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大学教員をヘッドハンティングする

国全体の人材劣化を食い止めるための第一歩

  • 宮田 秀明

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2008年7月25日(金)

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 31年前、東京大学に転職してきた時、本郷キャンパスの多くの先生が紺かグレーの背広を着て、重そうなカバンを持って歩いている姿を見て違和感を覚えた。創造の場だから、もっと明るく自由な雰囲気が必要なはずだと思った。東大の中でも本郷キャンパスが特にこの傾向が強かった。

 サラリーマン時代の渋いワインレッドやブルーのワイシャツに、明るいグレーの背広で出勤すると、年長の教員から冷たい目で見られた。研究能力のない教員ほど保護色に自らを包み、重そうなカバンを持って歩いている。

 私はアマノジャクだった。自由な服装をして、カバンを持たないで、紙の束か、今ではUSBメモリーをポケットに入れて、脳の働きを自由にして創造の力を最大限発揮しようとすることにしていた。以来ずっと、その自由闊達にして想像力を高めるライフスタイルを実行し、若い教員たちにも広めようとしてきた。それから30年経って少しは良くなったようだ。

大学の人材劣化をどう克服するか

 しかし一方では、大学の教員の行う研究に期待する声は年々低くなっているようだ。

 「大学の先生にはできないでしょう」と面と向かって言われることもある。残念ながらその通りと言わざるを得ないことも多い。大学の人材は年々劣化していると思う。大学の劣化は教育の劣化、国全体の人材の劣化につながるから憂慮すべきことだ。根本的な解決策を考えなければならない。人材の流動化の促進が一番の有効策だということは衆目の一致した意見だろう。

 15年くらい前、私が教授に昇任して、学科の人事委員会のメンバーになった時、最初に提案したのが、教員の“純粋培養”の禁止を明文化することだった。純粋培養とは大学院を卒業して、そのまま教員になること、つまり一度も実社会に出ない教員養成法のことである。昔はこれが普通だったし、今でも、そのようなキャリアの教員が多い。しかもこのような純粋培養の教員が主流派になっている。東大総長になった方で民間経験者はいない。

 大胆かと思った私の提案は割と簡単に認められ、東大以外の職場経験を持っていない教員は採用しないことになった。しかし、実際には、国の研究所や企業の基礎研究所経験者が多く、本当の意味での民間経験者、つまり一般経済社会で責任とリスクを取った経験のある人のケースは稀である。だから失敗人事も多い。

コメント8件コメント/レビュー

 工学・医学など実学の学部と文学部・理学部の差別化を言っておられたが、総合大学において寧ろ工学部の存在自体異質であり、総合大学に必要の無い学部のように思います。総合大学からは切り離して独立させた方が良いのではないでしょうか? 総合大学の数自体多すぎる事も人材の希薄化に繋がってる気がします。総合大学の数を半分以下に減らし、基礎研究分野に集約する事が長いスパンで見ると国としてプラスになると思います。(2008/07/28)

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いただいたコメント

 工学・医学など実学の学部と文学部・理学部の差別化を言っておられたが、総合大学において寧ろ工学部の存在自体異質であり、総合大学に必要の無い学部のように思います。総合大学からは切り離して独立させた方が良いのではないでしょうか? 総合大学の数自体多すぎる事も人材の希薄化に繋がってる気がします。総合大学の数を半分以下に減らし、基礎研究分野に集約する事が長いスパンで見ると国としてプラスになると思います。(2008/07/28)

先生ならば海外の大学を見聞される機会も多いと思いますが、そもそも、「大学教員のヘッドハンティング」やら、「研究費を稼ぐ仕事」やら、「労働強化につながる仕事」を「イチから百まで」研究者自身がやっている「一流大学」が日本の大学以外にあるでしょうか。日本の大学には、もともとそうした「研究補助者」とも呼ぶべき人が少ない、というか歴史的経緯もあってこれまでは必要なかったのです。それが、状況が変化すれば忙しくなるのは当然です。入ってきた研究費で人員を手当てすることから始められてはいかがでしょうか。あとは、学部ごとに授業料を上下させることが出来れば、だいぶ文句は減ると思いますよ。(2008/07/27)

日本の大学教員の質の劣化は、憂うべき課題であると思います。企業サイドからすれば、大学の教員に求めているのは学生に対する基礎教育と、企業では検討できないユニークな発想に基づく研究であると思いますが、その両方共に失望しているのが現状です。研究費の面では比較的恵まれている国立大学の教員においても、パッとした教授陣があまり居ないというのが現状ではないでしょうか?宮田教授が指摘しているとおり、成果や納期などが明確であるビジネス界に身をおいた経験の有る大学教員を増やして、一定の緊張感が有る状況で研究や教育をしていくことが、大学教員の劣化を引き止める特効薬であると思います。[日本の未来の原動力となるべき大学教育ならびに大学教員の劣化を憂う民間研究者](2008/07/27)

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