業者かつオーナーのジェームズ・ダイソン氏と二人三脚をするかのように経営することであった。二人三脚とは、「いつも隣にいる」という意味である。実際、マコートCEOはダイソン氏と緊密なコミュニケーションを取り続け、経営のあらゆるテーマについて話し合っている。

 「我々2人は電子メールを使ってやり取りしない。電話ですらほとんど使わない。ジェームズはほとんどの時間をエンジニアリングチームの中で費やすから、私もそこに一緒に行って話し合い、物事を決める。我々が合意した時も、意見が合わず議論を続けた時も、その様子はすべてエンジニアチームから丸見えになっている。だから、我々がどうやってダイソンという会社を動かしているか、みんな分かっている。これはとても健全だと思う」とマコートCEOは言う。

創業者の聖域をつくらず

 ダイソン氏との役割分担は、どうなっているのか。マコートCEOの回答は明快である。「私の仕事は、英国の一メーカーとして出発したダイソンをワールドワイドに動かすこと。そのために必要なすべてを担当している。例えば社員を採用し、目標を設定し、志気を向上させること、我々のテクノロジーが持つ価値を正確に市場に伝えることなどだ」。

 マコートCEOが東芝の英国法人を経てダイソンに転じた1997年、ダイソンは英国で掃除機をヒットさせ急成長していたが、海外展開はまだまだという状況だった。現在ダイソン製品は世界46カ国で販売され、同社の年商の8割は英国以外のビジネスである。

 ビジネスオペレーションをマコートCEOが受け持つことで、「ジェームズは発明と新しいテクノロジーの創造、そして750人ものエンジニア、科学者・化学者たちの相談に乗る仕事に集中できる」。といっても、製品開発をダイソン氏に一任しているわけではない。マコートCEOはエンジニア出身ではないものの、テクノロジーや製品の研究・開発に関して「製品出荷の3年以上前、コンセプトの議論から関わっている」という。

 普段のダイソン氏は複数のチームに分かれているエンジニアの中に入り、相談に乗ったり、助言をする。冒頭紹介したように、マコートCEOはダイソン氏と二人三脚で動くので、エンジニアたちの話し合いにも参加できるわけだ。技術者出身の創業社長の場合、営業や財務は他の役員に任せるものの、製品開発を自分の聖域にしてしまうことがあるが、この会社の場合はそうではない。

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「創業者とCEOは電子メールを使わない」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者、2009年1月から編集長。2013年から現職。プロジェクトマネジメント学会員、ドラッカー学会員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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